兄貴分、弟分とともに1990年デビューを果たして快調なセールスを記録していったカワサキZZ-R400。翌年、翌々年とグラデーションを小変更したほかは大きな変更もなく時は流れ、1993年に大規模なモデルチェンジを敢行! ZZ-R1100(D型)同様のツインラムエア機構の導入などで完成度をさらに向上させ、同ジャンル好敵手の追撃をかわしていきます!!
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ポストレーサーレプリカ時代を席巻したカワサキ!
1990年3月に登場し、1993年3月まで丸3年。
毎年のように細部改良とちょっとした色変更のみで一定以上の人気を獲得しつづけた初代ZZ-R400(K型というと“ツウ”っぽくなります)。
GPZ400Rのように年間販売台数のトップを獲得することはできなかったのですけれど、それもさもありなん。当時はとんでもない勢力の「カワサキ・ゼファー旋風」が巻き起こっていましたから……。
1991年2月にバブル景気が弾けた影響もあってか、世の中は急速に派手派手なイケイケドンドン路線から、何もかも緊縮緊縮で恐縮な質実剛健方向へと進んでいきました。
そんな世相の追い風を受けてか西風(ゼファー)は造っても造ってもバックオーダーが増え続ける異常なほどの大ブームに。逆に1980年代中盤から後半にかけて我が世の春を謳歌したレーサーレプリカ群は衰退への下り坂を転げ落ちていったのですから、本当にこの世は盛者必衰諸行無常焼肉定食いや弱肉強食であります。
需要がないと思われていた!?「400直4ツアラー」
そんな食うか食われるかといった各バイクジャンルごとの熾烈な争いから、一歩か二歩引いたところに位置していた“風の谷”のような「400直4ツアラー」というカテゴリーで、ZZ-R400はライバルほぼ不在という好条件を満喫していました。
そのころ400㏄クラスのフルカウルといえば、レーサーレプリカ群がサーキットで空気の壁を切り裂くための装備であり、高速巡航時の快適さなど二の次。
そんなレプリカへのアンチテーゼとしてゼファーを代表とするレトロ風味ネイキッドが一気に時代をひっくり返したものの、長距離高速移動時には走行風が体幹にモロ当たりして意外なほどツライことが発覚……。
「ハイウェイランが快適で、ワインディングでも面白く、隣にビッグバイクが並んでも恥ずかしくないバイクはないかなぁ?」という悩める“チューメン”ライダーの心を鷲づかみにしたのがZZ-R400だったのです。
「400直4ツアラー」の開拓者はやはりあのメーカー
が、実は同様のバイクが2年も前にデビューしていました。スズキ「GSX-F」というのですけれども……。
ZZ-R400と同じく600の兄貴分(GSX600F。北米仕様の車名はKATANA600)とシャシーを共用したスポーツツアラーで今見るとイイ線いってると思うのですけれど(筆者はスズキファン)、1986年に出たホンダCBR400R(NC23)同様のフルカバードデザインがいけなかったのか、デビュー翌年の1989年型を最後に進化が止まり(車名はこっそり「GSX400F」に変更)、1992年にひっそりカタログ落ち……。
入れ替わるようにして登場し、風の谷いや400直4ツアラーというジャンルでスマッシュヒットをかましたZZ-R400の活躍を見て、スズキ開発陣は血の涙を流したに違いありません。
そこで1993年3月、満を持してスズキは打倒ZZ-R400を掲げた「RF400R」を登場させます。
どうですか、このシュッとしたフロントマスクからテールエンドへと続くウエッジシェイプは!
フェラーリ・テスタロッサを彷彿とさせるサイドカウルに入ったスリットといい、カウリングと同色に塗られて完全フルカバードデザインに見えてしまう新設計スチール製プレスフレームといい、超絶イイ線いってると思うのですけれど(筆者はスズキファン)、残念ながら風の谷(しつこい)の覇権を奪うことはできませんでした。
まさしく同年同月、ZZ-R400がモデルチェンジを果たして人気を再加速させていったからです。
実際の走行でこそ味わえたラムエア加圧の実力!
当時の馬力規制を受けてカタログに表示される最高出力はRF同様に53馬力。……なのですが、特に高速巡航時、湧き出るトルクの厚みがRF、いやレーサーレプリカ群も含めた同馬力の400㏄ライバルたちより確実に一枚上手だったという記憶がございます。
他メーカーに先駆けて1989年、ZXR250への採用を皮切りにZZ-R1100のC型、D型で改良を重ねてきたラムエアシステムを2代目ZZ-R400(N型)へ新たに採用した効果は確実に出ていましたね。
もちろん改良されたのはエンジンだけではなく、ZZ-R1100(D型)とウリふたつのフロントフェイス獲得など一新された外装類、最終減速比の変更、燃料計の追加、さらにはシートがキーにより着脱可能となり車載工具入れも装備されるなど、大きなところから細部に至るまでカユいところに手が届くブラッシュアップが行なわれたのです。
残念ながらRFはZZ-Rの牙城を崩すところまではいきませんでしたが、違う魅力を持つライバル車の存在は当然ながら雑誌稼業にとっても“オイシイ”ものでして、この2台を軸にした比較試乗やツーリング企画などが誌面を彩り、結果的に「400直4ツアラー」の認知度と人気が拡大していったのは間違いのないところです。
4メーカー総激突にならなかったジャンルではあったが……
ちなみにヤマハは1991年7月にフルカウルではありませんが、ツアラーであることを謳った「ディバージョン400」を世に問うたものの清々しいほどに撃沈されて風の谷から撤退。
その姿を見ていたせいなのか、業界の盟主たるホンダはこのジャンルに寄りつかず、1991年10月にV型2気筒エンジンを搭載した、今でいうところのアドベンチャーモデル「トランザルブ400V」を投入してオフ寄りバイク旅を楽しみたい層を吸収。
1992年6月には街乗りやサーキットはもちろんツーリングにも対応可能なスーパースポーツ=“Fコンセプト”を標榜する「CBR600F」を国内導入して人気を集めますが、結局その400㏄バージョンは登場せず。
直4とV4のレーサーレプリカをまだ進化させなくてはならないし、打倒ゼファーも果たさなくてはならないしで、当時のホンダにそんな余裕などなかったのでしょう……。
1990年代いっぱい、カワサキとスズキの「400直4ツアラー」シェア争奪戦は続いていきます。以降は次回。
あ、というわけで着実な進化熟成で完成度の高いZZ-R400は、幅広い年式が中古車市場に出回っております。低年式車両だとパーツの供給が気になるところですが、レッドバロンの良質な中古車なら「本社工場」を中心に膨大なパーツがストックしてありますので安心ですよ。気になる点があればお近くの店舗へ足を運んでスタッフにご相談を!
(つづく)