クルマもバイクも…はハンパもの?

僕が人からよく尋ねられる、そして聞かれるたび答えに困る質問がある。「クルマとバイク、ほんとはどっちが好きなんですか?」というやつだ。

そう聞かれるのは、僕のプロフィールのせいもある。1990年代半ば、編集者の仕事は自動車雑誌(ニューモデルマガジンX編集部、その後NAVI編集部)がスタートだった。そして2001年、バイク雑誌の『MOTO NAVI』を創刊し、自動車雑誌編集者との“二足のわらじ”状態に。そして2012年には『NAVI CARS』を創刊し、以来2輪&4輪誌の編集長を務めていたからだ(さらに言えば自転車雑誌『BICYCLE NAVI』の編集長も兼任していた)。

MOTO NAVIとNAVI CARS

僕が創刊し編集長をつとめた雑誌『MOTO NAVI』と『NAVI CARS』

 

じつは専門誌の世界というのは、ジャンルごとにわりとハッキリ隔てられていて、たとえば2輪誌と4輪誌では、編集者もライターもカメラマンもそれぞれ携わっている人が異なる。なのでバイクとクルマ、どちらの編集長もやる人というのはまず居ないし、ましてや自転車まで手を広げる“三股編集長”?となると、おそらく世界でも僕ひとりなのではないか。

まあこれだとジマンのように聞こえるかもしれないが、じつはそれがコンプレックスにもなっていた。専門誌の編集者、編集長というのは“その道のプロ”であることが期待され、求められるからだ。だが僕は何ごとにも広く浅く興味を持つタイプで、どうにもひとつのことをマニアックに探求することができない。つまり専門誌の編集者としては“ハンパ”なのである。それゆえ前述のような質問を受けることになる。「クルマとバイク、ほんとはどっちが好きなんですか?」と……。

愛車のアルファロメオとベスパ

愛車たち。アルファロメオ・スパイダーとベスパPX200

“移動”の選択肢が多いほど楽しい!

この質問を投げかけられると、僕は困る。どっち?と言われてもどっちも好きだし、いやもしかしたら(マニアックな愛好家に比べれば)どっちもたいして好きじゃないのかもしれない……と悩んでしまうこともある。

だが僕はあるときから、この浮気性……、いや三股……、いやモノゴトに幅広く興味を持つ自分の性分を正当化するロジックを見つけた。それは「クルマ、バイク、自転車、いろんな乗りものを使い分けるのが楽しい!」ということだ。

ランドローバーディフェンダー試乗会にて

現在では自動車ジャーナリストとしても活動している

 

じっさい我々は人生の多くの時間を“移動”に費やしている。通勤、通学、ドライブ、旅行。人は移動せずに生きていくことはできない。であれば人生で多くの時間を割く“移動”を単なる作業にするのではなく、ポジティブに愉しむことができたなら、人生そのものが愉しく、豊かになるに違いない。

では移動をポジティブに愉しむためにはどうすればいいのか? それは「選択肢の多さ」に依るのではないかと僕は考える。「今日は天気がいいから自転車で行こう」、「荷物が多いしクルマのほうが便利だな」というふうに。

いや、歩いても、走ってもいい。要はA地点からB地点に移動するのに、そのさいのモビリティの選択肢が多いほど“移動”を愉しむことができ、人生は充実するだろう。なんていうと大げさに聞こえるかもしれないが、少なくとも人生のうち40年近く、バイクにもクルマにも自転車にも関わってきた僕に言わせれば、それは間違いなく事実だ。

バイク好きとクルマ好きは背反するものではなく、むしろ両車に乗るからこそそれぞれのよさを知ることができる。それが専門誌の編集者としては“ハンパ”な僕が見つけ出した答えなのだ。

カワサキW3

愛車の1台。カワサキW3

 

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