兄貴分、弟分とともに1990年デビューを果たして快調なセールスを記録していったカワサキZZ-R400。翌年、翌々年とグラデーションを小変更したほかは大きな変更もなく時は流れ、1993年に大規模なモデルチェンジを敢行! ZZ-R1100(D型)同様のツインラムエア機構の導入などで完成度をさらに向上させ、同ジャンル好敵手の追撃をかわしていきます!!

ZZRカタログ

●1996年型 ZZ-R400のカタログより。「インターナショナル・ツーリング」というキャッチコピーにも旅心をかき立てられたものです。ゼファーもそうでしたが、カワサキは叙情的な風景写真と訴求したいバイクとの融合が非常にうまいですね……

 

ZZ-R400という高汎用性万能車【前編】はコチラ

ポストレーサーレプリカ時代を席巻したカワサキ!

1990年3月に登場し、1993年3月まで丸3年

毎年のように細部改良とちょっとした色変更のみで一定以上の人気を獲得しつづけた初代ZZ-R400K型というと“ツウ”っぽくなります)。

新旧ZZR400

●同じ車名で歴史を重ねたモデルを話題にするとき「○年式の△□☆○だよ」というのが一般的ですが、お互いが趣味人の領域に足を突っ込みはじめると「MC16だよ」「3MAだよ」「GJ75Aだよ」などと車両の“型式名”で話が通じたりします。というわけで左の初代ZZ-R400の型式名が「ZX400K」、右の2代目が「ZX400N」だったんですね。覚えていて損はないですが、ビギナーにとってはチンプンカンプンなので適切な用法用量を守りましょう(笑)

 

GPZ400Rのように年間販売台数のトップを獲得することはできなかったのですけれど、それもさもありなん。当時はとんでもない勢力の「カワサキ・ゼファー旋風」が巻き起こっていましたから……。

1991年2月にバブル景気が弾けた影響もあってか、世の中は急速に派手派手なイケイケドンドン路線から、何もかも緊縮緊縮で恐縮な質実剛健方向へと進んでいきました。

ゼファー

●熱狂的な支持を背景に猛烈な進化を遂げた400㏄レーサーレプリカ軍団が、軒並み水冷4気筒DOHC4バルブの59馬力エンジンを搭載していた1989年。突然46馬力の空冷4気筒DOHC2バルブエンジンのゼファーが登場し、あれよあれよと大……いや超絶メガヒット! 税別52万9000円というリーズナブルな価格も消費税がスタートした新たな時代にマッチしていたのです

 

そんな世相の追い風を受けてか西風(ゼファー)は造っても造ってもバックオーダーが増え続ける異常なほどの大ブームに。逆に1980年代中盤から後半にかけて我が世の春を謳歌したレーサーレプリカ群は衰退への下り坂を転げ落ちていったのですから、本当にこの世は盛者必衰諸行無常焼肉定食いや弱肉強食であります。

需要がないと思われていた!?「400直4ツアラー」

そんな食うか食われるかといった各バイクジャンルごとの熾烈な争いから、一歩か二歩引いたところに位置していた“風の谷”のような「400直4ツアラー」というカテゴリーで、ZZ-R400はライバルほぼ不在という好条件を満喫していました。

ナウシカ

●国民的アニメ作品「風の谷のナウシカ」より。皆さんよくご存じのとおり“風の谷”とは森の毒から守られた小国のこと。今では信じられませんけれど1990年代初頭、市場の大多数はレーサーレプリカが席巻しており、そこへゼファーがネイキッド旋風を巻き起こしてシェアを一気に拡大するという激変の最中。400ツアラーというジャンルは見向きもされない辺境の地、というイメージでした

 

そのころ400㏄クラスのフルカウルといえば、レーサーレプリカ群がサーキットで空気の壁を切り裂くための装備であり、高速巡航時の快適さなど二の次

そんなレプリカへのアンチテーゼとしてゼファーを代表とするレトロ風味ネイキッドが一気に時代をひっくり返したものの、長距離高速移動時には走行風が体幹にモロ当たりして意外なほどツライことが発覚……。

「ハイウェイランが快適で、ワインディングでも面白く、隣にビッグバイクが並んでも恥ずかしくないバイクはないかなぁ?」という悩める“チューメン”ライダーの心を鷲づかみにしたのがZZ-R400だったのです。

ZZR屋内写真

●ツインラムエアシステム導入孔が生み出す押し出しの強さと、ヌメヌメのツヤツヤなカウリング造形がタマリマセンな……。なお、一時期のカワサキ車からごちゃごちゃとしたデカール類が忽然と姿を消したのは、そうすることで浮いた億単位のお金をモトGP参戦につぎ込んだから……という業界のウワサも流れたものです。真偽のほどは不明ですが(汗)

 

「400直4ツアラー」の開拓者はやはりあのメーカー

が、実は同様のバイクが2年も前にデビューしていました。スズキ「GSX-F」というのですけれども……。

GSX400F

●1988年5月に登場したスズキ「GSX-F」。GSX-R400ベースの水冷直4DOHC4バルブエンジンをカムプロフィール変更により若干低中速寄りに設定変更。それでも最高出力59馬力/12000回転、最大トルク3.9㎏m/10000回転というハイパフォーマンスを発揮し、スチール製ダブルクレードルフレームが剛健かつしなやかな車体と相まって自由自在の走りを実現……していたのですが、そのころはレーサーレプリカ超最盛期だったので残念ながら完全に埋没してしまったのです。タイミングってホントに大事

 

ZZ-R400と同じく600の兄貴分(GSX600F。北米仕様の車名はKATANA600)とシャシーを共用したスポーツツアラーで今見るとイイ線いってると思うのですけれど(筆者はスズキファン)、1986年に出たホンダCBR400R(NC23)同様のフルカバードデザインがいけなかったのか、デビュー翌年の1989年型を最後に進化が止まり(車名はこっそり「GSX400F」に変更)、1992年にひっそりカタログ落ち……。

入れ替わるようにして登場し、風の谷いや400直4ツアラーというジャンルでスマッシュヒットをかましたZZ-R400の活躍を見て、スズキ開発陣は血の涙を流したに違いありません。

悔しい

●同じようなことをしても、認められたり無視されたり……。とかくこの世は不明瞭なコトばかりですが、そこで腐っちゃぁいけません

 

そこで1993年3月、満を持してスズキは打倒ZZ-R400を掲げた「RF400R」を登場させます

どうですか、このシュッとしたフロントマスクからテールエンドへと続くウエッジシェイプは! 

フェラーリ・テスタロッサを彷彿とさせるサイドカウルに入ったスリットといい、カウリングと同色に塗られて完全フルカバードデザインに見えてしまう新設計スチール製プレスフレームといい、超絶イイ線いってると思うのですけれど(筆者はスズキファン)、残念ながら風の谷(しつこい)の覇権を奪うことはできませんでした。

RF400R

●「RF400R」はバンディット400(ルーツはGSX-R400)のパワーユニットをベースに、カムシャフトやクランクマスを変更し、小型のキャブレターを装着かつスプロケットの丁数を変更するなど多岐にわたる最適化が果たされた53馬力/3.8㎏mエンジンを当時最先端のシャシーに搭載。デザインのモチーフは海を泳ぐ“エイ”なのだそうで、言われてみればフロントマスクほかに納得のディティールが散りばめられております。……だとするとサイドカウルのスリットは“エラ”!? なお翌年にはRF900Rが国内導入され、一部ファンの熱烈的な歓迎を受けました

 

まさしく同年同月ZZ-R400がモデルチェンジを果たして人気を再加速させていったからです。

1993ZZR400

●改めまして1993年型のZZ-R400(型式:ZX400N)です。まだデカールによる大胆なグラフィックが全盛期だったころですね。K型と同じように見えるアルクロスフレームですが、しっかりと改良の手が入っております。そしてまさか1100同様のツインラムエアシステムを導入してくるとは予想外でした

ラムエア

●図版はZZ-R1100(D型)のツインラムエアシステム。こちらと同じ機構……と言っても1100、600、400ではキャブレターが違うし、膨張室の大きさなど求められる要件も異なるわけですから、それぞれに膨大なトライ&エラーを繰り返して各排気量にベストマッチしたセッティングを煮詰めていかなくてはなりません。本当に頭が下がります……

実際の走行でこそ味わえたラムエア加圧の実力!

当時の馬力規制を受けてカタログに表示される最高出力はRF同様に53馬力。……なのですが、特に高速巡航時、湧き出るトルクの厚みがRF、いやレーサーレプリカ群も含めた同馬力の400㏄ライバルたちより確実に一枚上手だったという記憶がございます。

他メーカーに先駆けて1989年、ZXR250への採用を皮切りにZZ-R1100のC型、D型で改良を重ねてきたラムエアシステムを2代目ZZ-R400(N型)へ新たに採用した効果は確実に出ていましたね。

もちろん改良されたのはエンジンだけではなく、ZZ-R1100(D型)とウリふたつのフロントフェイス獲得など一新された外装類、最終減速比の変更、燃料計の追加、さらにはシートがキーにより着脱可能となり車載工具入れも装備されるなど、大きなところから細部に至るまでカユいところに手が届くブラッシュアップが行なわれたのです。

ZZR400メーター

●ツアラーを名乗るのならば、やはり燃料計は必需品。写真は2003年式のZZR400なので、タコメーター内にデジタル時計(1997年型より装備。同時にトリップメーターはツイン→シングル化)が組み込まれていますね

 

残念ながらRFはZZ-Rの牙城を崩すところまではいきませんでしたが、違う魅力を持つライバル車の存在は当然ながら雑誌稼業にとっても“オイシイ”ものでして、この2台を軸にした比較試乗やツーリング企画などが誌面を彩り、結果的に「400直4ツアラー」の認知度と人気が拡大していったのは間違いのないところです。

ZZR400 7:3

●2003年型のカラーチェンジで登場したムーンライトシルバー。いい色ですなぁ〜。ヘッドライト下の走行風導入孔にはツインラムエアシステムの証明でもある、キャブレター内のフロート室を加圧する用の細いパイプが見えますね。ここいらの部分の記事を書くたびに「ほえ〜っ」となるのですけれど、FI(フューエルインジェクション=電子制御式燃料噴射装置)じゃないんですよ。ぶっちゃけ“ガソリン霧吹き”ともいえる究極アナログな装置(キャブレター)で走行風の圧力をフル活用したのですから本当に凄いことです

 

4メーカー総激突にならなかったジャンルではあったが……

ちなみにヤマハは1991年7月にフルカウルではありませんが、ツアラーであることを謳った「ディバージョン400」を世に問うたものの清々しいほどに撃沈されて風の谷から撤退。

ディバージョン400

●正式名称は「ヤマハ XJ400Sディバージョン」。なんと完全新設計された空冷直4DOHC2バルブエンジンをジェネシス思想を受けて35度前傾させ、ダウンドラフトキャブレターを装備。パフォーマンスは42馬力/3.5㎏mというものでしたが、乾燥重量で178㎏という軽快なボディには十分で気持ちよい走りが楽しめました。「WIND TOURER Diversion」というキャッチコピーもカッコよかったのですけれど、まさに風のように消え去ってしまいましたね……

 

その姿を見ていたせいなのか、業界の盟主たるホンダはこのジャンルに寄りつかず、1991年10月にV型2気筒エンジンを搭載した、今でいうところのアドベンチャーモデル「トランザルブ400V」を投入してオフ寄りバイク旅を楽しみたい層を吸収

トランザルプ400V

●RF、ZZ-R、ディバージョンと同じく、こちらも世界戦略車の600㏄版を兄貴分に持つ国内導入車両です。スティードなどと同じV型2気筒エンジンをオールラウンドなボディ(当時はアドベンチャーなんてジャンルの呼び名はまだなくビッグオフやデュアルパーパスなどと呼ばれていました)へと搭載。最高出力こそ37馬力だったものの、Vツインが生み出す太い低中速トルクにより、乾燥重量183㎏の車体を軽やかに移動させました

 

1992年6月には街乗りやサーキットはもちろんツーリングにも対応可能なスーパースポーツ=“Fコンセプト”を標榜する「CBR600F」を国内導入して人気を集めますが、結局その400㏄バージョンは登場せず。

CBR600F

●同じCBRでも“RR”とはまた違った方向性で進化していき、それが欧州を中心に玄人ライダーに支持されたこともあって2000年代の「CBR600F4i」まで命脈を保った高汎用性スーパースポーツが「CBR600F」シリーズです。ZZ-RやRFが人気を集めていた当時、この400㏄版があれば……とも思いましたが、すでにCBR400Fという空冷直4バイクが1983年〜86年で販売されていたため、そちらと混乱してしまいそう。とはいえヘタに名前を変えてしまうと“Fコンセプト”つながりがなくなってしまう……。案外、かくいう単純な理由で出なかったのかもしれません

 

直4とV4のレーサーレプリカをまだ進化させなくてはならないし、打倒ゼファーも果たさなくてはならないしで、当時のホンダにそんな余裕などなかったのでしょう……。

1990年代いっぱい、カワサキとスズキの「400直4ツアラー」シェア争奪戦は続いていきます。以降は次回。

あ、というわけで着実な進化熟成で完成度の高いZZ-R400は、幅広い年式が中古車市場に出回っております。低年式車両だとパーツの供給が気になるところですが、レッドバロンの“譲渡車検”付き車両なら「本社工場」を中心に膨大なパーツがストックしてありますので安心ですよ。気になる点があればお近くの店舗へ足を運んでスタッフにご相談を!

(つづく)

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