それまでとはまるでレベルの異なる厳しい厳しい厳しい達成目標値が提示された2000年代後半の排出ガス規制。燃料供給にキャブレターを使用していた並列4気筒ほかのスポーティモデルは軒並み絶滅へと追いやられていきます。「ZRX/ZRX-Ⅱ」、「ZRX1200R」も例外ではなく、ともに2008年型で生産終了……。駄菓子菓子、カワサキはやってくれました!

●2009年型カワサキ「ZRX1200 ᛞ」カタログより。日本で走って一番楽しい、日本のファンのために採算度外視?で作り上げられた新生フラッグシップネイキッド。実際、走りは実に爽快でありました!
カワサキZRXという好漢【その10】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
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格安・軽量・ハイパワーなモデルが容赦なく刈られていった……!?
いやぁ本当にこのコラムでも何度となく書かせてもらっていますが、20世紀末から吹き荒れた騒音&排ガスほか環境諸規制の締め付けは、そのころバイク雑誌編集者だった筆者にとっていまだ虎馬……いやトラウマとして深く脳裏に刻まれております。

●最新こそ最速! 4メーカーが鎬を削り独自のメカニズムで軽量&ハイパワー化を推し進めていった夢の1980年代から一転、1990〜2000年代はあらゆる車両からヤンチャな側面が強制的に矯正されていった印象です
最初の大波は1999年の平成11年排出ガス規制……。
こちらで理不尽(?)に馬力を抑制されながらも頑張っていたホンダ「NSR250R」を筆頭とする超スポーティなレーサーレプリカ群は一掃されてしまいました。

●1996年型ホンダ「NSR250R SP」。細いコカ・コーラ缶1本分の排気量から45馬力/3.7㎏mを絞り出していた珠玉の2ストVツインは1992年に40馬力以下へと自主規制(400㏄は59馬力→53馬力以下へ)。世紀末には排ガス規制もかけられて生産を終了することに……(ライバルも同様)。愚直に速さを追い求めたレーサーレプリカというジャンルは消え去っていったのですヨ
入れ替わるように勃興していたネイキッドブームで各メーカーがホッとしていたところへ2006年、平成18年排出ガス規制というセカンドインパクトが襲いかかります。

●2008年型カワサキ「ZRX」。1994年に初代が登場。丸目一眼の「ZRX-Ⅱ」ともども2001年モデルからKLEENシステムを導入して21世紀を走ってきた人気車種でしたがキャブレターのままでは新しい(厳しい)ハードルを乗り越えることはできないと判断され、この年式が最終に……(ライムグリーンは2パターン存在)。いまだ指名買いも多く中古車市場では大人気となっておりますね〜。興味があれば是非お近くのレッドバロン各店へ〜
売れスジな人気車種が大量絶滅してラインアップは壊滅状態へ
平成11年版と比較してみると窒素酸化物((NOx)は50%、炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)に至っては実に75~85%も削減せぇ!という、世が世なら一揆すら起こりかねないほどの(?)厳しい規制目標値が定められてしまい、原付スクーターなどで細々と生き残っていた2ストエンジンは完全に沈黙。

●規制を受けて2009年にフルモデルチェンジ(4スト化)されるまで、2ストスポーツスクーターの雄として意地を張り続けたヤマハ「JOG ZR(2001〜2008)」! あのキビキビとした走行性能を体験できなくなる日が来るなんて信じられなかったあの頃……
4ストエンジンもキャブレター仕様はほぼほぼ消滅の憂き目に……(ファイナルエディションと銘打ってビジネスチャンスにしていた例もチラホラありましたが(^^ゞ)。

●ネオレトロネイキッドの大ブームを巻き起こしたカワサキのゼファーシリーズは生産終了を記念するファイナルエディションの乱れ打ち!? 2007年1月19日に発売された「ゼファー1100 追加カラー」は往年のZ1を彷彿とさせるキャンディダイヤモンドブラウン×キャンディダイヤモンドオレンジのカラーリングに専用シート&エンブレムなどなど細部まで小技の効いた仕様で登場。当時価格は税込み92万3000円。売れました〜

●上の1100同様、2007年1月19日に発売された「ゼファー750 追加カラー」(ともにモデルイヤーとしては2006年型となるそうで)。塗装法法には贅が尽くされ、各部エンブレムの大きさも細かくバランスを取り直したというこだわりっぷり。当時価格は税込み73万円。売れました〜

●2008年モデル扱いながら2009年4月10日、当時価格税込み65万5000円で発売された「ゼファーχ(カイ) ファイナルエディション」。上質な塗装はもちろんシートレザーの表皮やエンブレムを変更するなどファン感涙の仕上がりで当然のごとく売れに売れました〜

●2006年9月22日にリリースされたスズキ「バンディット1200S ABS 油冷ファイナルエディション」(税込み94万5000円。同日に発売されたノンカウル仕様は91万3500円)。翌2007年には排ガス規制に対応するため水冷化+FI化された「バンディット1250 ABS/バンディット1250S ABS」が登場しました。なお、フルカウル仕様の「バンディット1250F ABS」は2010年4月にデビュー!
水冷並列4気筒エンジンを搭載するスポーティネイキッドとして幅広い支持を獲得し、10年以上頑張ってきたカワサキの「ZRX/ZRX-Ⅱ」と「ZRX1200R」も2008年モデルを最後に仲良く絶版車の仲間入りと相成りました。

●写真は「ZRX1200R」の最終モデルとなった2008年3月リリースの追加カラー(キャンディライムグリーン)。400㏄の「ZRX」は1994年、そのビッグバイク版となる「ZRX1100」シリーズは1996年12月に登場。角Z、そしてローソンレプリカを愛してやまないファンを続々と取り込み続けて十余年……バイクとして完成度が高いからこその幅広い人気っぷりに脱帽ッ(^^ゞ

●各種規制のおかげで2ストが消え、フルカウルが消え、オモシロ原付が消え、ネイキッドとデュアルパーパスは縮小し、スクーターとトラッカーとクルーザーばかりウケていた2000年代。バイク雑誌編集者として「国産車アルバム号」を担当していた筆者は各社のラインアップが減り続けるなか、ページをどう割り振るかに四苦八苦。不夜城だった編集部で何回徹夜したっけなぁ……
そのままお蔵入りする可能性も非常に高かった「ZRX」ブランド
正直、川崎重工業の社内でも「ZRXをこれ以上、続ける必要はない」という声が少なくなかったそうです。
レトロチックなネイキッドが受けるのは日本のみと言っても過言ではなく、欧州や北米などではストリートファイター……噛みつくように攻撃的なスタイリングの車両が主流になっていました。

●2003年にカワサキ自ら「スーパーネイキッド」と銘打って海外市場へ投入し、大いなる衝撃とともに受け入れられていった「Z1000」。2007年にはフルモデルチェンジされ(写真)、スタイリングはさらに洗練&先鋭化。ストリートファイターという他メーカーを巻き込んだジャンルを形成しながら成長を遂げて、今やカワサキのSTREETラインアップにおいて「Ninja」ラインとタメを張る「Z」ラインを構築していることは、皆さんご存じのとおり〜
古き良き角Zをモチーフとした「ZRX」シリーズを厳しい環境諸規制へ対応させたとして、掛かったコストに見合ったセールスが見込まれるのか……?
非常に疑わしい状況になっていたのは厳然たる事実でしたがケンケンガクガクな議論の結果、1200のみに選択と集中を行い、FI(フューエルインジェクション)化するとともにエンジン内部へもキメ細かく、場所によっては大胆な改良を実施することが決定。

●カムプロファイル、バルブタイミング、エキゾーストパイプ、ラジエターなどに改良が加えられた1164㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは、楕円サブスロットルバルブや8ホール高微粒化インジェクターを備えた最新のFIシステムを採用。そしてトランスミッションは「ZRX1200R」の5速から6速に変更されております!
車体周りも「R」からのみならず他車から流用できるものも活用しながらまとめあげ(コスト抑制も考慮)、カワサキの誇る走行実験班がベストなサスペンションセッティングを模索……。

●ホイールはダイレクトな操作感の向上を狙って、より剛性の高い新形状に変更。細身のスポークが足まわりを引き締めて外観のカッコよさ向上にも貢献しています。「ZRX」シリーズのアイデンティティでもあるトラス構造スイングアームも使用部材の形状を見直しつつ最適化(リヤショックのマウント位置を20㎜後退[レイダウン]させて動きを向上など)。なお、「ZRX1200R」で評価の高かったダブルクレードルフレームは、基本構成を変えることなく継承されたとか
日本で乗ることが一番楽しい国内専用モデルとして2009年2月1日、「ZRX1200 ᛞ(○○○ ※まだ引っ張ります)」が奇跡のリリースを果たしました。

●2009年型カワサキ「ZRX1200 ᛞ (○○○)」。2007年7月に撤廃された馬力の自主規制撤廃を受けて最高出力110馬力/8000rpm、最大トルク10.9kgm/6000rpmのパフォーマンスを誇れるようになったエンジンは、FIや大型ハニカム触媒などの採用により排出ガス規制に適合しつつ好燃費まで実現! タイトル文字の背景となっているメタリックインペリアルレッドとこのキャンディミスティックブルーは当時価格税込み112万円でした
このモデル名……しっかり説明されて初めて意味が分かルーンです!?
事前に送られてきた資料を一読し「なんじゃこりゃぁ~!?」とジーパン刑事(by太陽にほえろ!)よろしく叫んでしまったのは、その車名。

●2009年型カワサキ「ZRX1200 ᛞ(ダエグ)」カタログ表紙……バイクの写真は皆無! 予備知識なしにポンと渡されてしまうと平成仮面ライダーの新番組企画書かいな?と勘違いしかねない(ワタシだけ?)雰囲気。DAEG=ダエグという言葉も耳に新しすぎて、ぶっちゃけ慣れるまでしばらくかかりました(^^ゞ
ᛞってナニ? 文字? 図版? まるで読めない、読めるワケがない。
ですので公式が配布したプレスリリースから解説をそのまま転載させていただきますと、 ~車体にも刻まれている「 ᛞ(DAEG)」とは古代ルーン文字のひとつ。英単語「DAY」の語源となったもので、「着実な成長」、「進歩」、「終わりと始まり」、「新しい展開」などを意味する文字として占術や護符に用いられています。「ZRX」というブランドを「熟成」させながら、新たなステージへ「飛躍」を遂げるという本モデルのコンセプトを、この「 ᛞ」という文字で表現しています。~ とのこと。
ちなみに古代ルーン文字とは数ある古代ヨーロッパ言語の中で、北ヨーロッパに住んでいたインド・ヨーロッパ語族・ゲルマン語派の人々が使っていたものなんだそうで(^^ゞ。

●こちらも2009年型カワサキ「ZRX1200 ᛞ(ダエグ)」。 パールメテオグレー×メタリックスパークブラックのツートーンカラーは当時価格税込み114万円。つまり赤、青、灰×黒の全3色でライムグリーン系は用意されず……「ZRX1100」発表時の強気な販売戦略再び!? なお、翌2010年には緑色が登場しました(^^ゞ
とにもかくにも日本のファンに向けてカワサキが総力を挙げ作り上げたフラッグシップネイキッドが、着実な成長と進歩を遂げて再登場してきたワケですから暗いニュースばかりだった二輪ギョーカイも諸手を挙げて大喝采!

●米国サブプライム住宅ローンのバブルがはじけたことをキッカケに2008年9月発生したリーマン・ショック……。そこから金融危機が連鎖的に世界を覆い尽くし、日本を含む先進国で二輪販売が激減するという状況が生まれました
筆者も筑波サーキットで開催されたジャーナリスト向け発表試乗会や、兵庫県明石市にある川崎重工業・明石工場内で行なった開発者インタビューに同席することができたので思い入れもひとしおです。
カワサキの屋台骨を支えた名エンジンへのリスペクトが細部に!?
関係者と雑談をしているとき、「ダエグのビキニカウルでヘッドライトの下側、左右に突き出ている牙(?)は初代ニンジャこと『GPZ900R』をリスペクトした形状なんですよ」と聞いたときは震えましたね。

●2012年型「ZRX1200 ᛞ(ダエグ)」のメタリックスパークブラック×パールメテオグレー。1100や1200R以上にしゃくれているビキニカウルの下端形状こそダエグのこだわりポイントだったのですね〜。公式な記録としては残っていないかもしれませんが、私は確かに聞きました。なお、スクリーンのビス位置は「ZRX1200R」と全く同じなので、アフターパーツのスクリーンがそのまま流用できる……という気配りも胸熱なポイント!
考えてみればこのエンジン、紆余曲折はあったもののルーツは確かに初代ニンジャに端を発するサイドカムチェーン式水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブのパワーユニット……。

●1984年のデビュー当時としては異例だった左サイドカムチェーンを採用し、ハイパワーを徹底追求した「GPZ900R」の水冷パワーユニット。その卓越した設計思想を持つ心臓は以降「GPZ1000RX」、「ZX-10」、「ZZR1100」、「GPZ1100」、「ZRX1100」、「ZZR1200」、「ZRX1200R」へ多岐にわたる改良を施されながら受け継がれ「ZRX1200 ᛞ(ダエグ)」で大団円を迎えることに……
「その集大成でもある作品なのだ〜(エグ)!」という熱い思いもあったのでしょう。

●2010年型カワサキ「ZRX1200 ᛞ(ダエグ)」のカタログより表紙のカット。平成仮面ライダーの企画書(←しつこい)から一気にライダーのココロを惹きつける清く正しいバイク紹介用小冊子っぽくなりました、というか中身を見ても「 ᛞ 」の文字どころか解説すらないのですけれど……(^^ゞ。やっぱりルーン文字はジャパニーズ一般ピーポーにゃ敷居が高すぎた!?
さて次回(最終回)は、2010年代バイクマーケットの状況……並びに2016年型で終焉を迎えた「ZRX1200ᛞ(ダエグ)」が残したものについて語りおろしてまいります!
あ、というわけで「GPZ900R」から「ZRX1200 ᛞ(ダエグ)」まで連綿と続いた左サイドカムチェーン大排気量車は、どれもカワサキの本気が詰まったフラッグシップモデル! パーツの在庫やアフターサービスに定評のあるレッドバロンの『5つ星品質』中古車なら安心して走り出せますよ。本格スタートしたレッドバロンのWEB在庫検索サービスや各店舗での問い合わせを通じてアナタだけの1台を探しましょう!
カワサキZRXという好漢【その10】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
