「オガワさん、ステップアップ試乗会の取材をしていただくとき、気になった車両のインプレもやってみませんか?」とForR編集部からお申し出が。ハイ、喜んで!と、某居酒屋チェーンのような二つ返事で引き受けて、楽しく那須モータースポーツランドを周回した次第です。今回は「ハヤブサ」編。次回は「GSX-S1000と愉快な仲間たち」の2本立てでお送りしますので、ご笑覧ください。

伝説的アルティメット・スポーツの現在進行形

バイクに詳しくない人でも「ハーレー」と「ハヤブサ」は知っている……と、どこかの誰かが言っているのを聞いたような気がしないでもない今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか

まぁ、ヨタ話はともかく少なくともバイク好きなライダー&ライダー予備軍なら知らぬ人はいないと言い切っても過言ではない、全銀河にその名が轟くモデルがスズキ ハヤブサです。

ハヤブサ置き写真

●写真はグラススパークルブラック×キャンディバーントゴールドの塗色で価格は215万6000円。ほかにも同価格で白×つや消し青。216万7000円でつや消し銀×赤が。それぞれにホイール色やアクセントカラーの組み合わせを変えられる「カラーオーダープラン」も+5万5000円で用意されています

 

スーパースポーツでもない、ツアラーでもない。

そんなカテゴリー分けすら超越した究極のスポーツモデル(アルティメット・スポーツ)として1999年に登場するや市販車初の“300㎞/hブレイカー”として一躍注目を浴び、その偉業からクセの強すぎるスタイリングも「当然のもの」として受け入れられて大ヒット(その後、覇を競ったカワサキZZR1400などと合わせ、“メガスポーツ”なる言葉も生まれました)。

初代ハヤブサ

●デビュー当時は「GSX1300R HAYABUSA」と呼称されていた初代モデル。今では見慣れましたが、最初にこの姿を見たときの衝撃といったら! 漢字の「隼」がデカデカとサイドカウルに記載せられていたことにも超絶に賛否両論ありました。1299㏄水冷4ストロークDOHC並列4気筒エンジンは175馬力/14.1㎏mを発揮

●八重洲出版「モーターサイクリスト」1999年4月号記事より。300㎞/h超の速度を計測するのは、当然ながら国内の“ヤタベ”では不可能。欧米や日本などのバイク雑誌が協力し合い、ライバル車も含めてスペインの超高速コースで厳密にチェックした最高速度が約312㎞/h! この記録は瞬く間に全世界に知れ渡り、全ライダーの心を熱くしたのです

 

あまりの速さが欧州で問題視され、300㎞/h以上スピードが出ないように、かつ速度計に300㎞/hという数字を書かないように、という冗談のような「299㎞/h速度規制」をスタートさせたモデルとしても伝説化していますね。

ハヤブサメーター

●はい、コチラは初代ではなく最新型のメーター。3代続くハヤブサのアイデンティティでもある「5連メーター」にうっとり。やはりアナログ指針式の計器類は落ち着きます(筆者はオッサンなので……)。とはいえイマドキのバイクだけに中央部にはフルカラー液晶ディスプレイが鎮座し、各種設定の状況などを分かりやすく表示してくれます

 

そんな初代の威光をうまく引き継いだ2代目は2008年に登場し、小改良を受けながらもスタイル不変人気も普遍的なまま2020年まで無事完走。

2代目隼

●2代目HAYABUSAとなって1340㏄まで排気量がアップされたエンジンは実に197馬力/15.8kgmというハイパフォーマンス! ちなみに写真は国内でも「隼」として販売が始まっていた2016年モデル。ABSが装備され、金色に輝くブレンボキャリパーも泣かせてくれます。13年もの間、スタイルを変えることなく高い人気を維持し続けたのはご存じのとおり。「次期モデルはターボ? いや並列6気筒?」などなど、2010年代の後半には、3代目への期待(と不安!?)が大いに盛り上がったものです

 

そして、2021年にバトンタッチを受けたのが、今回試乗をさせていただいた3代目ハヤブサとなるのです。

ヌメヌメでテカテカな肢体はとても扇情的〜

陽光の下、改めて眺めたそのボディは……エロい! 

ハヤブサ リヤビュー

●パッと見て「うわっサイレンサーでかっ! メチャクチャ重そう……」と思ってしまいましたが、なんと2代目よりもトータルで2㎏以上軽くなっているのだとか。マフラー全体の構造見直しとエンジン内部(主にカムシャフト)の改良との相乗効果で成しえた快挙。エキゾーストノートもシビれるカッコよさでした!

 

これ見よがしの折れ線やエッジ、装飾を極力省いた滑らかな外装の造形はコケティッシュ(!?)そのもの。特に黒×金の車体色は艶高の漆器に金箔を施したような雰囲気で、各部に配された銀メッキパーツがさらに美しさを引き立てているではありませんか! 

ハヤブサのシート

●シート高は800㎜ながら、運転席前部のえぐりも大きく、足をスッと下へ降ろせるので想像するより足着き性は悪くありません。しかし今回のハヤブサ、差し色のセンスが良すぎる!

 

またがろうとして車体に近づいていくと否応なしに目に飛び込んでくるピカピカな金・銀・黒……静かに高揚していく気分を抑えるすべはありません。

フロントフェイス

●ラムエアダクト横のLED照明やアクセントになるカラーパーツなど、高級感を醸し出す演出が巧みで細部をじっくり眺めるごとに「ほぉ〜っ」となってしまう3代目ハヤブサ。しばらく見惚れてしまいました。写真の黒×金は本当に漆器のような艶やかさですが、かくいう滑らかなボディにあえてつや消し銀をまとわせる仕様も用意するとは……近ごろのスズキ、キレッキレです!

 

威風堂々たるその威容に恐れを抱くことなかれ

引き締まっては見えるものの全長2180㎜、装備重量264㎏という大柄な車体は、引き起こすとき相応の手応え(足応え!?)を感じさせます。

しかし、いざ走りだそうとクラッチを握った瞬間から、スズキ開発陣がハヤブサの車体へ入念に仕込んだ魔法のような軽やかさに、アナタもきっと驚くはず。

まず3代目から新採用されたアシスト&スリッパークラッチのおかげで、レバーを握る力があっけないくらいに少なくて済むのです。

ハヤブサのテール

●目に入るたび「超人バロム・ワン」の顔を思い出してしょうがない3代目のテール周り。そう見えるのは筆者だけでしょうか???

 

スコン!と気持ちよく入ったローギヤに仕事をさせてゆっくりと前進していっても、ふらつきは皆無で車体の剛性と精度の高さが乗り手に伝わってきます。

たとえ右手のひねりを1㎜以下の単位で操作しても、信号を読み取ってリニアに反応してくれる電子制御スロットル(こちらも3代目で初装備)は、乗り手の狙いどおりの混合気を緻密に噴射し、意のままの加減速を実現してくれるのです。

クルクルと向きを変える“ズ太い丸太”を操れ!

ハンドリングも軽快そのもの。クリッピングポイントへ目線を送れば、そこへ向かって前輪が勝手に猪突猛進

ハヤブサ走り

●ハヤブサは意外なほどハンドルが低く、“攻める”ためのライディングポジションを採用しています。ニーグリップでしっかりタンクを挟み込み、背筋で上体を支えながらハンドルを軽く握るセオリー通りの運転をすれば、そんじょそこいらのスーパースポーツと同等以上の旋回性を発揮! まさにアルティメット・スポーツ!!

 

スーパースポーツとはまた趣の違う、横幅と奥行きの広いアッパーカウルの視覚的効果やマッチョなタンクからイメージさせられる、“ブッとい丸太”のような車体をひらりひらりと軽やかに操作する気持ちよさはハヤブサならではの世界。

クラッチやスロットルの操作不要でシフトアップ&ダウンが可能な双方向クイックシフトシステムが楽しさに拍車を掛けます。

投入された最新電子制御が魅力を倍加させる

とまぁ、ここまでは通常の試乗会でも分かったことなのですが、取材のためハヤブサが秘める実力をもう少しだけ探るべくSDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)を試乗会での固定モードである「C(コンフォート)」から「A(アクティブ)」へとちょちょいと変更……。

「うあわわわわわWSぁあわえあさわわあっWたっわさTわさあ~っ!」

極低速域から激太トルクが素早く立ち上がり40㎞/hまでの到達時間がまるで違う! それでいて多様な電子制御が陰ながらサポートしてくれている絶大な安心感も伴っているではありませんか……。

直線のハヤブサ

●カメラマンさんの腕がいいので250㎞/h以上で疾走しているように見えますが、実際は45㎞/h程度です(笑)。3代目ハヤブサはS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を新装備し、陰に日向にライダーをサポート。「えっ? そんな機能まであるの??」と驚くこと確実なので、まずはハヤブサのウェブサイトをご確認ください

 

0.1秒ごとに驚愕しつつ3周ほど走行。距離が伸びるほどにさまざまなことを試したくなりましたが……。それ以上はオーナーとなったライダーだけが知ることのできる領域。

その性能はマリアナ海溝より奥深く、各種電子制御まで自分好みに設定できるので、ハヤブサと過ごすバイクライフは“飽き”とは無縁なものになることでしょう。

ほんのサワリだけでも、ここまで乗り手を夢中にさせてくれるとは……。

ハヤブサ、恐るべし!

足着き性ハヤブサ

●テスターは身長178㎝、体重100㎏(デブですみません)。意外なほど前傾姿勢が強めなことは、この写真からよく分かりますね。高速域で上体を伏せるとスクリーンの跳ね上げた走行風が頭の上を通り過ぎていくのです

 

今後もステップアップ試乗会ではハヤブサが試乗できる予定。この卓越した異次元感覚をぜひアナタも味わってみてください

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