既存のホンダ・CRF250LCRF250ラリーだけでなく、2024年末にはカワサキからKLX230KLX230シェルパが登場し、スズキからも久々の400ccクラストレールのDR-Z4Sが発表されるなど、にわかに盛り上がりつつあるバイクのジャンルがオフロードだ。ただこのオフロードバイク、いざ始めようとするとちょっとばかし特殊でエントリーユーザーにはわかりにくいことが色々多い。そこでオフロードバイク遊びをするためのハウツーを毎回少しずつ紹介していこうというのが本企画の趣旨。今回はオフロード用ブーツをピックアップ。実は、安全のためには専用のヘルメットやウエアよりも先にそろえてもいいくらい重要なアイテムだったりする。

転倒や接触、ヒットの多いオフロード走行には専用のブーツを用意したい。

転倒や接触、ヒットの多いオフロード走行をするなら、ケガする前に専用のオフロード用ブーツを用意したい。写真のオフロードブーツはアルパインスターズのトライアルブーツ『テックTブーツ』。

 

冒頭でも触れたけど、実はオフロードバイク遊びを始めるにあたって、真っ先にそろえて欲しいのがオフロード用ブーツだ。というのもオフロード遊びはロードバイクよりも速度域こそ低いものの、遥かに転倒する確率が高いから。速度域が低いことで転倒時には体がバイクから離れにくく、しかも路面に起伏があったりしてバイクと路面に足を挟む……なんて状況が起こりやすい。

オフロード走行するのに安心なのは膝下まで覆われるようなハイカットタイプ。写真はアルパインスターズのエンデューロブーツ・『テック7エンデューロ』。

オフロード走行するのに安心なのは膝から下をしっかりガードするハイカットタイプ。写真はアルパインスターズのエンデューロブーツ・『テック7エンデューロ』。ニーブレース(膝用プロテクター)の『RK-1 プラズマ ニーブレース』も装着している。

 

運悪く、岩角とバイクに挟まれたり、また運良く岩角は免れてもバイクの接触面がエンジンやエキゾーストパイプだったりしたら? ……そんな最悪の状況に陥らないようにするためのアイテムがオフロードブーツというわけだ。また転倒とは言わないまでも、急にハンドルが振られたりすれば咄嗟に足が出るもの。そんな場合に岩角や切り株があれば安易に足先をヒット。少なくとも無意識のうちに自車のステップで向こう脛を打つなんてことが日常的に起こるのがオフロード。いかにも動きにくくて重そうなオフロードブーツ(実際、動きにくいし重い……)をわざわざ履くには、裂傷や捻挫、骨折を防ぐというそれなりの理由がある。オフロードを安心して楽しむためにはそれなりの装備が必要なのだ。

オフロードブーツでは上部をベルクロで固定し、写真のようなバックルでテンションをかけるのが一般的。写真のオフロードブーツはアルパインスターズのアドベンチャーブーツ・『コロザル アドベンチャー ブーツ』。

オフロードブーツでは上部をベルクロで固定し、写真のようなバックルでテンションをかけるのが一般的。写真のオフロードブーツはアルパインスターズのアドベンチャーブーツ・『コロザル アドベンチャー ブーツ』。

 

いろいろあるぞ! オフロード用ブーツの種類

願わくば、そんな効用を身を持って知る前に足元の防御力をUPして欲しい。……というのが、オフロードヘルメットやウエアよりも先にオフロードブーツをそろえてほしい理由だったりする。ただひと口にオフロード用ブーツと言っても色々あって、本来なら用途や走り方の方向性で選ぶアイテムが変わるのだが、全くの初心者ならそれも判断しにくい。オススメなのは、どのタイプを選ぶにしてもやはり火傷の心配がなく、ニーシンガードやニーブレースといったプロテクターと併用で防御力がより高められるハイカットタイプだ。

モトクロス用ブーツ

飛んだり跳ねたりはもちろん、転ぶことが前提のモトクロス競技用で、プロテクション性能が第一。ハイグレードなモデルには関節のケガを防ぐため足首の可動域や可動方向も制限するようなブーツもある……が、その分バイクを降りた時には歩きにくくなるし、くるぶしの可動域が制限されるため足着き性も悪く感じる。また太もも部分も大きいため、パンツをブーツアウトしにくかったりするので、ツーリング用途にはちょっと使いにくい場合が多い。

競技色が強まれば強まるほど、それだけ高速時の転倒や、高いジャンプからの落下を考慮するためブーツそのものが固くなるため、歩きにくくなる。写真はアルパインスターズの最高峰モトクロスブーツ・『テック10』。

競技色が強まれば強まるほど、それだけ高速時の転倒や、高いジャンプからの落下を考慮するためブーツそのものが固くなるため、歩きにくくなる。写真はアルパインスターズの最高峰モトクロスブーツ・『テック10』。

 

エンデューロ用ブーツ

アルパインスターズのエンデューロブーツ・『テック7エンデューロ』。

アルパインスターズのエンデューロブーツ・『テック7エンデューロ』。筆者が使っているのは透湿防水素材(ドライスター)のライナーの入ったモデル。

 

形状はモトクロス用ブーツによく似ているが、こちらは難所系マラソン的なエンデューロ競技用で使うオフロードブーツ。エンデューロ競技では、走るだけでなく降りてバイクを押したり引いたりすることも日常茶飯事。エンデューロブーツは、そんな状況を考慮して凸凹のあるソールを採用しており、幾分踏ん張りやすくなっている。林道ツーリング用途で、プロテクション性能が高いオフロードブーツが欲しいなら、“モトクロス用ブーツ”よりは“エンデューロ用ブーツ”の方が柔軟性のある構造や素材を採用していて歩きやすい場合が多い。

モトクロス用がステップの上での動かしやすさ第一のフラットソールを採用するのに対し、エデューロブーツは凸凹のパターンで路面に踏ん張りが効くようになっている。

モトクロス用がステップの上での動かしやすさ第一のフラットソールを採用するのに対し、エデューロブーツのソールには凸凹パターンがあり、路面に踏ん張りが効くようになっている。登山用のビブラムソールに比べればグリップは低いが、それでもフラットなモトクロスブーツに比べれば格段にグリップする。

 

トライアル用ブーツ

アルパインスターズのトライアルブーツ『テックTブーツ』。

アルパインスターズのトライアルブーツ『テックTブーツ』。足首がとにかく動かしやすく、筆者はトライアル競技はやらないが、アドベンチャーバイクなどに乗る時にも使用するほか、軽い林道ツーリングやアタック系の林道ツーリングでも履いている。ただこの『テックTブーツ』は防水性に関してはほぼゼロという印象だ。

 

バイクの操縦技術の高さを競うトライアルでは、スタンディングでのステップコントロールが重要になるため足首の可動域や自由度がオフロードブーツの中ではかなり高く設定されている。また絶対的な速度域がオフロード競技の中でも低いため、過剰なプロテクション機能がないのもトライアル用ブーツの特徴だ。このため“モトクロス用ブーツ”や“エンデューロ用ブーツ”に比べて防御力は低いが、軽くて歩きやすいのでツーリング向きと言える。

ステップコントロールがしやすいよう、ヒールがなく靴底がフラットになっている。滑りやすい斜面や岩の上など、難所で使われることが多いためソールのグリップ性能も登山靴のようにいい。

ステップコントロールがしやすいよう、ヒールがなく靴底がフラットになっている。滑りやすい斜面や岩の上など、難所で使われることが多いためソールのグリップ性能も登山靴のようにいい。

 

アドベンチャーブーツ

アルパインスターズのアドベンチャーブーツ・『コロザル アドベンチャー ブーツ』。

アルパインスターズのアドベンチャーブーツ・『コロザル アドベンチャー ブーツ』。一般的なライディングブーツと比べるとくるぶしの動きが制限されるが守られている感は強い。林道ツーリングから一般的なツーリングにも使えるが、ふくらはぎ部分が大きいのでブーツアウトする際にはパンツを選ぶ。

 

最近流行りのアドベンチャーツアラー用に作られたブーツで、林道ツーリングくらいの軽めのオフロード走行に必要な適度なプロテクション性能と軽さ、バイクを降りての歩きやすさも重視されている。ツーリングでの使い勝手を高めるため全天候型で防水仕様になっているモデルも多い。ふくらはぎまで隠れるプロテクション重視のモデルや、ローカットでさらに軽く歩行性能を重視したモデルもある。

 

競技用のオフロードブーツほどの堅牢性はないが、それでもロードバイク用のシューズに比べるとずいぶん頑丈に作られている。

競技用のオフロードブーツほどの堅牢性さはないが、それでもロードバイク用のシューズに比べるとずいぶん頑丈に作られている。

『コロザル アドベンチャー ブーツ』のソール。

『コロザル アドベンチャー ブーツ』のソール。

 

オフロード用ブーツの選び方

競技でのプロテクション性能を求めるなら“モトクロス用ブーツ”か“エンデューロ用ブーツ”になるが、ツーリングに使うなら歩きやすさも重要になる。プロテクション性能と歩きやすさのバランスこそがオフロード用ブーツ選びのキモだ。写真はアルパインスターズのエンデューロブーツ・『テック7エンデューロ』。

競技でのプロテクション性能を求めるなら“モトクロス用ブーツ”か“エンデューロ用ブーツ”になるが、ツーリング用途に使うなら歩きやすさも重要になる。プロテクション性能と歩きやすさのバランスこそがオフロード用ブーツ選びのキモだ。写真はアルパインスターズのエンデューロブーツ・『テック7エンデューロ』。

 

色々あって迷ってしまうが、これからオフロードバイクを始める場合、コース走行をするつもりがあるなら、“モトクロス用ブーツ”か“エンデューロ用ブーツ”のどちらかが必要になる。ただ多くのライダーが目指すのは、まず林道ツーリングだろう。ならば、まずはハイカットの“アドベンチャーブーツ”から始めるのが吉。“アドベンチャーブーツ”は、透湿防水構造で濡れにくく、保温性も高いためツーリング向き。しかもバックルがモトクロス用ブーツより少なくて脱ぎ履きも楽で、足着き性もそれほど悪くならないモデルが多い。

 

『コロザル アドベンチャー ブーツ』は、透湿防水素材のドライスターを採用し、全天候に対応する。

『コロザル アドベンチャー ブーツ』は、透湿防水素材のドライスターを採用し全天候に対応。

 

まずはこの“アドベンチャーブーツ”で色々走ってみて、より高いプロテクション性能を求めるような走り方をするなら“モトクロス用ブーツ”や“エンデューロ用ブーツ”を選ぶことになるし、アタックと呼ばれる野山に分けいるようなオフロード遊びをするなら、足首が動かしやすくより足着き性のいい“トライアル用ブーツ”を選ぶのもいいだろう。

 

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