既存のホンダ・CRF250LCRF250ラリーだけでなく、2024年末にはカワサキからKLX230KLX230シェルパが登場し、2025年は久々の400ccクラストレール・スズキDR-Z4Sや、KTMのトレールバイク390エンデューロRの発売が秒読み段階であることなどなど。にわかに盛り上がりつつあるバイクのジャンルがオフロードバイクだ。ただこのオフロードバイク、いざ始めようとするとちょっとばかし特殊でエントリーユーザーにはわかりにくいことも多い。そこでオフロードバイク遊びをするためのハウツーを毎回少しずつ紹介していく本企画。よく“単独での林道ツーリングは危険!”とか、“林道は必ず複数人で!”なんて話を聞くけど、いったいどういうことなんだろう?

ダート林道は単独で走りに行ってはダメなのか?

文字どおり単騎でダート林道を走りに行くのが『林道ソロツーリング』。

文字どおり、単騎でダート林道を走りに行くのが『林道ソロツーリング』。

 

「ダート林道への単独行はNG。必ず2人以上で走ろう!」……なんてことを書いてある林道ハウツーをよく見かけるけど、結論からいうと“単独でダート林道に出かけてはダメ!”なんてことはない。僕自身、複数人での林道ツーリングもするけど、基本はソロで林道に走りに行く方が多いくらい。

『林道マスツーリング』と『林道ソロツーリング』の両方をやっていて思うのは、言葉の意味では“単独”と“複数人”というだけだが、実際には林道ツーリングにおける“マス”と“ソロ”は、まったく別の遊びであるということだ。

二人以上のパーティを組んでダート林道を走りに行くのが『林道マスツーリング』。

二人以上のパーティーを組んで、わいわい楽しくダート林道を走りに行くのが『林道マスツーリング』。

大抵のことはマンパワーで解決!! 『林道マスツーリング』

一人の力では越えられないような難所でも、押してくれたり、引っ張ってくれる人がいると踏破できる箇所が格段に増える。

一人の力では越えられないような難所でも、押してくれたり、引っ張ってくれる人がいると踏破できる箇所が格段に増える。ちなみにこんなふうに押し引きしながら二輪二足で進んでいく遊びがヤマハのオフロードバイク・セローシリーズが提唱する“マウンテントレール”という世界観。現代ではアタックツーリングとも呼ばれる。

 

複数人で走る『林道マスツーリング』は、大人数で走るものだからとにかく何かあった時の対応力が高くなる。例えば、ぬかるみやガレ場などの難所にハマってしまいうまく進めないとき。後ろから押してくれたり、前側でフロントタイヤを回してくれる人がいるだけでオフロードバイクは格段に動かしやすくなる。

しかも、なぜだか林道ツーリングのような特殊な状況下では、“困った時はお互い様。助けるのも助けてもらうのも当たり前”。みんなで押したり引いたりをしているうちに連帯感も生まれてきたりしてとても楽しい遊びである。

乗り手に高い技術がなくても、まわりのサポートがあれば越えられる……なんて状況がとても多い。人数の多さはライディングテクニックのカバーになるのだ。

乗り手に高い技術がなくても、まわりのサポートがあれば越えられる……なんて状況がとても多い。人数の多さはライディングテクニックのカバーとなりうるのだ。

 

また単独走行では心細くなるような場面も『林道マスツーリング』なら笑って過ごせるのもいいところ。以前、仲間との林道ツーリングに出かけた際、予想以上に道が荒れていて進みが異常に悪く、朝の8:30に現地集合して山の中に入ったのはいいが、出てきたのは翌日の朝6時なんてこともあった。

水も食料も尽きた状態で思いがけず山中1泊。単独でこんな状況になったら1発で心が折れてしまうだろうが、仲間がいるから笑って……はいられなかったが乗り越えられた(笑)。

水も食料も尽きた状態で思いがけず山中1泊。一般的にはこれを“遭難”と呼ぶかもしれないが、仲間がいるから笑って……はいられなかったが乗り越えられた(笑)。単騎でこんな状況に陥ったら1発で心が折れてしまうだろう。

 

上記したような極端なアタックツーリング的な状況でなくても、『林道マスツーリング』なら故障や転倒といったトラブル発生時の対応能力も段違い。例えばライダーが転んでケガをしてしまったり、バイクを壊してしまって動けなくなってしまったような状況。単独である『林道ソロツーリング』でこれをやると携帯電話の電波が繋がらない時点で進退窮まってしまうが、仲間がいれば麓まで助けを呼びに行ってもらうことができる。

オーバーランでバイクを道から落としてしまった場合でも、仲間がいるならマンパワーで押し上げるのもたやすいが、ソロだと途方に暮れることになる。

オーバーランでバイクを道から落としてしまった場合でも、仲間がいるならマンパワーで押し上げることもできるが、ソロだと途方に暮れることになる。

 

頼れるのは己のみ!! 『林道ソロツーリング』

では一方の『林道ソロツーリング』。ここまでの内容だと“やっぱりダート林道は複数人で走ったほうがよさそう…”なんて思ってしまう人もいるだろう。ただ単騎でダート林道へ挑むのが不安なのであれば、無理にオススメするつもりも毛頭ない。“安心安全”の観点で語れば『林道マスツーリング』の方が断然難易度が低いのは間違いないからだ。

ただ冒頭で話したとおり、『林道ソロツーリング』と『林道マスツーリング』は別の遊びである。みんなでワイワイ楽しく困難を乗り越えていくのが『林道マスツーリング』の楽しさだとしたら、『林道ソロツーリング』はより強いアドベンチャー要素がその醍醐味となる。

山奥で一人ぼっち。頼れるものがないうえに、転倒などのリスクも多い『林道ソロツーリング』に出るとアドベンチャーマインドがこれでもかとくすぐられる。

山奥で一人ぼっち。頼れるものがないうえに、転倒などのリスクも多い。『林道ソロツーリング』に出るとハラハラドキドキのアドベンチャーマインドがこれでもかとくすぐられる。

 

単騎になると『林道マスツーリング』では楽しくワイワイ挑めていたような難所が途端に難易度アップ。進退窮まってしまう状況に陥る可能性すら出てくる。そんな極端な状況でなくても、ちょっと速度をあげすぎてカーブを曲がりきれず道から落ちてしまうだけで、自力復帰が困難になるシチュエーションはダート林道の中にはいくらでもある。

そんな数々のリスクを前に、“トラブルを起こさず無事に帰ること”を大前提にリスクマネジメントを行い、林道を踏破するのが『林道ソロツーリング』の醍醐味なのだ。転倒やオーバーランで帰れなくなる可能性があるなら、転倒もオーバーランもしない安全な速度で走ればいいだけであり、越えるのが難しい難所に出くわしたら大人しく戻ればいいだけの話である。

こんな状況を前に、“トラブルを起こさず無事に帰ること”を大前提に進むか戻るかの判断をする。乗り越えるための己の技量はもちろんだが、“換えのレバー”と“工具”を持っていれば転倒覚悟で挑むこともできる。

道がない!? こんな状況を前に進むか戻るかの判断をする。難所を乗り越えるためのテクニックはもちろんだが、“換えのレバー”と“交換のための工具”を持っていれば転倒覚悟で挑むという選択肢が選べるようになる。ちなみにダート林道は上り勾配と下り勾配で難易度が大きく変わるので要注意。もちろん重力を利用して下る方が簡単で、上る方がテクニックが必要になる。調子に乗って急な坂道を下ってしまったら戻るに戻れなくなって苦労した……なんてことはよくある話。

 

つまり自分の技量とマシンの性能、それから持っている装備を含めて、“どこまで挑戦するか?”を決めるのは自分というわけ。難所を前にさっさと諦めてしまうのは簡単だが、難しいと思った場所に挑戦してクリアできた場合の達成感の強さはひとしお。それこそ同じ場所を走ってもソロとマスでは達成感の強さが段違いとなる。『林道ソロツーリング』はアドベンチャー要素がより強い遊びというわけだ。

“そんなことして何が楽しいの!?”と言われると返す言葉もないのだが、難易度の高い林道を踏破できるとものすごい達成感がある。

“そんなことして何の意味があるの!?”と真顔で言われてしまうと返す言葉もないのだが、難易度の高い林道を自分一人の力で踏破できるとものすごい達成感があるぞ。

 

 

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