じつはハーレー専門誌の編集長

バイクライターとして、普段からバイク専門誌や一般誌、WEBメディアに寄稿させていただいているボクですが、3ヶ月にいちど(季刊)のペースで発売中のハーレー専門誌「WITH HARLEY/ウィズハーレー」(内外出版社より3、6、9、12月上旬発売)」では、編集長として携わっています。

片岡義男のオートバイ小説に憧れて、四半世紀以上もダブワン(1971年式カワサキW1SA)に乗り続け、スーパークロスにときめいてモトクロスにハマったボクが、どうしてまたハーレーの専門誌なのか……。話すとこれがまた少し長くなります。

「興味のなかったハーレーをなぜ好きになったか」

自分でもいまいち理解不能なその経緯をご説明しますので、もしよろしければしばしお付き合いください。

ハーレーダビッドソン ローライダーSと青木タカオ

▲アメリカ・カルフォルニアで開催れたハーレーダビッドソン ローライダーS(2016年式)報道向け試乗会。

「好きじゃない」が第一印象

ハーレーダビッドソン FLSTC ヘリテイジソフテイルクラシック。

▲ハーレーダビッドソン FLSTC ヘリテイジソフテイルクラシック。写真は1997年式。

ハーレーダビッドソンに初めて乗ったのは大学生時代、大型バイク専門誌の編集部でアルバイトしていたときだったと記憶しています。撮影のため、ハーレーダビッドソンジャパンの広報車(メディア向けの貸出車両)で箱根方面へ出掛けたのですが、アレコレと驚きの連続でした。

クラッチレバーは重いし、ブレーキの効きも悪かった。帰りの首都高で渋滞にハマったときには、閉口したのを覚えています。その後、もっとデカくて重い「エレクトラグライド」という80年代のハーレーを所有することになるので、いまから思えばハーレーの乗り方にただ慣れていなかっただけ……、というか下手くそだったんですが、当時は「扱いづらいなぁ」と感じたのでした。

ツインエンジンには惹かれた

ダブワン(すでにW1SAを所有していた)と同じOHV、プライマリーチェーンケース、別体式トランスミッション、ドライサンプであることは分かっていましたが、その頃のボクがスタイル的に憧れていたのはバーチカルツインのBSAやトライアンフ、ノートンといった英国車たち。ハーレーを見ても、さほど興味は湧きませんでした。スタイル的には、あまり好きではない感じ……。

ハーレーダビッドソン エボリューシンエンジン、通称「エボ」。

▲1984〜2000年式までハーレーダビッドソンのビッグツインモデルに採用されたエボリューションエンジン。排気量は1340ccでした。

しかし、Vツインエンジンのドコドコとしたフィーリングは嫌いではありません。

むしろ、好き!

突き上げてくるような鼓動感、荒々しさ、図太いトルク、低いアイドリング、それはもう強烈でした。その頃、ハーレーのビッグツインモデルが採用していたパワーユニットは「エボリューション」と呼ばれる排気量1340ccのV型2気筒エンジン。詳しい人に聞くと、「先代のショベルヘッドはよかったけど、最新式はイマイチ……」などと言っていましたが、当時のボクにはチンプンカンプンでした。

サイドスタンドのクセがすごい!

ジフィースタンドと呼ばれるサイドスタンドに、ヒヤヒヤしました。ハーレーに乗ったことがある人ならご存知かと思いますが、これが独特なんです。勝手に跳ね上がらないようスタンドをロックする機構(車重をかけるとツメが車体側の溝に嵌り込む)が付いているのですが、フロント側が少しでも傾斜した場所に停めると、車体が前に動いて「スタンドが払われて倒れてしまう!」と焦ります。

それはもう、心臓に悪いのなんのって……。

ただし慣れれば、問題なし。これが重量モデルのハーレーにはとても良いことが、扱っていくうちにわかっていきます。

ハーレー特有のサイドスタンド「ジフィースタンド」。

▲ハーレー特有と言っていいでしょう「ジフィースタンド」。不慣れなうちは、スタンドが払われないかヒヤヒヤします。

経験がある人なら、すぐに合点がいくでしょう。見た目はいわゆる「生がけ」状態ですが、ジフィースタンドの場合はこれで大丈夫。慣れるまでは、それはもう心配で心配で……。何度もスタンドを掛け直すことになります。

パーツにも独特の言い回しがあった!

独特の発展、進化を遂げてきたハーレーダビッドソンというブランド。

▲独特の発展、進化を遂げてきたハーレーダビッドソン。好きになるのは、まだまだ先の話です。

編集アシスタントなので、写真につける簡単な文章(キャプション)を少しだけ書いたりもしました。そこでチンプンカンプンだったのが、ハーレーでしか使わない独特の言い回し。

サイドスタンドは先ほど説明したように、ジフィースタンド。 ハンドルクランプ=ライザー、ハンドルロック=フォークロック、プライマリーケースに付く大きな丸型のカバー=ダービーカバーなどなど、いろいろと独特の言い方があり、国産バイクといちいち違うから、これまでのバイク知識はまったく通用せず。

排気量はキュービックインチで併記され、1340ccは80ci、1200ccは74ci。ちなみに最新式の「ミルウォーキーエイト」エンジンでは117ci=1923cc、114ci=1868cc、107ci=1745ccの3タイプとなっています。ハーレーのエンジンもこの20〜30年で、一気に大排気量化しました。

ボルトやナットもインチ規格ですから、工具も国産のミリ規格のものは使えません。10mmや12mmではなく、11/16であったり3/8で「なーんやそれっ!!」って叫びたくなるのでした。インチ工具がなければ、緩んだミラーさえしめることができない。

ハーレーの整備に必要なインチ工具。

▲「おい、青木。トランポに積んで運べよー」と言われ、ミラーを外そうとすると、あれれ工具が合わない。ハーレーはインチ工具が必要。

「50歳になったら、オレもハーレーだな……」

悔しいのか、無関心だからなのか、どこかで聞いたことがあるような言葉を口にして、編集見習いのボクはヘリテイジソフテイルクラシックを借りてきた時のようにピカピカに磨き、東京・芝にあったハーレーダビッドソンジャパンへお返しするのです。

その後、知れば知るほどにこの強烈すぎる“クセ”が好きになっていくのですが、その時はまだ面倒でしかなく、ハーレーの魅力は理解不能。これがボクのハーレー初体験。

つづく。

ハーレーに惹かれた理由② 従来のイメージとはまったく違うスポーツスターの世界

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