●文:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●外部リンク:スズキ
新顔DEはもちろん、STDも基本性能が大幅向上!
今回の改良の目玉は、やはりフロント21インチホイール&サスペンションストロークのアップでダート性能をアップした“DE”の登場である。Vストロームシリーズのトップモデルも、近年のダート性能の高いアドベンチャーバイク人気に呼応したというわけだ。
開発者の話を聞く限り、単に最低地上高を確保するだけでなくフレーム補強まで行っており、かなりダート性能がアップ。800DEにも搭載されているスライド可能なトラクションコントロール“Gモード”は、もともとVストローム1050DEのために生まれたものなんだとか。
…なんてことを書くと、フロント21インチのDEばかりに注目が集まってしまいそうが、無印のSTDを含めた基本性能のアップグレードに関しても、実はかなり手の込んだ改変が行われている。
そもそも、これまで上級仕様だったXTの専用装備、6軸IMUやそれに付随する電子制御システム、LEDウインカーやセンタースタンドなどが、そっくりそのままSTDにも搭載されることになったのだ。
これらに加え、STD/DEともに上下双方向対応のクイックシフターが新機能として追加。電子制御システムの緻密化によるドライバビリティ向上とともに、クルーズコントロールシステム使用時の快適性アップを狙いエンジンのギヤ比やドリブンスプロケットの設定変更も実施したとのことだ。
華々しくDEが登場したことで、ベースのブラッシュアップを見落としがちだが、今回の改変でVストローム1050シリーズは、基本性能を大きく底上げしたのだ。
’23 スズキ Vストローム1050/DE 車両解説
スズキ Vストローム1050DE 概要
STDモデルの1050比で、フロントホイールサイズを21インチに変更したことはもちろんだが、スクリーンの小型化/アンダーガード追加/ハンドル幅増など、さらにダート性能を追求。Gモードも追加されている。
【SUZUKI V-STROM1050DE】主要諸元■全長2390 全幅960全高1505 軸距1595 シート高880(各mm) 車重252kg(装備) ■水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブ 1036cc 106ps/8500rpm 10.1kgf・m/6000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20L ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70R17
カラーバリエーションは、チャンピオンイエローNo.2/マットソードシルバーメタリック、ブリリアントホワイト/パールビガーブルーの2色。
’23 スズキ Vストローム1050 概要
‘22モデルの1050STD比で見た目でわかる違いは、ハンドガードやセンタースタンドの標準装着化と、ミラーの共通化。ウインカーもLED化している他、ステップは1050DEと差別化された。
【SUZUKI V-STROM1050】主要諸元■全長2265 全幅940全高1470 軸距1555 シート高850(各mm) 車重242kg(装備) ■水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブ 1036cc 106ps/8500rpm 10.1kgf・m/6000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20L ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク タイヤサイズF=110/90R19 R=150/70R17
カラーバリエーションはリフレクティブブルーメタリック/マットブラックメタリックNo.2、 キャンディダーリングレッド/マットブラックメタリック No.2、グラススパークルブラック/マットブラックメタリック No.2の3色。
エンジン
新型Vストローム1050シリーズのエンジンはユーロ5への対応とともにさらにブラッシュアップされている。まずハードの部分では、クルーズコントロールをさらに快適化するためにギア比を変更、よりスムーズな変速が可能となった。
燃焼室内の温度を下げるために、バルブ内部にナトリウムを封入したナトリウム封入エキゾーストバルブを採用。ソフト面ではクルコン対応のため電子制御スロットルの制御を緻密化するとともに、1050DEにはGモードを追加するなどしている。
一次減速比はそのままに1速と6速のギヤ比をロング方向に変更、ドリブンスプロケットは逆に41丁から45丁へとショート方向に変更している。
アップ&ダウン対応のクイックシフターを新採用。またクルーズコントロールの設定可能速度が2速、30km/hへと引き下げられた。
足まわり
【DE】19インチキャストの1050に対し、1050DEはフロント21インチホイールを採用し、サスストロークもアップ。リムはフロントのみチューブ式。
【DE】スイングアームを30mm延長し、タイヤも専用設計(リアタイヤは従来通りチューブレス式)。1050DEはチェーンも強度の高いタイプを採用。
【STD】従来通り19インチサイズのキャストホイールを採用する1050 。タイヤはブリヂストンのバトラックスアドベンチャーA41で、ABSモードも異なる。
主要装備
【DE】スタンディング走行のためにスクリーンは小型化され、高さ変更もボルト式に。XT用だった手動調整のスクリーンは1050に移植された。
【DE】1050に対し1050DEは片側2cmワイドな960mmハンドルを採用。素材も変更し衝撃吸収性をアップ。日本仕様はヘルメットホルダーを標準装備。
【DE/STD】一新された5インチディスプレイ。カラー液晶表示となり、表示内容も見やすく、近代的になった。右上の項目は右からABS、モード、トラコン。
【DE/STD】以前はXTのみが装備していたIMUが1050DEはもちろん、1050にも標準装備されることになり、電子制御装備のレベルが飛躍的に向上した。
【DE/STD】シートフレーム部分はダート走行を想定し強化。1050DEはシートのボトムから作り替え、高さ変更はできなくなったが、706gもの軽量化を行なった。
スズキ Vストローム1050DE 開発者インタビュー
【Vストローム1050DE チーフエンジニア 安井信博氏】
Vストローム1050はそもそもとして、フレームやキャスター角含めオンロードバイクの設計、ディメンションで作られたバイクなんです。なので簡単に21インチホイールをポンと入れてDEが完成! というわけにはいきませんでした。サスペンションストロークを伸ばせば、それでまたディメンションが狂います。今回のDEは、Vストローム1050のパッケージの中でやれることを目いっぱいやった結果なんです。
DE化にあたり一番やりたかったのは最低地上高を稼ぐこと。今回はなんとか190mm確保しました。サスストロークに関して、現状フロントは10mmアップの170mmで、リアはスイングアームを伸ばしたりで9mmアップの169mmを確保。本当はもっと伸ばしたかった。ただ、そうするとシートがどんどん高くなってしまいますからね。
元々オンロード設定のバイクを未舗装路方向に振るというところも苦労しました。普通にダートを走れるくらいのキャラクターとはいえ、お客様には色々な方がおられます。「いざというときにも壊れない」というところにすごく配慮しました。転倒とかジャンプとか…。ジャンプってすごくオートバイに悪いんです。大半のユーザーはやらないにしろ不用意に飛んでしまうってこともあるわけですから…。そういった強度的なところの検証にすごく時間をかけました。
今回のDE化にあたっては、検証の中で弱いところも見つかったので車体の補強も行っています。予想よりも丈夫だったので、パッチを当てる程度の補強で済みましたが。この辺りは、モトクロスライダーさんに開発に加わってもらったのですが、「意外といける」というコメントをいただいたときにはホッとしました。未舗装路、当社ではいわゆるダート林道なども“道”扱いで、オンロードと呼んでいるのですが、Vストローム1050DEはそのレベルの走行なら全然問題ないように作っていますよ!
オフロード性能アップのために開発にはスズキのモトクロスライダーも参加。ナンバー付きモデルではかなり異例のことらしい。
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