今年も盛り上がった鈴鹿8耐!


 暑かったけど、楽しかった! だからやめられない!! バイクレースの真夏の祭典、鈴鹿8耐(2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会)に行ってきました。青木タカオです。

 8月3日(日)に行われた決勝レースは11:30にスタートし、19:30にチェッカーフラッグが振られます。

 高校野球が行われている甲子園球場では、酷暑の時間を避けて午前と夕方に分けて試合を開催していますが、こちらは8時間耐久レースですからそうはいきません。最後はライトオンして、夜間走行にもなってしまいます。

2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 鈴鹿サーキットの気温は36度、路面温度65度を超える過酷なコンディション。ライダーの技術はもちろん体力、マシンの耐久性、そしてチームの戦略が試されます。

鈴鹿8耐(2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会)にて4連覇達成のホンダHRC。表彰台の高橋巧&ヨハン・ザルコ組。/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲鈴鹿8耐(2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会)にて4連覇達成のホンダHRC。表彰台の高橋巧&ヨハン・ザルコ組。/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 レースは、すでにネットニュースなどで報じされている通り、『ホンダHRC』が4連覇を達成。日が暮れてからのゴールシーンは、スタンド中が歓声と感動の渦に包まれました。

 というのも、『ホンダHRC』の優勝への道は困難の連続だったからです。ライバルらが3人体制でたたかう中、高橋巧選手とヨハン・ザルコ選手のふたりだけで見事に走り走りきったのでした。

勝敗を左右するピットストップ

 気が遠くなりそうな8時間にも及ぶ長丁場のレースですから、ライダーは2〜3名とルールで決められています。

 ライダーが疲れたら合図して交代。いいえ、そんな行き当たりばったりではありません。どうやって8時間を乗り切るか、チームはあらかじめ細かく作戦を練ってレースに挑みます。

鈴鹿8耐にて4連覇達成のホンダHRC。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲鈴鹿8耐にて4連覇達成のホンダHRC。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 表彰台を狙うには、8時間のレースのうちにピットストップを7回、つまり8回のスティントとするのが、近年では基本となっています。

 スティントとは「期間」や「任務」を意味する言葉で、モータースポーツではレース中のピットインからピットインまでの走行区間を示します。

 およそ1時間ごとに交代し、その際に燃料タンクへ給油し、前後タイヤを交換する作業を素早くおこないます。

 どんなにライダーが速く走っても、ピットストップに要する時間が他のチームより多くかかってしまえば台無しです。

 上位チームの優れたクルーたちは、なんとわずか20秒以内で終わらせてしまうから、ピットストップもまた鈴鹿8耐の見どころになっています。

 今回優勝した『ホンダHRC』は、ピットストップに要する時間が最短でした。勝因の一つであり、チーム監督の松原輝明氏もレース後に「まさにチームワークの真髄。ピットストップ最速が大きな差を生みました」と、2人のライダーはもちろん、ライダーたちを全力で支えたチームのみんなを称えています。

 ここにホンダの力を感じてなりません。というのも、2位のヤマハとは最終的には、わずか34秒でしかなかったのですから。

耐久なのに超高速レース

ホンダHRCのヨハン・ザルコ。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲ホンダHRCのヨハン・ザルコ。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 耐久レースだからといって、コースを周回するペースが遅いわけではなく、上位チームはスプリントレース並みのタイムを叩き出すことから、「耐久スプリント」とも呼ばれるほどにハイペースなレースが繰り広げられます。

 1回のスティントは1時間と長く、それを複数回こなすライダーは、集中力を欠くことが決して許されません。ですから近年では、ライダーは2名より3名が有利とされています。

 2001年に、世界耐久選手権に合わせたレギュレーションに変更されるまでは2名体制でした。ライダーによってライディングポジションなどが異なるなど、複数人のライダーが同じマシンに乗る場合、セッティングの妥協点を見つけなければなりませんから、必ずしもライダーが増えれば良いというわけではないという考え方もできます。

 実際、3人登録のチームとなってからも、第3ライダーは決勝レースを走らなかったというケースが続きました。トップライダーたちが同じマシンをシェアする難しさというのが、あったのです。

どうなるホンダ!? レースファンが注目した

 しかし、3人のレベルがとても高いラインナップを揃えているのが最近の鈴鹿8耐で、多くのチームが3名編成を選んでいます。

 今年の『ホンダHRC』もまた当初は3名体制の予定でした。しかし8耐本番1週間前に、イケル・レクオナ選手がWSBK第8戦ハンガリーにて転倒してしまい、左前腕遠位部を骨折。すぐに代役にチャビ・ビエルゲ選手を起用すると発表したものの、手続き上の問題で参戦できませんでした。

ホンダHRCの高橋巧&ヨハン・ザルコ組。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

▲ホンダHRCの高橋巧&ヨハン・ザルコ組。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ホンダモーターサイクルジャパン

 レースファンらは「一体どうなる!?」と、注目しました。

決勝レースのベストラップはヤマハのロカテッリ

 前日土曜日のハイライトは、大会決勝のスターティンググリッド10位までを決めるトップ10トライアル。予選終了時点による上位10チームによって競われますが、『ホンダHRC』のヨハン・ザルコ選手が『CBR1000RR-R』にてトップタイム2分04秒290を叩き出して、ポールポジションを獲得します。

YAMAHA RACING TEAMのアンドレア・ロカテッリ選手。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ヤマハ発動機

▲YAMAHA RACING TEAMのアンドレア・ロカテッリ選手。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ヤマハ発動機

 2番手タイムは、6年ぶりのファクトリー体制で参戦した『ヤマハレーシングチーム』のアンドレア・ロカテッリ選手の2分04秒316。ロカテッリ選手は、翌日の決勝190周目にマークした2分06秒604がレース中のベストラップ。


 ヤマハは創立70周年であり、レース活動70周年。ヤマハのレーシングカラーを象徴するホワイト&レッドのカラーリングを採用した『YZF-R1』で参戦しました。

ヤマハブース、特設ステージ上に展示されたYZF-R7(1999年)。

▲ヤマハブース、特設ステージ上に展示されたYZF-R7(1999年)。

『YZF-R7』(1999年)のカラーリングをベースに、リデザインしたスピードブロックなどによって、1990年代後半の雰囲気と新しいデザインワークを融合しています。

 これまたレースファン歓喜であり、ブースには歴代の鈴鹿8耐参戦マシンも並びました。

8時間も走って、差はたったの34秒

『ヤマハレーシングチーム』もまた『ホンダHRC』と同じ217周を走り、2位でチェッカーを受けました。8時間も競り合った結果、タイム差はたったの34秒243でしかありません。

6年ぶりの参戦での2位表彰台獲得したヤマハファクトリーチーム。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ヤマハ発動機

▲6年ぶりの参戦での2位表彰台を獲得したヤマハレーシングチーム。2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会/画像提供:ヤマハ発動機

 なんというハイレベルなレースなのか、なんという面白さなのか、すごいです鈴鹿8耐。

『ホンダHRC』の高橋巧選手は、鈴鹿8耐の優勝回数で史上最多記録を更新する通算7勝目となり、ヨハン・ザルコ選手は2年連続の優勝となりました。

 また、今回の勝利でホンダは、鈴鹿8耐での優勝が通算31回となりました。

 レース後、ヤマハレーシングチームの車両開発プロジェクトリーダーの福島造氏は「6年ぶりに出場した耐久レースの戦い方、耐久仕様のバイクとしてのラップタイム、燃費などの作り込みについては課題が見えました」とコメントしています。

 ヤマハレーシングチームの吉川和多留監督は「ライバルとの間に結果以上の差を感じたのも確かです。強力なライバルに対して本気で勝ちに行くなら、今からでも次に向けての準備をしてもっとレベルアップしなければという気持ちです」と、2位の結果にまったく満足していません。

 早くも来年に向けてリベンジへの思いを口にするヤマハ陣営、恐るべしです!


 鈴鹿8耐レポートは長くなったので、次回に続きます。

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