Zやマッハより歴史ある系譜

「ニンジャ」や「Z」「マッハ」など、カワサキには人気のあるブランドが数多く存在しますが、「W」の血統はそれらより古くからあり、由緒のあるシリーズです。カワサキビッグバイクの礎をつくった立役者とも言えるでしょう。

2022年式カワサキW800。画像提供:カワサキモータース

▲2022年式カワサキW800。画像提供:カワサキモータース

 そのネーミングは1974年12月に生産を終了した『650RS W3』でいったん消滅してしまいますが、1999年の『W650』にて四半世紀ぶりに復活。その後、連綿と受け継がれ、現行ラインナップでは『W800』をスタンダードに『W800 STREET』『W800 CAFE』という布陣で、人気を博しています。

カワサキ650RS、通称W3(ダブルスリー)(1973年式)。

▲カワサキ650RS、通称W3(ダブルスリー)(1973年式)。このモデルを最後に四半世紀、カワサキWシリーズはラインナップから姿を消していたが、1999年に『W650』でよみがえる。

ベベルギヤ駆動・空冷SOHCバーチカルツインエンジンを積む『W650』(2002年式)。画像提供:カワサキモータース

▲ベベルギヤ駆動・空冷SOHCバーチカルツインエンジンを積む『W650』、写真は2002年式。画像提供:カワサキモータース

これぞ初代ダブワン!

1966年式カワサキ650W1。

▲1966年式カワサキ650W1。


 Wの初代は、なんと56年も前、1966年(昭和41年)に誕生しています。前年(1965年/昭和40年)の東京モーターショーに『X650』として発表され、翌年に『カワサキ650 W1』として発売。直列2気筒エンジンはボア・ストロークを74×77mmとし、『カワサキ500メグロK2』(1965年)のエンジンを624ccにスケールアップしたものでした。

シングルキャブ仕様のカワサキ650W1(1966年式)。バーチカルツインエンジンにミクニVM31がセットされる。

▲シングルキャブ仕様のカワサキ650W1(1966年式)。バーチカルツインエンジンにミクニVM31がセットされる。

 2気筒エンジンながらキャブレターは1つしかなく、ミクニVM31を装着。エアクリーナーはフレームのセンターパイプ間に収まっています。国内仕様の最高出力は47PSでした。

シングルキャブ仕様のカワサキ650W1(1966年式)。ミクニVM31がセットされる。

▲ファンらの間では「ワンキャブ」と差別化され、ひときわ貴重なW1初期モデル。


 エンジン始動は、もちろんキックスタートオンリー。難しいと思われがちですが、じつは点火時期やキャブが完調に整備されていれば難しくはありません。

シフトチェンジは右足で!!

 英国式の右シフトチェンジで、シーソーペダルの前側を踏み込んでいくに従いシフトアップとなり、トップ4段へと至ります。ボク(青木タカオ)が所有する『W1SA』(1971年式)から、現代のオートバイと同じ左シフトチェンジとなりました。

右足でギヤチェンジし、左足でのブレーキ操作となるカワサキW1。

▲右足のシーソーペダルでギヤチェンジ。4速、ロータリー式。

『W800』発売時に、カワサキが用意してくださった『W1』(1966年式)に乗せていただきましたが、右足でギヤチェンジし、左足でのブレーキ操作は違和感があるものの、慣れてしまえば問題ではありません。

後輪ブレーキは左足でペダル操作することとなる。カワサキ650W1(1966年式)。

▲後輪ブレーキは左足でペダル操作することとなる。カワサキ650W1(1966年式)。

じつは小排気量メーカーだった!?

「W」の血統は、この初代『W1』(1966年)から続くと先ほどから言っておりますが、じつはもっと古いのです。というのも『W1』は冒頭で述べた通り、『カワサキ500メグロK2』(1965年)の後継モデルに相当するのでした。

W1の直系ルーツとなるカワサキ500メグロK2(1965年)。

▲W1の直系ルーツとなるカワサキ500メグロK2(1965年)。

 今でこそカワサキといえば、ビッグバイクのメーカーですが、意外にも50年代までは小排気量モデルしか発売していませんでした。海外進出には大排気量車が必要であり、この先、国内でも時代が経つにつれて大型車が求められるはず。そこで、戦前から大排気量車を独自の技術で製造してきたメグロ/目黒製作所と提携することになります。1960年(昭和35年)のことでした。

メグロとWの深い関係

 経営不振の目黒製作所はカワサキの傘下となり、1963年(昭和38年)には社名を「カワサキメグロ製作所」とします。翌64年(昭和39年)には、ついに川崎航空機工業が吸収合併。メグロの『スタミナK1』を全面改良した『カワサキ500メグロK2』を再設計したのです。

1960年、目黒製作所、川崎航空機工業と提携。
1963年、メグロが傘下となり、カワサキメグロ製作所に。
1964年、川崎航空機工業に吸収。カワサキ500メグロK2を再設計。
1965年、カワサキ500メグロK2発売。
1966年、カワサキ650W1発売。

メグロK2のバーチカルツインエンジン。空冷OHV2バルブの直列シリンダーをW1でもそのまま受け継いだ。

▲カワサキ500メグロK2のバーチカルツインエンジン。空冷OHV2バルブの直列シリンダーをW1でもそのまま受け継いだ。

 このメグロK2が『カワサキ650 W1』へと進化していくこととなり、同社の海外進出をより加速させていきます。最大のマーケットは北米。しかしながら『B8』『J1』『W1』、いずれもアメリカ市場ではヒットには至らず苦戦します。

 カワサキが世界を席巻するのは、のちに『900SUPER4 Z1』(1971年/昭和46年)を生み出してからで、そのハナシはまた今度にいたしましょう。

逆チェンジも操る達人

 さて、たいへん貴重な1966年式カワサキ『W1』に乗っているのが、「CLUB ROKU・GO・MARU」を主宰する武山さん。昭和を代表するレアな旧車をたくさん所有する筋金入りのバイクマニアで、W1シリーズの排気量をあらわす“650”をクラブ名に、気の合う仲間たちを集めたツーリングなど、交流の機会を企画するリーダー的存在です。


 半世紀以上も前に製造された『W1』ですが、コンディションは抜群に良く、走行する姿を目の当たりにすると惚れ惚れするではありませんか。武山さんは他にも『650RS W3』(1973年式)や『CB750FOUR K0』(1969年式)など、昭和を代表する名車たちを複数台所有しており、逆チェンジも戸惑うことなく操るのはさすがとしか言いようがありません。

「もう、身体が慣れているのでしょうね。W1に乗れば、右足でのシフト操作も違和感ありません」と、話してくれます。

 オーナーの詳細解説とともに、W1初期ならではのモナカマフラーが奏でるダブワンサウンドを収めた貴重なムービーを公開しましたので、ぜひご覧ください。今回も最後までおつきあいいただきまして、ありがとうございました。

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