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たくさんのモデルを乗り比べられるメディア向け試乗会に参加
毎年春に開催される、輸入二輪メーカーが合同で行うメディア向けの試乗会、「JAIA(ジャイア)二輪試乗会」。JAIAとは「Japan Automobile Importers Association」、つまり「日本自動車輸入組合」のこと。神奈川県・大磯で開催されたこの試乗会に参加してきました。前編はこちら(輸入二輪車試乗会で気になるモデルをチェック!前編)をご覧ください。
大磯プリンスホテルの駐車場に並ぶ、各輸入メーカーのテントで試乗車を借りてスタート。駐車場内にはパイロンを立てて作られた特設試乗コースが設置され、ホテル敷地外に出ることもできます。その場合、メインの試乗コースになるのは海沿いの自動車道路である「西湘バイパス」。試乗時間は1台あたり45分なので、あくまで“チョイ乗り”程度ということにはなりますが、とはいえ短時間でいろいろなバイクに乗り比べられるので、車両の特徴が端的によくわかる、というよさもあります。
4台目/量産車世界最大のモンスター・ロケット!
後半戦1台目は大物! トライアンフの「ロケット3 R ブラック」。なんと排気量2457ccの3気筒エンジンを積んでいます。つまり1気筒あたり800cc超!“ロケット3発”の名前はダテじゃない。ロケット3の初代モデルは2294ccで量産バイクとしては世界最大排気量だったのですが、新型はさらにそれを超えてきました。最高出力は167PS、最大トルクは221Nmとパワーも弩級。なのに車重は40kg軽量化されて318kg(重いけど……)。
このスペックを見て、誰もが思うのが「めちゃ暴れん坊なんじゃないの?」ということじゃないだろうか。いや、もちろん僕もビビってました。しかしいざ跨って走り出すと、意外や意外。とてもよく躾けられていて、ベリー・ジェントル。クラッチも決して重くないし、318kgの重量ボディも気にさせないハンドリングのよさ。エンジンはアイドリング回転から分厚いトルクを発揮するので、ギアが何速だろうが、アクセルを開ければスルスルすると加速していく。
もちろんアクセルをガバっと開けて強大なパワー&トルクを解き放てば、恐ろしい加速をするんだろうけど(想像)、それを試すことはしない……というよりできませんでした。いや、日本の公道ではバイクを全開にできるところはないだろう。でも大人しく走っているぶんには、前述したようにとてもスムーズで乗りやすい。とはいえ2457cc3気筒という世界で唯一無二のパワーユニットから湧き出る底知れない“力感”はしっかり伝わってきて、それがこのロケット3R ブラックを操る醍醐味といえます。
リアタイヤの太さは240! 221Nmのトルクを受け止めるためのタイヤサイズなのだけど、とにかくすべてが規格外のマッチョ度で、とりあえず乗らせてもらえただけで「ありがとうございます」という1台でした。ちなみにマフラーまですべてマットブラックで統一されたロケット3 R ブラックの価格は288万円。
5台目/スーパーバイク直系!ミドルSSの走りは?
続いてはイタリアのブランニューマシン、アプリリア・トゥオーノ660。イタリア本国ではスクーターからビッグバイクまでフルラインナップするアプリリア。とくにレース界ではWGPの時代から現在のMotoGPに至るまで参戦し続け、そこで培ったテクノロジーが市販車へとしっかりフィードバックされている。
このトゥオーノ660は、アプリリアのフラッグシップであるRSV4/トゥオーノV4のエンジンを半分にして、ストロークを伸ばした659cc並列2気筒エンジンを搭載している。もともとスーパーバイク由来のエンジンなので、その高性能は推して知るべし。パワーは93PSと排気量から考えるとかなりパワフルで、しかも車体がコンパクトかつ車重が183kgとかなり軽い。
820mmシート高は足つきがいいと言い難いが、車体のスリムさと軽さからあまり気にならなかった。走り出すとエンジンはパツンパツンと端切れのいいパルス感があり、気持ちがいい。また電子制御デバイスの充実ぶりもトゥオーノ660の(というよりアプリリアのスポーツバイクの)アドバンテージ。自慢のAPRC(アプリリア・パフォーマンス・ライド・コントロール)は5種類のライディングモード、ABS、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、エンジンブレーキコントロールなど最上級モデル「RSV4」とほぼ同等のデバイスを備えている。
派手なグラフィックやクセの強いフロントマスクなど、いわゆる“テイスティ”な輸入車とは正反対の“ヤンチャ系”だが、ここまで走りと機能に振り切れているという点では、やはりイタ車ならではというか、国産車とは一線を画していて面白い。「人とかぶらない」スポーツバイクとしては、価値ある存在と思えた。
6台目/運転も走りも“ハイブリッド”な3輪モーターサイクル
さあ、最後はJAIA試乗会だからこそ乗れるバイク。いや……バイクというかなんというか、3輪モーターサイクル「Can-Am(カンナム)」の「ライカー」。カンナムはスノーモービルや水上バイク、ATVといったレクリエーションビークルを手がけているカナダの「BRP」が展開するブランドだ。
僕はひさしぶりに試乗したのだけど、あらためて感じたのは他では決して得られない、面白い感覚の乗りものだということ。アクセルは右手のグリップ操作で行うが、ブレーキはフットペダルのみ。ハンドルにはクラッチやブレーキレバーはない。車体はバンクしないから、コーナーは体重移動ではなくハンドルを切って曲がる。まさに二輪と四輪をハイブリッドした乗りものなのだ。
ちなみに免許に関していうと、カンナムは普通自動車免許で運転が可能。しかもトランスミッションがCVTなのでAT限定免許でもオッケー。以前雑誌の取材で、バイク未経験のドライバーが乗ったところ、あっという間に慣れてスイスイ運転できるようになっていました。そのときに思ったのは、「これは二輪未経験の人に、バイクの楽しさ、気持ちよさを感じてもらうのにとてもいい乗りものなんじゃないか?」ということ。
いっぽうですでにバイクに乗っている人が、この3輪モーターサイクルにわざわざ乗るかな? というのはちょっとクエッションマークだ。もちろん3輪ならではの楽しさはあるが、2輪の身軽さに慣れてしまっていると、この大きさや取り回しは“不自由”に感じるかもしれない。
ライカーはカンナムのラインナップでは最もシンプルかつスポーティーなキャラクターが与えられている。試乗した「ライカーSPORT」はロータックス製の900cc並列3気筒エンジンを搭載、最高出力は82PSを発揮する。この数値がどうこうというよりも、体感としてははっきりと「速い!」と感じる。とくにコーナリングで発生する横Gは二輪の走りでは感じられないものであり、両腕でハンドルをしっかり抑えつける必要があるので、腕力も必要だし慣れないと怖さを感じる。
しかし慣れてくるとそれが徐々に「面白い!」と思えるようになってくる。ブレーキングで前輪に荷重し、ハンドルできっかけをつくって前輪を軸にぐるりんっと回るような感覚は、二輪のそれとも四輪のそれとも違う。前述したようにまさに“ハイブリッド”感覚なのだ。
スクーターから大排気量車、3輪モーターサイクルまで、排気量もスタイルもさまざまな輸入車を“味見”程度ではあるが、まとめて試せるJAIA試乗会、その開催意図どおり「輸入車の魅力を体感し、それを伝える」という意味ではとても有意義なイベントだと思う。願わくばこのリポートを読んで、「ちょっと乗ってみたいな……」と興味を持っていただければ嬉しいのだけど。
前編はこちら(輸入二輪車試乗会で気になるモデルをチェック!前編)から。