最新輸入バイクをチェックできるJAIA試乗会

毎年春に開催される業界恒例の行事「JAIA(ジャイア)二輪試乗会」。JAIAとは「Japan Automobile Importers Association」、すなわち「日本自動車輸入組合」のこと。つまり輸入バイクメーカーが合同で行う、メディア向けの試乗会です。我々モータージャーナリスト、ライターは、取材のため日々さまざまなバイクに試乗をしていますが、このJAIA試乗会では1日でいろいろなメーカーのバイクを乗り比べすることができるので、また違った“気づき”があったりします。というわけで神奈川県・大磯で開催された試乗会に参加してきました。

JAIA試乗会

会場はこんな感じ。大磯プリンスホテルの大きな駐車場に各輸入メーカーのテントが並び、ここで試乗車を借りてスタート。駐車場内にはパイロンを立てて作られた特設試乗コースが設置されますが、ホテル敷地外に出ることもできます。その場合、メインの試乗コースになるのは海沿いの自動車道路である「西湘バイパス」。試乗時間は1台/45分なので、撮影時間なども考えると、走れる時間は実質30分あるかないか、ぐらい。なのでじっくりとした試乗ではなく、“チョイ乗り”した感想程度、ということにはなってしまいますが。とはいえたとえ短時間でも実際に「乗る」と乗らないでは大違い、というのはイベントや販売店などで試乗をしたことのある人ならわかると思います。

1台目/ベスパ製ビッグスクーターの魅力は?

ベスパ

まず最初に試乗したのはこれ! ベスパのGTSスーパーテック300。ベスパというと“小さい”イメージがあると思いますが、これは水冷278cc単気筒SOHCエンジンを積んだ、いわゆるビッグスクーター。ボディはベスパ伝統のスチールモノコックで、ベスパとしては大柄ですが、国産ビッグスクーターに比べたらかなりコンパクト。

ベスパGTS300

こうして真横から見ると、まさに“ベスパ”ですね。椅子に座るようなアップライトなポジションは運転しやすく、走らせるとハンドリングはかなりキビキビしていてスポーティー。またこのGTSスーパーテック300はエンジンがめちゃパワフルでスムーズ。スタートからのダッシュ力、高速域でのクルージング性能ともに抜群です。またABSやトラクションコントロールも装備しているので、安心感、安定感の高さも美点です。

ベスパGTS300

シートが大きくゆったりしているので、ロングツーリングなどにも向いています。タンデムシートの座り心地もよく、試乗車はオプションのトップケースが装着されていたので、これがパッセンジャーの背もたれの役割も果たしてくれ、まさに「2人でのツーリング」にはぴったりの仕様。

もしベスパGTSスーパーテック300を所有するとしたら、このトップケースはマストアイテムかもしれません。なぜならベスパの“泣き所”と言えるのが(国産ビッグスクーターと比べた場合の)、シート下収納スペースの小ささ、だから。しかしトップケースを装着すればかなり補えます。

ベスパGTS300

ご覧のようにフルフェイスヘルメットがすっぽりと収まるスペースがあるので、シート下スペースも合わせれば日常使いで不足を感じることはほぼないはず。このベスパGTSスーパーテック300、個人的にはマジで「ほしい!」と思うほど気に入ったのですが、ひとつだけ気になることがあるとすれば278ccという排気量ゆえ“車検”があること。なのでもし所有するとしたら、同じボディに155ccエンジンを積む「ベスパGTSスーパー150」もアリかなぁ……などと妄想しました。

2台目/ついに水冷エンジンになった!スポーツスター

ハーレー・スポーツスター

続いて試乗したのは、個人的にヒジョーに気になっていたハーレー・ダビッドソンの新型スポーツスター。ハーレーの代名詞であった空冷Vツインエンジンから、水冷エンジンへと大きく変化した新世代モデル、昨年の登場以来ずっと「乗ってみたい〜」と思っていたのだけど、ようやく乗れました。

水冷スポスタとして最初に登場したこの「スポーツスターS」は、エンジンだけじゃなく見た目も空冷スポスタとは大きく変わっています。

ハーレー・スポーツスター

オーバル型ヘッドランプや片側2本出しのアップマフラー、倒立タイプのフロントフォークにファットタイヤの採用など、軽量、コンパクトなスポーツモデルというよりマッチョなハイパワークルーザーというべきキャラクター。

走らせてみると、空冷Vツインの特徴だった不規則な爆発感やそれゆえの強いビート感、つまり“荒々しい”フィーリングは影を潜め、その代わり低回転域からスムーズに湧き出すような太いトルク、高回転域まで淀みなく回っていくパワー感は想像以上。同じ「スポーツスター」を名乗っていても、空冷モデルとはまったくの“別モノ”だと感じました。

ハーレー・スポーツスター

フロントタイヤは17インチ、幅160mmのファットタイヤを履く。フロントフォークは倒立タイプ。

 

ハーレー・スポーツスター

エンジンは水冷1252ccVツイン「レボリューションMAX1250T」。

 

ハーレー・スポーツスター

短くチョップされたシングルタイプのシート。マフラーは片側2本出しのアップタイプ。

 

ハーレー・スポーツスター

メーターはシンプルな単眼タイプだけど、中身は液晶ディスプレイのデジタルタイプになっていて、これまた空冷スポスタとは隔世の感あり。3つのエンジンモードを選べたり、クルーズコントロールを備えていたりと、電子制御化が進んでいます。従来のスポスタ乗り、スポスタ好きからすると「変わっちまったなぁ〜」という寂しさもあるけれど、エンジンの水冷化というのは時代を考えれば避けては通れない道。このJAIA試乗会の直後、空冷スポスタのスタイルを踏襲した新モデル「ナイトスター」も登場したので、クラシックな趣を求める向きにはそっちということで、この「スポーツスターS」はカスタムモデル的な位置付けなのだと思います。

3台目/イタリアン・クラシック、モト・グッツィV7はどう変わった?

さて、この日は合計7台に試乗したのだけど、このまま書き続けるとかなりの長編になりそうなので、とりあえず<前編>はあと1台で〆ようと思います。ちょっとシブめのモデルですが、イタリアの老舗ブランド「モト・グッツィ」のV7スペシャル。

モト・グッツィ

「V7」という車名はもともと1967年に誕生した、グッツィ初のVツインエンジン搭載モデルにルーツがあるのだけど、現行V7はそのリバイバルモデルとして2008年に登場したネイキッドスポーツ。グッツィ伝統の縦置きVツインというエンジン型式を踏襲し、見た目にもオーソドックスかつクラシックなモデルです。

そのヴィンテージなスタイルが今となっては貴重な存在となっていて、じつは僕も大好き。10年近く前に「V7レーサー」というモデルを所有していたこともあります。しかしこの現行V7もデビューしてから10数年が経ち、基本的なスタイルはキープしながらも大小の変更を受けてきました。

モト・グッツィ

大きなところでは750ccから850ccへと排気量アップしたエンジン。欧州の排ガス規制「Euro5」に適合させながら、パワーは750ccエンジン比で25%増加した65PSに(とはいえそれほどのパワーではないけれど)。試乗した印象でいえば、その数値以上にパワフルかつ元気になった、という感じがしました。

とはいえとても扱いやすいエンジン特性で、車体もコンパクトかつ軽いので、たとえば「初めて輸入車を選ぶ」なんていう人にはぴったりだと思います。または体格、体力的な面から女性ライダーにもお薦めです。

モト・グッツィ

モト・グッツィ

この「V7スペシャル」はV7シリーズの中ではよりクラシックかつエレガントなモデルと位置づけられていて、クロームメッキのグラブバーやスポークホイールなどが特徴。さらに試乗車はオプションのバイザーやキャリアを備えたツーリング仕様になっていました。僕としてはもう少し“スポーツクラシック”な感じが好みなので、マフラーやサスペンションなどがブラックで塗られている「V7ストーン」のほうがいいかな、とも思いました。

モト・グッツィV7

というわけで、気になる輸入二輪車にイッキ乗りできたJAIA試乗会、ここで書ききれなかったモデルは後編でレポートしたいと思います!

 

 

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