カワサキモータースが「メグロK3」発表時に製作した大看板の寄贈を受けることになった栃木県の那須烏山(なすからすやま)市が、同市内の歴史資料館「山あげ会館」にモニュメントとしてこの看板を展示することを決定、同市観光協会の主催で5月28日に除幕式が開催された。以前に工場が存在したことで“メグロの聖地”としてマニアに愛される那須烏山市では、これを機にメグロブランドを活用した動きを活発化させていくという。

●文と写真:ヤングマシン編集部

烏山の女性は「嫁に行くならメグロの社員」!?

那須烏山市は、カワサキが1964年に吸収合併した「目黒製作所(メグロ)」の烏山工場が存在したことで知られる。最盛期には市民の3分の1が関与する基幹産業として地域を支え、現在も元メグロの下請け会社や元社員が設立した会社が存在するなど“烏山を栄えさせ、ものづくりの種を撒いた”存在がメグロなのだという。

当時の目黒製作所・烏山工場。跡地には別会社が存在するが、今もカワサキモータースに部品を納入している企業なのだという。

そのメグロブランドは2020年に「メグロK3」として復活したが、その際にカワサキが那須烏山市でPVを撮影したり、昨年11月には「メグロキャノンボール烏山」というメグロ愛好家のイベントが開催され、同市を“メグロの聖地”と呼称するなど、メグロと那須烏山の関係が注目される機会が増えていた。今回の大看板の贈呈は、そんな縁でカワサキ側から申し入れたものだという。

カワサキの広報画像の背景にも使われたこの大看板は、横4m✕縦3mというビッグサイズに手書きで描かれた迫力あふれるもの。この贈呈を非常に喜んだ那須烏山市では、様々な人が気軽に触れられるモニュメントとして展示することを決定。さらに同市の観光協会が旧メグロ車を20台も集め、熱心な告知で200人もの人が参加したことで、除幕式はカワサキ側の参席者も圧倒されるほどの熱気あふれるものとなった。

同じく当時の烏山工場内の写真。ズラリと並ぶエンジンはその造形や左側のキックペダル軸から、125ccのCAキャデット、または170ccのレンジャーDAだろうか。

式で挨拶した川俣純子市長からは「この地を懐かしみつつ楽しめる最大のモニュメントが完成し、メグロと烏山の歴史が再び始まったと思っている。これを一過性に終わらせず、モビリティリゾートもてぎのある茂木町やバイク神社として知られる安住神社がある高根沢町などとも広域連携を図り、ライダーの皆さんに楽しんでもらえる仕掛けを発信していきたい」とバイク乗りには嬉しい発言も。

さらに那須烏山市観光協会の金澤光司さんも「メグロブランドを使った商品企画やキャノンボールの毎年開催に加え、資料館の設置やメグロのレストアプロジェクトも始める予定。さらに安住神社と烏山をつなぐ県道64号線が快走路なので“メグロ街道”と名付けてツーリングルートに提案したい」などと抱負を述べる。つまり今、那須烏山は市が一丸となってメグロに傾倒しているのだ。

那須烏山市の川俣純子市長。ご自身では乗らないものの、祖父から受け継いだ戦前のモトグッツィなどを所有するなど、バイクやライダーに関する理解は深い。

除幕後、式典に参加した全員で記念撮影。メグロ大看板は立派な鉄枠付きのガラスケースに収められており、このあたりからも那須烏山市の思いの丈が伝わる。

当日は天候にも恵まれ、約20台のビンテージメグロが集合。戦前車から基本設計を受け継ぐハンドチェンジ車の1952年式Z3(上写真の手前)や、後のカワサキW1につながるK1系とは別設計の650ccツイン車・1955年のセニアT1(下)といった、メグロの中でも希少と言われる車両も参加した。

茨城県から参加の佐藤昌志さんは、昭和39年(1964年)に購入した500cc単気筒のメグロZ7を、なんと58年に渡って乗り続けている御年85歳(!)の超ベテランライダー。他にXJR1300とST1300パンヨーロピアンを所有し、すべて日常的に乗り回しているというから恐れ入る。「単発でドコドコと気持ちよくて、味があるわな。これだけは手放せない」と語るZ7は、故障のたびに自らの手で修理を繰り返し、今や何とも言えない凄みを放つ状態に(58年前のナンバープレートの質感たるや!)。「(途中でバイクを降りず)ずっと乗ってきたから、今もなんとか乗ってられんだわ。やめちゃうと乗れなくなる」。

2020年のメグロK3デビュー時にカワサキが作成した大看板は、ラルフローレンやネイバーフットなどの仕事も手掛ける「ナッツアートワークス」の手によるもの。当時あった看板のレプリカなどではなく、メグロが現役だった時代の雰囲気を醸し出しつつ、カワサキのヘリテイジをアピールするため新たにデザインされたものだ。

メグロだらけのライダースカフェが既に存在!

そのツーリングルートにぜひ組み込んで! と各方面が激推しするのが、山あげ会館から約20分ほどの那珂川町にある「BATOWL Cafe(バトールカフェ)。店内には1954年式のZ5を筆頭に4台のビンテージメグロと、その直系のカワサキW1、さらに現行モデルのK3まで展示されるという、間違いなく日本で最もメグロ濃度の高いライダースカフェだ。

馬頭(ばとう)温泉という温泉街の中にあり、近所にフクロウを祀った神社があることが店名の由来だそうで、ビンテージメグロはオーナーの菊地月香さんの父上が那須烏山にあるお寺の住職(メグロ愛好家として知られ、カワサキのPVにも登場)から譲り受けたもの。カフェの利用者なら利用可能というガレージが隣接されるのも嬉しい。メグロファンのみならず、栃木ツーリングの“聖地”がもうひとつ増えたと言えそうだ。

バリアフリー温泉施設の「なかが和苑」に隣接するBATOWL Cafe。2021年オープンとのことで真新しい店内にバイクが並び、メグログッズも展示される。人気メニューはハンバーグ入り焼きカレーにクリームソーダ。季節ごとにオリジナルドリンクも用意されるという。

Z5(1953年式・500cc。取材時は不在)、S5ジュニア(1959年式・250cc)、S7ジュニア(1960年式・250cc)、S8ジュニア(1962年式・250cc)、カワサキW1(1966年式・650cc)そして現行型のK3が展示される。左がオーナーの菊地月香さんで、右はスタッフの梶 和磨さん。

山あげ会館
栃木県那須烏山市金井2-5-26

TEL:0287-84-1977

9:00〜16:00・火曜定休

BATOWL Cafe
栃木県那須郡那珂川町小口1728(なかが和苑敷地内)

TEL:0287-83-8106

11:00〜16:00(L.O 15:30)・月/火定休(祝日営業)

※本記事は“ヤングマシン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。

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