▲生活に溶け込むEVスクーターをイメージしたディスプレイ展示

 

3月23日、ホンダの電動原付一種スクーター「ICON e:」(アイコン イー)が発売されました。ICON e:は着脱式バッテリーを搭載し、税込22万円という低価格でリリースされた意欲的なモデルです。ユーザーとしては、既存の交換式バッテリーを採用した電動原付一種スクーター「EM1 e:」(イーエムワンイー)との違いも気になるところです。

そこで、この2台は何がどう違っていて、どう考えるべきなのか? どんなユーザーにとってメリットが大きいのかなど、2月19日に行われたメディア向け発表会の模様と合わせて解説します。

▲手前がEM1 e:、奥が今回発売されたICON e:です。プラットフォームが共通なのですごく似ていますね

 

ICON e:とEM1 e:の気になる諸元を比較!

2台の諸元表(スペックを数値で表したもの)です。メーカーが公表している各項目を筆者が都合よく並べ替えて比べてみました。この2台はプラットフォーム(車台:車体の基本設計)が同じなので、数値的にまったく同じという項目も多く、該当部にはグレーで色を塗っています。なお、価格は2026年3月末現在のものです。

バイクやクルマに詳しい人なら、この諸元比較表を見ただけで、2台の特徴や適正の違いが見えてくると思います。

諸元から見えてくる2台の違いや特徴とは?

▲ICON e:の開発責任者である三ツ川 誠さん。ガソリン原付一種のダンク、タクト、ジョルノ、電動原付二種のPCXエレクトリックの開発責任者も務めました

 

それでは、諸元比較表をもとに、気になるポイントをピックアップして説明します。

価 格

▲ICON e:のインパネメーター部。シンプルで見やすいです

ICON e: は安いので購入補助金は受けられない!

ICON e:のほうがEM1 e:よりも約10万円も安いです。ただし最初からガソリン原付一種と同じくらい安いため、国や地方自治体の購入補助金は現時点では受けられません。補助金の支給はガソリン車との価格差を埋めるために用意されているためです。

EM1 e:には購入補助金があり、例えば東京都に居住または事業所がある場合、国+都+区と最大で3つの補助金を重ねてもらうことも可能です(実質20万円台半ば)。

EM1 e:のほうが高いのは、汎用性の高い交換式バッテリー「(Honda Mobile Power Pack e:」の採用により、着脱機構や端子部などでコストがかかっているということでした。

EM1 e: ならバッテリーシェアリングも活用できる

▲EM1 e:などHonda Mobile Power Pack e:を採用した電動バイクなら、Gachacoのバッテリーシェアリング利用により車輛本体のみの購入も可能です

 

EM1 e:の場合は、東京や大阪、埼玉の一部などバッテリーシェアリングサービス「Gachaco」(ガチャコ)が利用できるエリアにお住まいであれば、車体のみ(税込156,200円)を購入し、バッテリーはサブスクリプション契約でシェア利用することもできます。

交換式バッテリーを採用した電動バイクの価格の1/3~1/2はバッテリーと充電器が占めていますから、バッテリーシェアリングが利用できるなら初期費用を大きく抑えることもできます。Gachacoでは、自宅用の充電器を借りることもできますから、上記エリアにお住いの方は検討してもよいのではないでしょうか。

航続距離

▲ICON e:はプラグイン充電が可能です。充電口はシート前部に備えられています

 

ベトナムでは40km前後が実使用値だった

諸元表に書かれているのは、1名乗車時、30km/h定地走行でのテスト値です。乗り手の体重や走行環境によって大きく変わってきますが、電動バイクの場合はだいたいテスト値の6~7割が実際の使用値になることが多いです。ICON e:なら40~50km、EM1 e:なら30~40kmといったところです。

実際、先行で発売されていたベトナムでは、ICON e:の実使用値はアクセル全開のような使用状態で40km前後だったそうです。

日本の多くの原付一種ユーザーの場合、1日の利用は5km圏内ということですから、往復したとしても10km程度の走行距離です。毎日しっかり使う人でも、充電頻度は2日に1度くらいとなるでしょう。

バッテリー

2台ともに、車体からバッテリーを外して持ち歩くことができます。駐輪場で充電できない場合は室内まで持っていく必要がありますが、バッテリーの重さはどちらも10~11kgです。

▲ICON e:のバッテリーはステップボードの下にあります。ちゃんとバッテリー上面に持ち手がついています

 

▲ICON e:のリチウムイオンバッテリー(11.4kg/H295×L232×W138mm)と充電器(2.3kg)。バッテリーはIP67(水深1mで30分の浸漬に耐える)に対応しているので屋外で使用できる防塵・防水性能を持っています

 

▲EM1 e:は充電のたびにバッテリーを着脱することがデフォルトですから、操作性もスマートに考えられています ※写真はHonda公式サイトより引用

 

▲EM1 e:のリチウムイオンバッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(MPP)」(10.2kg/H298×L156.3×W177.3mm)と充電器「Honda Power Pack Charger e:」(5.3kg)。MPPはバイク以外の利用などマルチユースで考えられておりIP65に対応、雨が当たる屋外にあっても問題ないものです

 

なお、ICON e:の場合は、バッテリーを車体に装着したままでもプラグイン充電(車載充電)が可能です。駐輪場所にコンセントがあれば、充電器のケーブルを車体に直接差し込むことで充電できるので便利です。

2台ともに、バッテリーはそれぞれ単体で購入することもできるので、万が一の電欠に備えておくこともできます。

収 納

▲ICON e:にはフルフェイスヘルメットも収納可能。写真のヘルメットはアライ「Quantum-J(61~62cm)」

 

ラゲッジボックス(シート下スペース)への収納では、26Lの容量を持ちヘルメットが収納できるICON e:に分があります。EM1 e:にも3.3Lのスペースが確保されていますが、バッテリー収容スペースとなっているため、ヘルメットは収納できません。ただし、ヘルメットホルダーを装備しているので、ヘルメットのDリングを引っかけて固定、ロックすることは可能です。

どちらのバイクにもオプション設定されているリアキャリアを使うなどしてトップボックスなどを装着すれば、フルフェイスヘルメットなども収容できるようになります。

▲ICON e:にオプションのリアキャリア(税込12,210円)、トップボックス取付ベース(税込6,050円)、トップボックス35Lワン・キー・システムタイプ(税込27,500円)、ワン・キー・インナーロックシリンダー(税込3,025円)を装着した状態

 

大きさ・重さ

▲ホイールサイズは2台とも同じ。どちらもコンビブレーキ(CBS)を搭載するので、リヤブレーキをかけると自動的にフロントブレーキもかかります。とっさのブレーキ時でも車体を安定させやすい機構を搭載しています

 

車台が共通なので、車体やタイヤのサイズは同じです。ただしICON e:のほうが5kg軽く、しかも重たいバッテリーをステップボード下に積んでいるので車体そのものの重心は低めにできており、押して歩く際などに取り回しの軽さが期待できます。

シート座面の高さもほぼ同じ(740mm前後)ですが、シート内にバッテリーを収容するEM1 e:では、シート前部の幅が広めになっており、これが少し足つき性に影響を及ぼします。ホンダ・タクトとホンダ・ジョルノのシート高が720mmなので、これまでのガソリン原付スクーターよりわずかに高いことになります。

モーター

▲ICON e:の後輪インホイールモーター。ホイール内にモーターを配置し直接リヤタイヤを駆動させる仕組みで、エネルギーロスが少なく車体を軽量に仕上げることができます

 

2台ともに、後輪インホイールモーターを採用します。数値上ではEM1 e:のほうがトルクフルかつ発進時のトルクが強いということになりますがわずかな差であり、乗り手の体重やスロットルワーク、道路環境などのほうが影響が大きいかもしれません。

製造国・企業

ICON e:はベトナム、EM1 e:は中国で製造されています。どちらもホンダの現地法人(現地企業との合弁会社)なので品質に心配はありません。

結論:ICON e:は“ストレートな”ガソリン原付一種の代替モデル

諸元を比較することで、2台の用途やどういったユーザーに最適なのかが見えてきました。

着脱式バッテリーの ICON e:

▲ICON e:は原付一種のスタンダードになってくれそうです

 

着脱型バッテリー採用のICON e:は1充電での航続距離という項目を除けば、価格、積載性、静粛性など現在のガソリン原付一種と比べてもそん色のない日常利用に最適な走行性能と使い勝手を持っていることがわかります。

まさに、“ストレートに”ガソリン原付一種の延長にある乗り物であり、ガソリン原付一種から乗り換えるのに最も違和感のない“ちょうどいい”バイクということになるでしょう。

交換式バッテリーの EM1 e:

▲EM1 e:は都市部の多様なサービスや事業との相性が良いモデル

 

一方のEM1 e:はマルチユースの交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」の利便性、そこから生まれたバッテリーシェアリングというサービスなどにユーザーのメリットが適応するかどうかで大きく変わります。決まったルート・走行距離での利用がメインとなる通勤・通学や配送業者のほか、バッテリーシェアが展開されている大都市部のユーザーには魅力的です。

スマホやノートPCもそうですが、バッテリーは使えば使うほど最大容量も減っていき、持ちが悪くなるなどその性能が徐々に劣化していきます。バッテリーの価格が高価であること、廃棄やリサイクルのことなども考えると、常に新鮮なバッテリーを使用できるシェアリングには、ユーザーにも大きなメリットがあります。

まとめ:原付一種スクーターはまだまだ終わらない!

いかがでしたか? 2台の電動原付一種スクーターを比較してみました。どちらが良い悪いではなく、どちらにもニーズがあることがわかりました。地方・都市部ともにガソリンスタンドが減りつつあるいま、生活圏内のモビリティを電動化することには様々なメリットがあります。

ICON e:の登場は、その間口を大きく広げ、ハードルを一気に下げることになります。全固体電池の実用化などイノベーションにも期待できますし、“原付一種スクーター”はまだまだ終わりませんよ!

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