「打倒GSX1300Rハヤブサ」(?)に燃えて190馬力エンジンを開発し2006年に登場した「ZZR1400(北米名:Ninja ZX-14)」ですがスズキだって黙っちゃいません。2008年には197馬力までパワーアップした心臓を引っさげた2代目「ハヤブサ」がメガスポーツ頂上決戦の場へと降臨。(299㎞/h)規制はあるが仁義のない戦いの行方は!?

1400GTR

●2006年登場したカワサキ「ZZR1400」の翌々年、2008年にサクッと登場してきた「1400GTR」! エンジンやフレームなどには多大なる開発費がかかるものですから、それらをうまく活用できる兄弟車を出して数を売るという戦略は非常に正しいものだと言えます。実はスズキも2代目「ハヤブサ」を出したとき、同様の戦略を繰り出してきたのですけれど「1400GTR」のような王道ツアラー……ではありませんでした(^^ゞ。詳細は後述いたします!

 

 

Ninja ZX-14Rという最強旗艦【その5】はコチラ!

 

Ninja ZX-14Rという最強旗艦【その7】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

羨望だったビッグバイクが「当たり前」となる時代がついに到来〜!

 

 

忘れがたき2000年代のバイクシーン……。

 

 

1980年代に今では信じられないくらいの数が日々販売されていた250&400のレーサーレプリカ軍団は、1990年代のうちに度重なる環境諸規制の強化(騒音規制はもちろん排ガス規制の厳しさ増大がヤヴァかった)や馬力規制の影響を受けてイッキに絶滅方向へ……。

1996年型NSR250R

●2スト250レーサーレプリカが規制により販売ができなくなるギリッギリまで粘ってラインアップに残り続けたホンダ「NSR250R SP」は写真のレプソルカラーに(スズキ「RGV-Γ250SP」も同様にラッキーストライクカラーに)塗られたモデルを含む1996年型をもって進化の歴史に終止符が打たれました(フルラインアップカタログにはそこから数年間掲載されていましたが(^^ゞ)。入れ替わるように1998年、リッタースーパースポーツの雄となったヤマハ「YZF-R1」が登場し、大排気量スーパースポーツ走り屋(死語?)たちのハートをガッチリつかみ始めます

 

 

気が付くと国内市場の400㏄以下はスクーター、トラッカー、クルーザー、ネイキッド、モタードらが小さくなるばかりのパイをチマチマ食いつぶし合うという状態に……。

TW225

●1987年、アドベンチャートレールとして生まれたヤマハ「TW200」は登場からずっとツウな林道マニアが偏愛する奇特な存在として知る人ぞ知るようなモデルだったものの、2000年に放映されたTVドラマの影響などもありカスタム人気が大爆発! 2002年には写真の「TW225E」へ転生デビューを飾り、洒落たストリート系トラッカーとしての地位を確立いたしました(2007年型が最終モデル)。ちなみに海外では「TW200」の2025年モデルがまだ生き残っていたりします

 

 

しかし一方、1995年から大型自動二輪免許が創設されて超難関だったビッグバイク免許が教習所で買え……いや、取得できる時代になったこともあり、速さを求めるレプリカ魂を失わなかったヤンチャ気味?なライダーたちはメガスポーツやリッタースーパースポーツの逆輸入車をこぞって購入!

CBR1000XX

●1996年に登場するや当時の王者「ZZR1100〈D型〉」と最高速バトルをバチバチに繰り広げたホンダ「CBR1100XXスーパーブラックバード」でしたが、以降スズキとカワサキが本気(マジ)になったガチ300㎞/hオーバーの戦いからは一歩身を退き上質で最高なフラッグシップという路線へ変更。2001年には写真の国内仕様「CBR1100XX」まで登場してハイソサエティなライダーたちに(?)愛されました。このように国内仕様ビッグバイクが充実すると同時に各メーカーのディストリビューターも頑張って、逆輸入車&輸入車さえ急激にフツーの存在となっていった時代でもありましたねぇ、2000年代は〜。バイク雑誌のアルバム号編集も大変でした(^^ゞ

 

地上で最速級のバイクたちがドカスカ改良&量産されたあの頃

 

本来のメインターゲットである欧米……特にスペインを中心にそれらがバカ売れしていたこともあり、CBR、YZF、GSX-R、Ninja ZX-Rといった国産スーパースポーツ群は1~2年ごとにマイナーチェンジやモデルチェンジが重ねられていくという、まさに1980年代のレーサーレプリカもかくやな状況になっていったのです。

2004_YZF-R1

●「YZF-R1」の20周年を記念して作られたヤマハ公式の「R1 History 1998-2017」は必見ですよ。怒濤の最初期頻繁改変からリーマンショック以降の刷新間隔緩慢化ぶりも含めて……(涙)。写真は個人的に思い入れの深い2004年モデル。乾燥重量172㎏で最高出力172馬力! サブスロットルバルブFI! アップマフラー! そしてとにもかくにも美しいスタイリング! 運良く筆者が海外ショーへバンバン取材に行かせてもらっていたころですので、かくいう時代背景も含めて非常に懐かしいですな〜

 

 

片やメガスポーツ市場はスズキとカワサキの一騎打ち状態となっていたため短いスパンでの抜本的改革はなかったのですけれど、その分「次のハヤブサは(ZZRは)どうなるのだろう!?」と数年単位で妄想と期待が膨れあがっていくという夢のような時間が流れていました。

夢イメージ

●「次のハヤブサは1400、いや1500㏄になるのかも!?」。なぁんて開発陣の苦労なんぞ知るよしもなく、無責任に想像をたくましくしていたアノ頃。ある意味で楽しかった……

 

カワサキから突然(?)超ド級フラッグシップツアラーが登場!

 

2006年に登場した「ZZR1400(北米名:Ninja ZX-14)」は旗幟鮮明な至上のフラッグシップを待っていたファンを中心に熱い支持を集めて順風満帆な船出となり関係者も一安心(^^ゞ。

 

 

ここでカワサキは攻勢の手を休めず「ZZR1400」をベースにしつつ、あらゆるところに手を加えたコンチネンタルツアラー「1400GTR(北米名:Concours〈コンコース〉14」を2008年にリリースしてきたのです!

1400GTR

●2008年型「1400GTR」。ツアラー向けに大幅な改良が施された1352cc水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは150馬力を8800rpmで発生。最大トルクは13.9kgm/6200rpm。シート高815㎜、乾燥重量279㎏、燃料タンク容量22ℓ[※データは日本に逆輸入されたマレーシア仕様のもの]。片側あたり最大積載量10㎏でフルフェイスヘルメットも収納可能な大型パニアケースも標準装備!

 

 

「ZZR1400のスタイルをチョチョイと変えて旅仕様にしただけでしょ?」と当初認識していた不肖オガワ。

2003年型1000GTR

●「1000GTR(北米名:Concours)」は1986年に登場したツアラーで、エンジンは同年登場した「GPZ1000RX(北米名:Ninja1000RX)」と同じ998㏄。なお「GPZ1000RX」は1988年までの生産でしたが「1000GTR」は細部改良を受けつつ写真の2003年モデルまで販売されました。こちらの後継車という触れ込みで登場したのが「1400GTR」だったのです……似ても似つかぬという言葉が相応しいですけれど(^0^)

 

 

その多岐にわたりまくりな改良内容を知るほどに、開発陣のこだわりっぷりへ深く感銘を受けました。

 

 

エンジンからして回転数とスロットル開度によってカムシャフトのタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構を新規採用!

 

 

静粛性やメンテナンスフリー性に優れるシャフトドライブの採用は想定の範囲内でしたが両持ち、かつリンクロッドを4本も備え、サスペンションの上下運動を極力抑えるテトラレバーシャフトドライブシステムという、超絶に凝ったメカニズムまで投入してくるとは思いもよりませんでしたネ。

1400GTRカタログ。メカ編

●2008年型「1400GTR」カタログより。いつもより解像度の大きなデータを埋め込みましたので説明文を拡大して読んでみてくださいね〜(直下のカタログも同様)

 

 

その他、電動可変式ウインドスクリーンやスマートキーシステム、空気圧センサー、パニアケース、DC電源ソケットほか当時考えられる限りの豪華装備が満漢全席!

1400GTR装備群

●2008年型「1400GTR」カタログより。なお、2010年型ではカワサキ車として初のトラクションコントロールシステム(KTRC)を搭載したほか、ウインドスクリーンや外装類などへも細かな改良が施されました

 

 

乾燥重量で279㎏というヘビー級なビッグボディを軽やかに操ることのできる(確かにシャフトドライブのクセはほとんど感じなかった!)フラッグシップツアラーとして、こちらも想定以上のヒットを放ったものです。

1400GTR

●2011年型「1400GTR」カタログより。2015年モデルでも1速ギヤ比の変更ほか熟成が進み、翌2016年までブライトコーポレーションが逆輸入車を日本へ導入していたはず。直接的なライバルとしてはホンダ「VFR1200F」、ヤマハ「FJR1300」、BMW「K1200GT」といったところ。後継モデルは……「Ninja H2 SX」でしょうかね〜

 

メガスポーツジャンルの覇権を争うライバルも勇躍☆全面刷新!

 

そして2008年……「ZZR1400」の「とも(強敵)」とも呼べる2代目「ハヤブサ」がフルモデルチェンジを敢行いたしました。

ハヤブサ_2008

●2008年型スズキ「ハヤブサ」。1340cc水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは197馬力を9500rpmで発生。最大トルクは15.8kgm/7200rpm。シート高805㎜、乾燥重量220㎏、燃料タンク容量21ℓ 。……初代の良かったところを色濃く受け継いだスーパー正常進化型フルモデルチェンジ!

 

 

排気量は初代の1298㏄から41㏄増やされて1340㏄となり、175馬力だった最高出力はなんと197馬力(ラムエア加圧時は未発表)へ到達!

 

 

精悍な5連メーターや、今やスポーツモデルでは当たり前の装備となりつつあるドライブモード切り替えスイッチS-DMS〈Suzuki Drive Mode Selector〉=3段階の出力特性を選択可能)を率先して導入したことでも話題になったものです。

ハヤブサメーター

「300」の数字表記こそないものの目盛りはしっかり刻まれているハヤブサのスピードメーター。中央の液晶部にはS-DMSの3段階……A・B・Cと記されたインジケーターが見えますね。Aモードは全てのスロットル開度で最大の出力が得られる特性で、Bモードはスロットル開度に対してリニアかつフラットなトルク特性に変化。Cモードは出力を下げて全てのスロットル開度でBモードよりもさらにソフトな操作レスポンスとなっていました

 

 

オーソドックスなアルミツインフレームにも大きく手が加えられて剛性が15%アップ……などなど、メカニズムにはもちろん9年分の進化が投入されているのですけれど、なんといっても秀逸だったのはデザインの上手すぎる変化だったと筆者は思っております。

 

 

好評だった初代の有機的で滑らかなフォルムを踏襲しつつ空力性能もしっかりアップデートさせたグラマラスな肢体を実現し、高い人気を維持することに成功したのでした。

ハヤブサ走り

●私的インプレではありますけれど、「ハヤブサ」ってセパレートのハンドルがグッと下がっており予想以上に前傾姿勢を強いられるのですよね。まさしくカウルの中にグッと潜り込んだハイスピードスポーツライディングに最適なポジション、そしてスタイリング……。太ももでタンクをギュッと挟み込み、シュッと背筋へ気合いを入れるほど意のままな加減速やハンドリングが楽しめて最高でした〜!

B-KING

●そんな「ハヤブサ」と同時(2008年)に発表されたのがツアラー……ではなく、まさかのネイキッド化(+エンジンもフレームもスイングアームもホイールもその他モロモロ大改良)されたバイクの王様!?「B-KING(ビーキング)」。2001年に発表されたコンセプトモデル(スーパーチャージャー付き!)が、なんと7年後に現実世界へ降臨! ただ、期待していたスーチャーがなかった、価格が「ハヤブサ」より10万円近く高かった、リーマンショックが訪れた〜など多種多様な要因が重なってしまい販売は苦戦……しましたが、現在の中古車市場では一定以上の評価を受けていますね。そんなところも実にスズキらしい!?

B-KINGプロトタイプ

●ちなみにこれが2001年にお披露目されたプロトタイプ。このデザインのエッセンスは「GSR400」や「GSR250」へ受け継がれて好評を得ました

 

カワサキ開発陣も排ガス規制をクリアしつつ馬力向上させてきた!

 

対する「ZZR1400」も狙っていたのか偶然なのかは分かりませんけれど、2008年モデルで大幅な改良を実施して当時一番厳しかった排ガス規制、EURO3に対応してきました。

 

 

よりクリーンな排出ガス規制値を達成しようとすればパワーダウンは避けられない……というのが一般的な認識だったのですけれど、カワサキはなんと吸排気系の改善はもちろん、エンジン内部のモディファイまでキメ細かく行って厳しいハードルをクリアしつつ最高出力を3馬力アップさせて193馬力にアップさせてきたのですからビックリ(ラムエア加圧時も3馬力アップの203馬力と発表 ※データは欧州フルパワー仕様)!

2008年型ZZR1400カタログ

●2008年型「ZZR1400」カタログより。ハニカム触媒の追加、ピストンプロフィールやエンジンヘッド、吸気ポートの形状なども変更、ECU刷新ほか書き切れないほど多岐にわたる排ガスクリーン化&パワーアップへの方策はもちろん、アルミメインフレームの成形方法まで改善するという気合いの入りっぷり。……実際のところ「ハヤブサ」と「ZZR1400」はどちらがだったのか!? 興味深いゼロヨン加速テストの記事はコチラ!

 

 

お互い一歩も引かぬメガスポーツ龍虎対決に世界中のファンが熱くなったのも当然ですね。

 

そして遂にリーサルウエポン「Ninja ZX-14R」が世に放たれる!

 

しかし、2008年の9月に端を発するリーマンショックの影響で世界経済が急減速するにつれ、趣味性の高い大排気量モデルは全体的に販売数が大幅ダウン……。

バブル崩壊

●リーマンショックがもう17年前ですか……。もしご存じないお方がいらっしゃるようならググッてみてくださいね。現在に通じる示唆に富んだ教訓が得られますので

 

 

あれほど元気だったジャパニーズスーパースポーツ群も毎年のような大幅改良は鳴りを潜めて、色変わりだけが数年単位で続いていくという状況へと様変わり。

GSX-R600

●あくまで一例ですが、2011年にモデルチェンジを受けた「GSX-R600」……

GSX-R600 2025

●北米では2025年の今も現役!な「GSX-R600」存在してくれているだけで嬉しい!?

 

 

重篤な金融危機がワールドワイドに広がり、本格化していった2010年代初頭ともなれば、趣味性の高いファンモデルなんてほぼほぼフェードアウトして消えてしまうのではないか……とギョーカイ人ならずとも誰しもが思ったものです。

 

 

駄菓子菓子! 

 

 

カワサキは2012年、フラッグシップの堂々たるモデルチェンジを行い、生まれ変わった「ZZR1400(この欧州名は変更なし。北米ほかでは『Ninja ZX-14R』となり、日本で販売される逆輸入版の車名もこちらが主流に……。というわけで以降は『Ninja ZX-14R』と表記いたします)」では、ついに最高出力200馬力(ラムエア加圧時210馬力)という大台に到達~ッ! 

ZX-14R

●2012年型「Ninja ZX-14R ABS」。下の従来車と比べるとパッと見では間違い探しのようですが、よくよく目を凝らしていけばアレが違う、コレも違う……と格段の進化を遂げていることが分かってくると思います。実際、ベツモノなのですよ!

2011ZZR1400

●2011年型「ZZR1400 ABS」。なお14年前、当時の税抜き本体価格は148万円だったのですね……(遠い遠い遠い目)

 

 

またまた世界はドギモを抜かれることになりました。

 

 

次回はその詳細を語ってまいりましょう!

オーリンズ仕様

オーリンズ仕様やら「ハイグレード」やらがありましたね〜(^^ゞ

 

 

あ、というわけで記憶に新しい2000年代のモデルすでに20年ほど前に生産された存在。しかし、レッドバロンが『5つ星品質』として販売している中古車なら消耗パーツの心配をする必要なく楽しむことができます。まずはお近くのお店で在庫を確認してみてください〜!

 

 

Ninja ZX-14Rという最強旗艦【その7】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

Ninja ZX-14Rという最強旗艦【その5】はコチラ!

 

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