カワサキモータースは、9/3にモビリティリゾートもてぎで開催された4輪レース・スーパー耐久シリーズ第5戦の会場で、バイク用水素エンジンを搭載した研究用オフロード4輪車のデモ走行を行った。以前からトヨタ自動車の働きかけに応じて水素エンジンの研究に取り組んでいるカワサキだが、その成果を見せたのは今回が初めてのこととなる。

●文:ヤングマシン編集部

4社タッグの“オールジャパン”水素エンジンの可能性も!?

このエンジンはニンジャH2用の998cc並列4気筒+スーパーチャージドエンジンをベースに、水素燃料をシリンダー内に直接噴射する直噴仕様としたもの。カワサキは2021年10月に「水素エンジンの実現に向けて研究中」と銘打ったH2ベースのガソリン直噴ユニットを公開しており、これを元に開発を進めたものだろう。

研究開発の過程では異常燃焼の制御や高回転域の燃料供給、各エンジン部材の高温化などの課題が発生し、さらに水素を扱うための作業安全性の確保も必要だったが、トヨタが音頭を取って進めている「水素仲間」の企業や団体からの技術支援や部品供給などで乗り越えてきたという。ガソリンのような液体ではなく、水素という“気体”を噴射するための燃料インジェクターなどは、トヨタの「水素カローラ」で開発された技術を転用しているはずだ。

また、このエンジンは「モーターサイクル用水素燃料直噴エンジン」と謳われていることから、バイク用なのは間違いないのだが、今回のデモランではオフロード4輪車に搭載されていたのは、大きなスペースが必要となる水素用燃料タンクや、それに付随する燃料供給関係を2輪に収めるための開発時間が足りなかったためと推測される。

カワサキモータースでは、今後この研究車を、スズキ、デンソー、本田技研工業、ヤマハ発動機とともに取り組む「二輪車等小型モビリティ用水素燃料エンジン」の研究素材の一つとして活用していくという。つまりは日本の2輪メーカー全社が手を組んだ、オールジャパンのバイク用水素エンジンが生まれる可能性も含んでいるということだ。

今回、自社のプレスリリースで“様々な企業と協力して、内燃機関の魅力と水素の特性を組み合わせた水素燃料エンジンならではの新しい価値の創造を目指す”と述べたカワサキは、先の鈴鹿8耐でもハイブリッドと電動バイクのプロトタイプをデモランさせるなど、2輪のカーボンニュートラルに世界で最も積極的なメーカーと言っていい。走る楽しさを決して忘れず、さらに環境対応に挑むカワサキの取り組みに今後も注目していきたい。

カワサキの2輪用水素エンジン搭載車(人物左は川崎重工の橋本康彦社長で、右はトヨタで水素エンジンの開発を行うGAZOOレーシングカンパニーの佐藤恒治プレジデント)。車両は主に北米で販売されるカワサキのオフロード4輪がベースだが、車体にはカワサキに加えホンダ、ヤマハ、スズキの名も刻まれるのが新鮮。もてぎで行われたデモランでは、トヨタの豊田章男社長が運転するなどのサプライズも。

「水素エンジンの実現に向けて研究中」という名目で2021年10月に公開された、ニンジャH2ベースのガソリン直噴ユニット。通常のポート噴射インジェクター(赤矢印)に加え、シリンダーにも直噴用インジェクターが装備されていた(青矢印)。

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