カブ主女子が急増中!

 昨今は“バイク女子”はもちろんのこと、スーパーカブに乗る“カブ主(ぬし)”女子も増えています。スーパーカブといえば、昭和を代表する“働く乗り物”でありましたが、カノジョたちからすると「カワイイ」だったり「オシャレ」だったり「映える」ようです。


 新海誠監督のアニメーション映画『天気の子』(2019年7月公開)にもスーパーカブが登場。はつらつとしたキャラクターの夏美(なつみ)が、主人公の森嶋帆高(もりしま ほだか)を乗せ街中を駆け巡ったピンクのスーパーカブをホンダは再現し、2020年7月に『スーパーカブ50 天気の子ver.』『スーパーカブ110 天気の子ver.』をそれぞれ受注期間限定で発売。いやはや、アニメの影響は計り知れませんね。

バイク×女子高生の物語『スーパーカブ』(原作:トネ・コーケン)もテレビアニメ化され人気に。主人公は小熊(こぐま)という女子高生。父親を亡くし母親に逃げられ、アパートで一人暮らしをしていましたが、自転車で高校に向かう途中、1台の原付スクーターに追い抜かれたことで、バイクに興味を持ちます。

スーパーカブ (角川コミックス・エース)

▲アニメ化され大人気中の「スーパーカブ」 (角川コミックス・エース)。

「何かが変わるのかな?」

 そう思った小熊は、奨学金をやりくりして貯めたお金で激安のスーパーカブを購入。物語が始まります。

 主人公・小熊役を演じる声優の夜道雪さんは、大型二輪免許も所有するリアルライダーで、バイク乗りたちからも大人気。お仕事をご一緒させていただく機会もあり、現場ではスタッフひとりずつに気遣いをしてくださる、見たまんまとても素敵な人です。

 ホンダの電動3輪バイク『GYRO e:(ジャイロ イー)』の報道向け試乗会ではMCとしてご活躍。カメラを向けると、ボクに気付いて気さくに手を振ってくださいました。オジサン、感激ッス!

初代から女子ウケも狙っていた!

 ハナシはだいぶ逸れましたが、スーパーカブは1957年の初代発売時から女性も顧客ターゲットにしていました。本田宗一郎氏は「スカート姿の女性でも乗り降りしやすいカタチとサイズ」にこだわり、低床バックボーン式フレームやチェンジ操作の簡単な自動遠心クラッチを採用します。


 その成功は日本にとどまらず、海を越えていくのは皆さんもご存知の通り。鋪装されていない道路や悪路も走破できることから、東南アジアや南米、アフリカなどで暮らしの足として爆発的に普及していくのでした。

 世界中で愛され続け、人間でいえば還暦を目前にした2017年10月に累計生産台数1億台突破という偉業を成し遂げ、現在では世界15カ所16拠点で生産が行われ、販売される国と地域は160以上にものぼります。


 ちなみに、ここで『F型カブ』(1952年発売、試乗車は55年製)、『スーパーカブC100』(1958年)、『スポーツカブC110』(1960年)などの試乗機会があったことを順次レポートしていますが、これらはすべてホンダコレクションホールおよびホンダモーターサイクルジャパンのご協力のもと報道向け試乗会が開催されたときのもので、カブシリーズ累計生産台数1億台突破を迎えようとしていた2017年5月のこと。

 珠玉のカブたちに乗せていただき、改めて関係各位に感謝申し上げます。当時、専門誌やWEBメディアにて記事にさせていただきましたが、こうして再び「ForR」でも紹介させていただくことができました。

世界へ羽ばたくカブ

 さて、今回ご紹介する『ポートカブC240』(1962年/昭和37年)は、初代『スーパーカブC100』の発売から4年後、欧州市場などへも輸出するためにつくられた海外市場も視野に入れたモデルです。PORT(ポート)=“港”のネーミングには「世界中の港へ」という想いが込められています。
 海外市場でも受け入れられるように、グローバルモデル戦略として取られたのはまずより低価格とすることでした。日本国内でも発売され、価格は『スーパーカブC100』が5万5000円のところ『ポートカブC240』は4万3000円に抑え、1万2000円もの差をつけました。


 レッグシールドを簡素化したのをはじめ、当時、道交法で装着が義務付けられていなかったウインカーやテールランプを省略。テールエンドには反射板のみ備わっています。



 スプリングのみのフロントフォークやシンプルなパイプハンドル、2速しかないミッションを装備。バッテリーは搭載していません。

リトルカブの原点ココにあり!

 注目は前後ホイールを『スーパーカブC100』の17インチから15インチに小径化していることです。取り回しの良さや足着き性を向上させ、女性にもより親しみやすくしています。
 女性向けに小径ホイールを採用したカブシリーズといえば、1997年8月に発売スタートされた『リトルカブ』を思い出しますが、ホンダはそれより35年も前に同じコンセプトのモデルをすでに販売していたのでした。

ホンダ、リトルカブ(1997年)

▲前後ホイールを17→14インチにして乗り降りしやすく、シート高も下げたホンダ『リトルカブ』(1997年)。

 リトルカブは前後14インチホイールを履き、低シート高(スーパーカブ735mm→705mm)を実現。パンク防止に優れた効果を発揮する「TUFFUP(タフアップ)チューブ」を採用したほか、ファッショナブルで明るい車体色も目をひきます。

ミッション3→2速化、キックペダルは左

 ツインリンクもてぎ内「ホンダコレクションホール」にて動態保存されている車両(1962年式)に乗せていただきましたが、右側通行の諸外国を考慮したのでしょう、キックスタートペダルがエンジン右側から左側に位置変更されていることにまず気づきます。
 小径ホイール採用の影響は大きく、車体がひとまわり小さく感じ、足つき性がますます良い。メーターはポップなデザインで可愛らしく、0〜20km/hまではローギヤで、それ以上はハイギヤを使いましょうと目安として色分けされています。
 灯火器類が一切ないため、パイプハンドルにはスイッチボックスなどがなくスッキリ。イグニッションキーはヘッドライトの左に配置され、電装もシンプルであることが一目瞭然です。


 空冷4ストロークOHV単気筒エンジンはボア・ストローク:40mm×39mm=排気量49ccをそのままに、最高出力4.5PS/9500rpmを2.3PS/5700rpmへ下げられ、走りは穏やか。ただし車体重量は54kgしかなく、30km/h以下で走行するかぎりではパワー不足はなく、軽快にスイスイ走ります。リミッター機構が組み込まれ、最高速は50km/hにセーブされています。

そこには“ゆるふわ”な世界があった

 便利で使い勝手が良く、走っていると気持ちよく楽しい! う〜ん、女性が乗りたくなるのもナットクです。『ポートカブC240』は昭和37年の発売当時はセールスヒットに至りませんでしたが、カブ主女子急増の現代を考えると、時代を先取りしすぎたのかもしれません。

 前略、本田宗一郎様。60年前に発売されました「ポートカブ」のコンセプトは現代にもしっかりと受け継がれ、いま、スーパーカブシリーズは女性たちにもウケまくっています!

 さぁ、今回もたいへん貴重な走行動画で締めくくりましょう。最後までお付き合い、ありがとうございました。次回はいよいよ元祖ハンターカブといえる『90TRAIL CT200』(1964年/昭和39年)が登場です。チャンネル登録もどうぞお忘れなく!!



■珠玉の歴代カブシリーズ試乗、お見逃しなく!!
「原動機付き自転車」のルーツ、昭和27年製『ホンダF型カブ』で走ってみた!

カブ主垂涎の国宝級! 初代スーパーカブC100で昭和33年の風を感じた!!

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