バイクの路上駐車悪化が引き金になった

街中に気軽にバイクを停められないのはなぜか。気軽に停められる乗り物として存在していた原付一種スクーターも、今では右肩下がりに販売台数を落としている。きっかけは、2000年代から悪化したバイクの路上駐車だ。トラッカーやビッグスクーターなどストリートバイクブームの影響も大きかった。
渋谷区あおい通り駐車場

放置駐車車両確認事務の民間委託がスタート

もちろん、当時はクルマの路上駐車もひどかった。それで、2006年6月に改正道路交通法によって放置駐車車両確認事務の民間委託が始まった。これにより、通称“緑のおじさん”と呼ばれる駐車監視員が、クルマから原付スクーターに至るまで、放置車両確認標章を貼り付けていったのだ。
駐車監視員放置駐車違反であれば、原付バイクでも9,000円~、駐停車違反でも6,000円~と違反金を納めるバイク利用者が続出した。東京都では、2018年までの12年間で都内バイク保有台数(約100万台)とほぼ同じ数の102万台ものバイクが取り締まられた。都内のライダーは1人1回以上は取り締まりにあった計算となる。
放置車両確認標章

改正駐車場法が施行された

さらに、2006年11月からは改正駐車場法が施行された。これにより、51cc以上のバイク(自動二輪車)も駐車場に停めなければならなくなった。実は、法改正以前の自動二輪車は停める場所を指定されていない、言わばグレーゾーンという扱いの乗り物だった(原付一種だけは自転車法で規定されていた)。

こうした状況は、ライダーにとって都合の良いことも多かったが、駐車場法に組み入れられていないことで、民間駐車場事業者がバイク駐車場を設置することもほとんどなかった(必要性を感じなかった)。つまり、駐車場法が改正されなければ、バイク駐車場というものが増えることはなかったとも言える。
江ノ島西緑地駐輪場

路上駐車が大きな社会問題となっていた

駐車場法改正のまずかった点は、バイク用の駐車場という受け皿を整備する前に、法改正を施行してしまったことにある。バイクの路上駐車が社会問題化してから駐車場法が改正されるまでに数年間の時間があった。当然、二輪業界もその状況を黙って見ていたわけではなく、関係各所に働きかけを行っていたが、最終的には国交省等が猶予できなかったようだ。当時は、路上駐車を要因とする交通事故の発生、救急車等の緊急車両が動けないといったことが早急に解決すべき社会問題となっていたのだ。

本来は、バイク用駐車場がある程度整備されるのを待ってから、あるいは、都市部の自治体がバイク駐車場の附置義務条例を制定または改正してからなど段階的な措置をすべきだった。結果、街中には行き場を失ったバイクがあふれ、数少ないバイク駐車場には入庫待ちの行列ができた。

駐車場事業者も「バイクは割に合わない」

民間の駐車場事業者も法改正が施行されるまでは「バイク用スペースなんて必要ない」と考えていたから、四輪用をバイク用に転換するといった急な対応はシステム的、機械的にも難しかった。また、バイク用駐車場が増えにくかった要因の一つには、四輪と比べて料金レートが自転車に近く利益が薄いこと、さらには、チェーンロックをかけないなどマナーの悪い利用者が目立っていたこともあった。中には、チェーンを切ったり、設備を壊してまで停める者もいるなど、メンテナンスを含めると割に合わないという声も聞かれた。

駐車場事業者は、自治体と協定を結ぶなどして、公有地まで活用してバイク駐車場を設置するといったケースも増えていたが、現在ではバイク駐車場の利用者も減少傾向にあり、ビジネスとして成り立たなくなっている所も多い。利用者の減少は、法改正以降、ライダーやバイク利用者が都市部にバイクで出かけることをあきらめてしまっていることも大きな要因だろう。

商業施設は民間なので個別に対応

ショッピングモールやデパートなどの商業施設では「バイク」とひとくくりにされた駐車場が増えた。原付から大型バイクまで、何の疑いもなく警備員に誘導されることも多いが、法律的には、51cc以上の自動二輪車は四輪用スペースに停めてしかるべきなのだ。我々としては、四輪用の駐車スペースを二輪用に転用してほしいと思うのだが、これもなかなか進まない。四輪用スペースの転用なぜなら、駐車場事業者・管理者の多くは民間であり、どこに停めるべきかは、施設・土地権利所有者等の意向に従わざるを得ないからだ。こうした施設に二輪用駐車スペースを作らせるには、自治体ごとに附置義務条例の制定・改正が必要だ。

附置義務制定には条例改正等の高いハードル

駐車場の附置義務というのは「商業施設など一定の規模を超える建物や敷地には、バイクの駐車スペースも確保する」という市区町村ごとに条例で定められるものだ。全国1,718自治体のうち四輪用駐車場を定めている自治体は200弱あるが、二輪車駐車場に関して附置義務を定めているのはわずか10自治体だ(2020年末時点)。

条例の制定・改正には、市区町村の議会を動かす必要があり、そう簡単に進むものではない。特に「バイクよりも放置自転車の方が問題!」となっている現状では、バイク駐車への理解も得にくく、さらに難しい状況にある。デッドスペース活用二輪業界は、法改正以降も、政令指定都市等への二輪車駐車場の附置義務条例制定・改正の要請や国交省からの通達の後押し、警察庁への取り締まり緩和等に関する陳情等を続けているが、劇的な進展を望むのは難しい話だ。

我々ライダー・バイク利用者としてこの問題を振り返るならば、ユーザーとしてしっかり声を上げてこなかったことも要因の一つだろう。今さら悔やんでも仕方ないが、自分の住んでいる自治体行政(役所・役場の担当者)に声を届けるなど、地道に続けていかねばならない。

 

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