日本デビューは14年式から
ハーレーダビッドソンはリア2輪のトライクを改造車ではなく、純正ノーマルでラインナップしていることをご存知でしょうか。
オートバイのように風を切って走る爽快感が味わえながら、3輪ならではの安定感により転倒のリスクがほとんどないトライク。日本向けには2014年式として『トライグライド ウルトラ』を13年秋からリリースしました。
バットウイングフェアリングを備えるフラッグシップ『エレクトラグライド・ウルトラクラシック』を3輪化し、電動のリバースシステムやステアリングダンパーなどを追加装備するのが特徴です。
二輪車のように車体を傾けて曲がることはできず、コーナリングなど向きを変えるときはステアリングで意識的に舵をとる必要があります。
ボク(筆者:青木タカオ)は2015年に、フロリダ半島をツーリングしました。デイトナ、オーランド、マイアミ、タンパ、半島と言えどもアメリカ最南端のキーウェストまで走ると約1600kmもの長旅だったことを覚えています。
このとき数人のグループで走り、さまざまなハーレーに乗り換えたのですが、『トライグライド ウルトラ』もあり、1日500km以上に及ぶロングライドでも疲れ知らずの高い快適性を存分に味わいました。
ライダーは右コーナーでは左のグリップを前方に押し、左コーナーではその逆に右グリップを前に押す感覚が求められ、これは慣れていくうちに自然と身につき、知らぬ間に体がそうやっています。
トライクならではの装備
ブレーキシステムはトライク専用に開発されたもので、リアブレーキはフロントと連動します。フロントの6ピストンキャリパーは独立した2つの油圧経路があり、外側4個のピストンはレバー操作で、中央2個のピストンはブレーキペダルを踏んだときに作動する仕組み。フットペダルを踏むと、後輪だけでなく前輪ブレーキも程良く効くのです。
駐車時には車体が動かないよう、クルマのようにパーキングブレーキシステムが備わっています。傾斜のある場所でも安心して停めておくこができ、操作もペダルを踏み込めばロックと解除が可能。バイクでそうするように、ギヤを1速に入れて前後に動かないようにしておくこともできます。
後輪の間のスペースはトランクとして利用され、容量125リットル、最大積載量約23kgと高い積載力。さらにトップケースも備わりますから、荷物を積む能力は二輪車とは比べものになりません。
由緒正しきハーレーの3輪
その歴史は古く、1932年から74年にかけては配達や商用、警察車両などに用いられることの多かった『Servi Car(サービカー)』を生産し続けました。ハーレーダビッドソンのスリーホイーラーは伝統があり、トライクに関するノウハウと技術力があるのです。
写真はハーレーダビッドソンミュージアム(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)に飾られている1971年のサービカー。ポリスバイクとして使われていた車輌です。エンジンはもちろん空冷Vツインですが、OHVエンジン登場後も採用せず45キュービックインチ=750ccのサイドバルブを一貫して搭載していことも大きな特徴です。
待望のロードグライド版スリーホイーラー
そんなトライクに、2023年のラインナップではニューモデルがデビューしました。シャークノーズフェアリングを備える『ロードグライド3』です。
デュアルヘッドライトによる2つ目のフロントマスクが個性的なロードグライド・シリーズ。高い人気を誇っていますが、ついにスリーホイーラーも選べるようになりました。
心臓部はやはり伝統の空冷45度Vツイン。ボア102×ストローク114.3mm、OHV4バルブ『ミルウォーキーエイト114』の排気量は1868ccもあり、大柄で重量が528kgもある車体をぐいぐい加速させます。
また、シャークノーズフェアリングはハンドルではなく、フレームマウントされるのもポイント。ハンドルを切ってもフロントマスクは正面を向いたままで、つまりステアリング機構にカウルが干渉しません。これが軽快なハンドリングを生み出します。
フェアリングのインナーパネルには6.5インチTFT液晶ディスプレイやスピーカーがあり、クルマのようなインフォテインメントシステムを搭載。スマートフォンとリンクし、ミュージックプレイヤーで音楽の再生やナビアプリを表示させることができ、ヘッドセットを使えば電話通話などにも対応します。アナログのイメージが先行するハーレーですが、最新式はかなり先進的です。
タイヤサイズはフロントが130/60B19、リヤはP215/45R18。カスタムカーのようなホイールを履き、迫力のある足まわりを演出していることも見逃せません。
ボディカラーはビビッドブラックをはじめ、グレーヘイズ、ブライトビリヤードブルーの全3色を設定。『トライグライド ウルトラ』のようなトップケースはなく、ホットロッドバガースタイルに仕上げられました。
普通四輪自動車MT免許で乗ることができ、大型二輪免許は不要。憧れのハーレー、しかも超弩級パフォーマンスクルーザーに、クルマの免許があればすぐに乗ることができるのです!
人とは違う個性的な愛車が欲しいという人はもちろん、押し引きなど取り回しが不安になったベテランライダーにもオススメと言えるでしょう。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。『ロードグライド3』については動画でも説明していますので、ぜひご覧ください!