2024年8月19日(月)の“バイクの日”、山梨県の「道の駅どうし」にて都留文科大学の地域活性化団体「道志村ぼ。」がライダー向けのイベント「道志みちに恩返し Ver.3」を開催した。この模様についてはコチラで詳しく紹介しているので、ぜひ読んでみてほしい。
道志村とライダーの関係性について考える
さて、本記事では、首都圏ライダーの聖地でもある道志(どうし)について改めて考えてみたい。イベント記事にもあったように、道志村とライダーの関係は実は少しいびつなものとなっている。「道志村ぼ。」で調査・分析した結果をもとにまずは現状を洗い出してみよう。
目 的
「道志村ぼ。」の活動では道志村の地域活性化を目指しているが、道志みちを行き交うライダーと地域住民にも関わってもらうべく、次の3つを目的としている。
①道志村に訪れるライダーを関係人口に変える
関係人口とは、地域外に拠点を持ちながらも地域や地域の人と継続的に関わる人口のことで、田んぼのオーナー制度や毎年の祭りのサポーターなどがそれに当たる。アニメの聖地などで、聖地巡りだけでなく、その後の市政や地域イベントに関わり続けるといった人たちも関係人口だ。
②交通安全に対する意識の向上
ライダーとバイクに限ったことではないが、パーソナルモビリティを使った来訪者が増えれば、交通事故発生の可能性も自然と高まっていく。モビリティによる来訪者の誘致と交通安全の啓発・訴求は常にセットで考える必要がある。
③道志村全体でライダーを歓迎する雰囲気を作る
ライダーが多く訪れる地域では、そのエンジン音や排気音、さらには過去(主に80~90年代バイクブーム時)の事故・事件などによりライダーやバイクのことを疎んじる住民がいることが多い。こうした負のイメージを転換し、地域からの歓迎ムードを醸成していく活動が求められる。
課 題
道志村とライダーの間には2つの大きな課題がある。どちらもかねてより指摘されてきたことであり、ライダーならではの課題とも言えるものだ。
①道志村はライダーの目的地になっていない
「道志村ぼ。」がライダーに実施したアンケート調査の結果によると、道志村を目的地にしていないライダーは約8割にのぼった。道の駅どうしに行くと、広く設けられた二輪車駐車場にはいつもライダーが大勢集まっているイメージがあるが、実際には一時的な休憩や集合地としての役割に過ぎず、多くのライダーにとって道志村は通過点という認識なのだ。
②道志みちはライダーの事故が多い
道志村は令和3年度、1万人あたりの交通事故による死者数が18.37人と山梨県内で一番多かった。令和5年度では、道志みち(国道413号)だけで8件の事故が起き、うち6件が二輪車事故だった。スピードの出しすぎなど単独転倒事故が多いのも特徴だ。
目 標
こうした課題を踏まえて「道志村ぼ。」では課題改善に向けた主な目標を3つ定めている。
①清掃活動を通して道志みちを綺麗にすること
ゴミ拾いなどの清掃活動に関して、来訪ライダーと地域住民が共に取り組んでいくことが、ライダーのマナーアップやイメージ向上につながっていく。ゴミを捨てるのも事故を起こすのも来訪者というのは、観光地や行楽地が抱える共通の悩みであり課題となっている。道志村には横浜市水道局が保有する水源林があり、良好な水質を維持するためにもこうした活動は有益だろう。
②道志みち以外の道志村の魅力をライダーに知ってもらうこと
道志村を訪れるライダーの多くは道志みちを走ること自体が目的となっている。その休憩・集合ポイントとして道の駅どうしが利用されているが、このタッチアンドゴー的な利用法から回遊型、滞在型観光形態のプランニングにも取り組むことが求められている。村内の観光スポットやアクティビティなどの魅力をもっとライダーに知ってもらう必要があるだろう。
③本企画を恒常化すること
「道志村ぼ。」による取り組みを継続し、地域住民、自治体(道志村役場)、所轄の警察(山梨県警大月警察署)、交通安全協会といったステークホルダーと来訪ライダーによる協働・交流の場として恒常化させていくことが求められている。
「道志みちに恩返し」といったイベントから発展させ、来訪ライダーとの協働による地域活性化の受け皿かつ情報発信の場とすることで、成長のためのゆりかご(プラットフォーム)として育てていくことが求められそうだ。
道志とライダーの関係性を深めるためには?
「道志村ぼ。」から頂いた資料をもとに補足などしつつまとめてみた。ここからは、いちツーリングライダーとして、長年ツーリング雑誌の企画編集にたずさわる者として、地域活性化事業に関わるコンサルタントとして、まずはツーリングの拠点となっている道の駅どうしをフル活用するという点についてライダー視点寄りで記しておきたい。
①キャンプツーリングを楽しむライダーへの訴求
道志村にはバイクが乗り入れできるサイトを持つキャンプ場も多い。キャンプツーリングを趣味とするライダーに、キャンプ道具があること、多様な肉があること、細い薪があることなど、道の駅の売店に立ち寄ることのメリットを知ってもらう。
②ガッツリ系メニューをライダー向けに開発
道の駅どうしのレストラン「手づくりキッチン」には、ヘルメット置き場が設置されるなどすでにライダーへの配慮が垣間見えるが、メニューのパンチが弱いという印象がある。
特産品のクレソンなど地域の野菜を使用したメニューはそれはそれでよいが、ライダーにはガッツリ系を好む人も多い。特産品を使用しつつライダーに向けた食べ応えのあるメニューが欲しいところだ。
③ツーリングライダーに向けた村の魅力をPR
道志村で回遊・滞留してもらうためには、ライダーに魅力的な道・スポット・宿のPRが求められる。こうした情報をツーリングマップとしてまとめ、紙とWEBで制作することも有効であり、その発信拠点もやはり道の駅どうしが最適だろう。
バイクならではの機動性を考慮すれば、絶景や秘境といったスポットも観光資源として新たに発掘できるだろう。渓流釣りやトレッキングといった既存の観光資源との掛け合わせにもチャレンジしてほしい。
また意外と重要なのが宿の存在で、ソロツーリングを考慮したプランが用意されているか、駐め場に気づかいがあるかなども重要なポイントとなる。
ライダーはクルマのドライバー以上に、ツーリングでの線(移動の行程)を楽しんでいる。道志みちという走りどころの核を活かしながら、まずはその足を止めさせたり、1本裏道に誘導したりといった施策が動いていくことに期待したい。