本当に空冷エンジンは消えゆくのか?
年式・仕様違いのSR400を2台とXR BAJAを所有する僕は、お察しのとおり、スタンダードバイクや空冷エンジンが大好き。

YAMAHA SR400 Final Edition Limited。43年の歴史を誇るSRも、昨年とうとう生産終了になってしまった。
しかしここ数年、SR400やCB1100といった空冷エンジン搭載モデルはそのラインナップをどんどん減らしている。代わって魅力的なモデルが新たに発売されてはいるのだが、それでもなんだか不安な毎日なわけである……スタンダードバイク好き・空冷エンジン好きとしては。

HONDA CB1100 EX Final Edition
ところが、今年3月に開催された東京モーターサイクルショーに行ってみると、とりあえずそんな僕の懸念は払拭された。
国内メーカーに限ればスタンダードバイクは減少しているが、輸入ブランドが増していて、それらのなかには空冷エンジンを搭載したスタンダードバイクが数多く存在しているのだ。
たとえば愛知県のパーツメーカー・パーツ卸大手のプロトが新たに正規代理店として輸入を開始した『ベネリ』。

イタリアのメーカー・BENELLI インペリアーレ400。
インペリアーレ400はトラディショナルなシルエットに空冷単気筒エンジンを搭載。排気量は374ccで、気負わなくていい車体サイズも好印象! 車体価格も今どきのニューモデルとしてはリーズナブルといえるだろう。

GPX LEGEND250
タイの新興メーカー・GPXも250ccや125ccクラスの空冷単気筒や並列2気筒エンジンを搭載したモデルを多数出展していた。
そう、SR400生産終了のニュースが衝撃的すぎたのだが、じつは400cc以下であればまだまだ空冷モデルはたくさんある。

400ccクラスでは国内メーカー唯一の空冷単気筒となってしまったGB350。発売から1年以上が経つが、今なお大人気。
ちなみにこの写真はちょうど1年前……僕が新型コロナから復活してすぐのころ。当時、7kgほど痩せてしまい、この写真では顔のラインが少しだけスッキリしているのだが、今はしっかり元の体重に戻っています(笑)。
ホンダ GB350だって大人気だ!

ROYAL ENFIELD CLASSIC350。インドではホンダ GB350最大のライバル!? クラシカルなスタイルで、日本でも人気急上昇中!

MUTT MOTORCYCLES MONGREL250。イギリスのカスタムビルダーがプロデュースした新進メーカー。日本でも若いライダーを中心に支持を広げている。
さらに東京モーターサイクルショーへの出展はなかったが、ロイヤルエンフィールド(インド)やマットモーターサイクルズ(イギリス)は人気が高く、街中でも見かける機会が多い。

KAWASAKI W800
大型モデルもCB1100のような空冷並列4気筒は姿を消してしまったが、先のロイヤルエンフィールドには空冷並列2気筒のContinental GT650とINT650というスタンダードモデルがラインナップされているし、カワサキ W800だって健在だ。
あらあら、よくよく調べてみたら、空冷エンジンは絶滅寸前どころか、まだまだ元気! たくさんのモデルが発売されているのだ。
しかも小排気量にまで目線を落とせば、ホンダからダックス125なんていう大注目モデルまで控えているではないか!?

HONDA DAX125
あぁ、僕の心配は杞憂に終わるのか? ……と思いたいところだが、やっぱりコトはそんなに甘くないわけで。
年を追うごとに厳しくなっていく排ガス規制や騒音規制に対応していくには、空冷エンジンの限界が近づいていることはたしかだろう。
水冷エンジンだってテイスティ

TRIUMPH BONNEVILLE T120。トライアンフのネオクラシックは水冷エンジンながらトラディショナルな雰囲気を崩さず、乗り味もテイスティ。高い支持を集めている。
しかし、そもそも空冷エンジンでなければいけないのだろうか?という疑問に対する回答が、トライアンフのネオクラシックモデルだ。
ボンネビルをはじめとする同社のネオクオラシックシリーズは、現在すべて水冷エンジンを搭載している。
しかし、深くフィンを切ったエンジンの造形は空冷を思わせるもので、ラジエターも雰囲気を損なわないように処理されている。
そして、乗り味は並列2気筒の味わい深さをみごとに再現しているのだ。

F.B Mondial HPS300。車名に「300」とあるが、排気量は249cc。スポーティとクラシカルを両立させた秀逸なデザインだ。
東京モーターサイクルショーでも水冷エンジンを搭載しつつ、往年のスタイリングを復活させたり、現代的な解釈を持たせたネオクラシックが多かったのが印象的。

FANTIC CABALLERO500
モンディアルやファンティック、ハスクバーナなどは、懐かしさと新しさをみごとに融合させたスタイリングで、スタンダードバイク好きのハート(というか僕のハート)をがっちりキャッチしていた。

HUSQVARNA MOTORCYCLES SVARTPILEN401。他にはない独自性の強いデザインが特徴。KTM譲りの車体とエンジンは走りも楽しい!
なんとなく「こういうバイクが10年後のスタンダードになっているのかも?」と思った。

YAMAHA XSR900。もともと「ヤマハの3気筒エンジンは楽しいなぁ」と思っていたところに、ついにフルモデルチェンジによってドンピシャデザインのXSRが爆誕! ここ数年単気筒ばかり乗っている僕の心をビンビンに刺激している(笑)。
そんな僕が気になっているのが、ヤマハの新型XSR900である。
MT-09をベースにしつつ、懐かしさやストリート感を併せ持つモデルで、決して懐古趣味に走らず、スポーティに走らせることもできるし、スタンダードモデルとしての味も持つという、とても“不思議”なモデルだ。
あらためて現行モデルのラインナップを見てみると、たしかにSR400やCB1100とは違うけれど、XSR900をはじめ、新スタンダードといえるような「ホッとするバイク」が今もたくさんあることに気づく。
電動だってテイスティモデルが出るんじゃないか?

CAN-AM ORIGIN。3輪メーカーのイメージが強いCAN-AMが発表した電気バイク。ORIGINはオフロード、とりわけラリーやアドベンチャー色の強いモデルで、XR BAJAオーナーの僕の心をこれまた刺激してくれる1台。電動でも、このデザインならおおいにアリだ!
そう、いくら技術が進んだとしても、バイクが趣味性の高い乗り物である以上、ライダー全員が必ずしも高性能や最高速度を求めるわけではない。重要なのは乗り味やスタイリング、加速感など、バイクのエッセンスが自分の感性に合っているかどうか。
今後、空冷エンジンがなくなったとしても、ライダーがそうしたテイストを求めるのなら、メーカーはきっとテイスティなモデルを出してくれるだろうし、エンジンモデルがなくなって電動モデルだけになったとしても、モーターの味気ない乗り味や電化製品のようなデザインのバイクだらけになる……なんてことはないように思う。
だって、そんなことになると、バイクへの興味をなくすライダーが続出するだろうし、そうなればメーカーだって困るのだ。周りを見渡すと、まだまだ電動バイクに否定的な意見を聞くけれど、そんなわけで僕はあまり悲観していない。
今後技術が進化していけば、きっとスタイルも乗り味もSR好きを満足させるような電動バイクが出てくるに違いない。僕はそう信じている。