スペックから読み解くSR400とSR500の違い
何度も繰り返すようだが、僕は現在2台のSR400を所有している。そして、その魅力についてはこちらの記事 に書いた通りだ。
もちろんSR400も良いバイクなのだが、個人的にはSR500の方が好き。SR400とSR500では「排気量がたった100ccしか違わない」と思われる方も多いだろう。しかし、この100ccがとてもつもなく大きな違いを生み出すのだ。
これも以前に書いたが、SR400のボア×ストロークは87.0mm×67.2mm(399cc)。対してSR500は87.0×84.0mm(499cc)。ボア(シリンダーの内径)はまったく同じで、ストローク(ピストンが動く距離)だけを長くして100cc分の排気量を稼いでいるのだ。
つまりSR500はSR400に対してロングストローク設定だということ。
さらに圧縮比はSR500が8.3、SR400が8.5で、SR400の方が高い。一般的に圧縮比が高い方が出力が向上すると言われている。
まとめると、SR400は『排気量399cc、ショートストローク、高圧縮』エンジン、SR500は『排気量499cc、ロングストローク、低圧縮』エンジンということ。
どうしてこうも違うのかというと……SRのルーツはXT500であり、つまりSRはそもそも500がベースとなって作られたモデルである。そして、日本の免許制度に合わせて排気量を399ccにダウンしたSR400が作られた。
しかし、ただ排気量を落としただけではSR400のパワー不足は否めない。そこでボアではなくストローク量を落としてショートストローク設定とし、高回転型エンジンとする。さらに高い出力を得るために圧縮比を高めた。
こうすることで、もともとはXT500をもとに作られたロングストロークエンジンが、単気筒らしい鼓動感を感じつつパワー不足を感じることもない絶妙な399ccエンジンへと生まれ変わったため、なのである。
最初期型を見れば、乗り味の違いが目視できる!?
逆にいえばSR500こそ、SR本来のイメージ……低回転からトルクフルで、のんびりドコドコと鼓動感を溢れさせるバイク……ということになるのだ。
その証拠が最初期型のSR400とSR500に見ることができる。
上の写真は1978年式SR400。低めのハンドルとお馴染みのカウル付きシートを装備している。
このシートカウルはじつはダートトラッカーをオマージュしたもので、低めのハンドルと相まって、スポーティイメージを打ち出しているのだ。
対して1978年式SR500は、アップハンドルとカウルなしのシートを採用。あきらかに、のんびりと走る『大人のシングルスポーツ』を標榜していることがわかるはず。
その後、SR500SPは低いハンドルやシートカウルを採用したり、1982年にはアップハンドル&カウルなしシートを装備したSR400が登場するなど、最初期型以降はしばらく迷走(?)を続けるのだが、1983年にはSR400/500ともに低めのハンドル&シートカウルで統一され、今のSR400のイメージへと繋がっていく。
しかし、1978年式の2台を比べれば、当時、そのコンセプトに大きな違いがあったことは明らかなのだ。
低速からモリモリドコドコとトルクフルなSR500
では、実際のところはどうなのか?
はい! 多くのライダーがイメージする『空冷単気筒エンジン』そのまま。クラッチミートした瞬間からエンジンのパワーを感じることができ、そのままドコドコと緩やかに回転を上げていく。
最大トルクはSR400の3.0kgm/6500rpm(78年式)に対し、SR500は3.7kgm/5500rpm(78年式)と、1000rpm低い回転で0.7kgm高いトルク値をマーク。最高出力もSR400の27PS/7000rpmに対し、32ps/6500rpm。
馬力もトルクも数値が上回りつつ、どちらもより低い回転域で発生している。このため、よりトルクフルで力強く感じるのだ。
ちなみに最終5型(2018~2021年)のSR400では、最大トルクを3000rpmという極低速で発生させているため、これまでのSR400にはないトルク感を感じることができ、各方面で好評だったことは付記しておきたい。
というわけで、じつはスポーティなSR400に対して、『ザ・単気筒バイク』なSR500……僕はこのドコドコ感がめちゃくちゃ好き。だけど、残念ながら今や希少車であり、中古車を見つけたとしてもプレミアムなプライスがつけられていて、そう簡単には手に入れられないのが残念でならない……。
さて次回は、そんな希少車のなかの希少車・1979年式SR500SPのフルオリジナルモデルを撮影することができたので、その詳細を紹介予定! 乞うご期待♪
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