キャラ変とか意外とあるバイクキャラ

 人気はいつどこで生まれるのかわかりません。ひょんなことから注目され、「こんなはずじゃなかった」っていうほど売れてしまうバイクがけっこうあります。芸人さんもそうですよね。嫌いな芸能人、抱かれたくない男、そんな不名誉なランキングではいつもトップだった出川哲朗さんは、いまやお笑い界屈指の人気者。テレビ東京系のバラエティ「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」では電動スクーター「Eビーノ」で全国を旅し、ボクらバイクファンにもお馴染みです。

▲テレビ東京系のバラエティ「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」で活躍中のヤマハ Eビーノ。

 嫌われ者から人気者へ。バイクではそれだけに限らず、キャラ変やラインナップが変わって立ち位置が変わった、本来のターゲットとは違うユーザー層に人気が出た、なんていうモデルが結構ありまして、「こんなはずじゃなかった」と言わんばかりのバイクたちを見るとボクはゾクゾクして興奮してくるのです。なんでなのか理由はわかりませんが、きっとひねくれ者なんでしょうね。さぁ、紹介していきましょう。

ストリートを席巻したティーダバー

 こんなはずじゃなかった第1回目のバイクとして選びたいのが、ヤマハTWです。ストリートバイクが流行った頃、シーンを牽引したのはTWで、常盤貴子さん主演のTBS系テレビドラマ『Beautiful Life(ビューティフルライフ)』(2000年)の劇中で、木村拓哉さんが乗ってますます人気となっていきます。

TW200 ビューティフルライフ仕様

 バッテリーレス化してスイングアームをのばす「スカチューン」も流行り、乗り手あるいはカスタムバイクも含めて「ティーダバー」などとも呼ばれ、一大ムーブメントとなりました。

 しかし、本来のTWは「こんなはずじゃなかった」んです。1987年の初代は道なき道を走破するアドベンチャーモデルとして登場。輸出仕様のBW200をベースに、不整地も走破する極太タイヤを履き、山岳路も想定して高地補正機能付きキャブレターも装備されていました。まさしく地球を相手にするタフな冒険バイクだったんです。

▲冒険家・風間深志さんは1987年に北極点到達。TW200を2ストローク化した専用マシンでした。提供:風間深志事務所

 実際、冒険家の風間深志さんも北極点到達のバイクチャレンジで、TWをベースマシン(寒さに強いTY250の2ストエンジンに換装)に偉業を成し遂げていますし、『TW』の車名はTrail Way(トレールウェイ)と硬派でタフなイメージ。都会のストリートで、オシャレな若者たちの相棒となるなんて、何度も言いますが「こんなはずじゃなかった」のでした。

ミーハーなボクもじつはオーナー

 そしてじつは当時、ボクもTW200Eを新車で買っているのです。チャラいですねぇー、YSP店で29万9000円。人気のせいで、カスタムされまくった中古車が割高で、ならば新車の方が割安とピカピカの走行距離0kmを買いました。

▲街乗りメインで使っていたんですが、残っている写真は林道ツーリングのものばかり。ミラーさえも交換せず、完全フルノーマルだったことがわかります。

 ボクも「コレでキムタクだー!ビューティフルライフだー!」って喜んだわけですが、そんなわけがありません。最高出力16PSのSOHC2バルブ単気筒は低速重視だから乗りやすくて、チンタラ街乗りするには最高。言うことありません。

 ボクは高校時代からの親友にもTWを勧めて、ふたりで仲良くティーダバーに。ボクがGPZ250ベルトドライブに乗っていたときは、そのルーツであるZ250FTを勧めて、ふたりで兄弟車に乗って走り回ったものでしたから、その続きみたいなことを20代半ばになってもやっていたのでした。

フルノーマルのTWでオフ三昧

 ある日、オフロード好きなボクは友人を誘ってTW2台で1泊2日の林道ツーリングの旅に出かけます。川上牧丘林道で大弛峠を越えて山梨から長野へ入るのがスタートで、あとはなるべくダートをつないで走って、帰りは湯沢から関越道で帰京というコース。

▲2台のTWで親友と林道ツーリングへ。左がボク(青木タカオ)のフルノーマル車。

 細かくは覚えていませんが、湯沢から高速に上がったものの、関越道の高速巡航がただただ辛かったことが印象深く頭に残っています。


 がっつりとダートを走って、大満足だったボクでしたが、それはTW購入後、一切のカスタムをせずオフロードバイクとしての性能を持ち合わせていたTWにボクが乗っていたからで、標高が上がれば高地補正機能付きキャブレターが活躍し、ダートもバルーンタイヤでトコトコと走破。あぁ、TWっていいバイクだなぁってしみじみ感じつつ、親友とその思いを共有しようとしたところ……。

親友のTWは流行りのスカチューンになっていた

 すでに仕事で忙しくなっていた頃。久々に行くことになった林道ツーリングの集合地点で見た彼のTWは、知らぬ間に立派なスカチューンに仕上がっていたのでした。バッテリーレスでセルはなければ、キャブはエアクリーナーさえついていない。スイングアームは例のごとく長い。

  
 加えてダートはほぼ未経験な友人は、終始閉口するばかり。彼の「こんなはずじゃなかった」って顔を見て、申し訳ないことをしたなぁっと思ったボクでした。それでもボクが予定していたオフロード三昧の行程に全てつきあってくれたから、感謝しかありません。今ならスカチューンになっているのを見た時点で予定変更ですが、当時は二人で交代しつつ、七転八倒を繰り返すのを面白がったのでした。

▲ヤマハ200(1987年)。なんたって砂漠の上で写真を撮っていますからね。ストリートバイクで大人気になるなんて「こんなはずじゃなかった」って感じでしょうね。

 他にも「こんなはずじゃなかった」っていうバイクはアレコレ思いつくので、また次回以降、紹介していこうと思います。今回も最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

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