「オガワさん、ステップアップ試乗会の取材をしていただくとき、気になった車両のインプレもやってみませんか?」とForR編集部からお申し出が。ハイ、喜んで!と、某居酒屋チェーンのような二つ返事で引き受けて、楽しく那須モータースポーツランドを周回した次第です。今回は「ハヤブサ」編。次回は「GSX-S1000と愉快な仲間たち」の2本立てでお送りしますので、ご笑覧ください。
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伝説的アルティメット・スポーツの現在進行形
バイクに詳しくない人でも「ハーレー」と「ハヤブサ」は知っている……と、どこかの誰かが言っているのを聞いたような気がしないでもない今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
まぁ、ヨタ話はともかく少なくともバイク好きなライダー&ライダー予備軍なら、知らぬ人はいないと言い切っても過言ではない、全銀河にその名が轟くモデルがスズキ ハヤブサです。
スーパースポーツでもない、ツアラーでもない。
そんなカテゴリー分けすら超越した究極のスポーツモデル(アルティメット・スポーツ)として1999年に登場するや市販車初の“300㎞/hブレイカー”として一躍注目を浴び、その偉業からクセの強すぎるスタイリングも「当然のもの」として受け入れられて大ヒット(その後、覇を競ったカワサキZZR1400などと合わせ、“メガスポーツ”なる言葉も生まれました)。
あまりの速さが欧州で問題視され、300㎞/h以上スピードが出ないように、かつ速度計に300㎞/hという数字を書かないように、という冗談のような「299㎞/h速度規制」をスタートさせたモデルとしても伝説化していますね。
そんな初代の威光をうまく引き継いだ2代目は2008年に登場し、小改良を受けながらもスタイル不変、人気も普遍的なまま2020年まで無事完走。
そして、2021年にバトンタッチを受けたのが、今回試乗をさせていただいた3代目ハヤブサとなるのです。
ヌメヌメでテカテカな肢体はとても扇情的〜
陽光の下、改めて眺めたそのボディは……エロい!
これ見よがしの折れ線やエッジ、装飾を極力省いた滑らかな外装の造形はコケティッシュ(!?)そのもの。特に黒×金の車体色は艶高の漆器に金箔を施したような雰囲気で、各部に配された銀メッキパーツがさらに美しさを引き立てているではありませんか!
またがろうとして車体に近づいていくと否応なしに目に飛び込んでくるピカピカな金・銀・黒……静かに高揚していく気分を抑えるすべはありません。
威風堂々たるその威容に恐れを抱くことなかれ
引き締まっては見えるものの全長2180㎜、装備重量264㎏という大柄な車体は、引き起こすとき相応の手応え(足応え!?)を感じさせます。
しかし、いざ走りだそうとクラッチを握った瞬間から、スズキ開発陣がハヤブサの車体へ入念に仕込んだ魔法のような軽やかさに、アナタもきっと驚くはず。
まず3代目から新採用されたアシスト&スリッパークラッチのおかげで、レバーを握る力があっけないくらいに少なくて済むのです。
スコン!と気持ちよく入ったローギヤに仕事をさせてゆっくりと前進していっても、ふらつきは皆無で車体の剛性と精度の高さが乗り手に伝わってきます。
たとえ右手のひねりを1㎜以下の単位で操作しても、信号を読み取ってリニアに反応してくれる電子制御スロットル(こちらも3代目で初装備)は、乗り手の狙いどおりの混合気を緻密に噴射し、意のままの加減速を実現してくれるのです。
クルクルと向きを変える“ズ太い丸太”を操れ!
ハンドリングも軽快そのもの。クリッピングポイントへ目線を送れば、そこへ向かって前輪が勝手に猪突猛進!
スーパースポーツとはまた趣の違う、横幅と奥行きの広いアッパーカウルの視覚的効果やマッチョなタンクからイメージさせられる、“ブッとい丸太”のような車体をひらりひらりと軽やかに操作する気持ちよさはハヤブサならではの世界。
クラッチやスロットルの操作不要でシフトアップ&ダウンが可能な双方向クイックシフトシステムが楽しさに拍車を掛けます。
投入された最新電子制御が魅力を倍加させる
とまぁ、ここまでは通常の試乗会でも分かったことなのですが、取材のためハヤブサが秘める実力をもう少しだけ探るべくSDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)を試乗会での固定モードである「C(コンフォート)」から「A(アクティブ)」へとちょちょいと変更……。
「うあわわわわわWSぁあわえあさわわあっWたっわさTわさあ~っ!」
極低速域から激太トルクが素早く立ち上がり40㎞/hまでの到達時間がまるで違う! それでいて多様な電子制御が陰ながらサポートしてくれている絶大な安心感も伴っているではありませんか……。
0.1秒ごとに驚愕しつつ3周ほど走行。距離が伸びるほどにさまざまなことを試したくなりましたが……。それ以上はオーナーとなったライダーだけが知ることのできる領域。
その性能はマリアナ海溝より奥深く、各種電子制御まで自分好みに設定できるので、ハヤブサと過ごすバイクライフは“飽き”とは無縁なものになることでしょう。
ほんのサワリだけでも、ここまで乗り手を夢中にさせてくれるとは……。
ハヤブサ、恐るべし!
今後もステップアップ試乗会ではハヤブサが試乗できる予定。この卓越した異次元感覚をぜひアナタも味わってみてください