世界中で愛される唯一無二の乗り物 

 世界中で1億台も売れた乗り物は、他になにがあるのでしょうか。いまから5年前の2017年(足かけ59年間)に世界生産累計1億台を達成。その後も着々と販売台数を増やし、コロナ禍でバイク需要が高まる現在ではなおさら人気に。そう、ホンダ『スーパーカブ』です!

2017年にスーパーカブシリーズは生産累計台数1億台を達成。

▲2017年にスーパーカブシリーズは生産累計台数1億台を達成。

 初代『スーパーカブC100』が登場したのは1958年(昭和33年)のこと。簡単に運転できる操作性を追求し、自動遠心クラッチを採用。乗り降りのしやすさを重視し、低床式バックボーンフレームを用いたステップスルーの新レイアウトが採り入れられました。

初代スーパーカブである1958年発売のC100。

▲初代スーパーカブである1958年発売のC100。

 舗装率がまだ高くない日本の道路事情に合わせ、小型軽量なボトムリンク式のフロントサスペンション、そして大径17インチタイヤを採用。ホンダ創業者の本田宗一郎氏は自身でテスト走行を繰り返し、ぬかるんだ道を走っては泥跳ねの具合までもをチェックしたと言われています。

 1958年(昭和33年)8月に発売されると、その年のうちに約2万4000台も売れる驚異的な大ヒット。1960年の販売台数は約56万4000台にも達しました。

ホンダCT125ハンターカブ

▲大人気のホンダCT125ハンターカブ。

 2022年のいま、現行ラインナップを見ると『スーパーカブC125』をはじめ『CT125・ハンターカブ』『スーパーカブ110』『スーパーカブ110プロ』『クロスカブ110』『スーパーカブ50』『スーパーカブ50プロ』『クロスカブ50』と、カブシリーズが強力な布陣を敷いています。ホンダ小排気量モデルの中心的存在と言っても過言ではないでしょう。

60年代にもう偉業達成

 1966年(昭和41年)、躍進に拍車をかけたのが、今回紹介する『スーパーカブC50』です。高性能で高品質、使い勝手の向上によって、需要をさらに拡大させ、67年4月には二輪車の単機種としては世界初となる生産累計500万台を達成する偉業を成し遂げました。

ホンダ『スーパーカブC50』(1966年式)

カリビアンブルーの車体が眩しい1966年式ホンダ・スーパーカブC50。

『スーパーカブC50』の新車価格は5万7000円、セル付き6万4000円。公務員の初任給が大卒2万1600円、高卒1万6100円の時代で、物価は以下の通りでした。

■1966年(昭和41年)の物価
牛乳20円、かけそば50円、ラーメン70円、喫茶店(コーヒー)80円
銭湯28円、週刊誌50円、新聞購読料580円、映画館:400円

 ホンダ・スーパーカブシリーズは初代『スーパーカブC100』から売れまくりで、1958年(昭和33年)に発売を開始して以来、8年間で生産累計台数400万台を突破。これは空前の大ヒットと呼べるものでした。

鈴鹿製作所にて二輪生産1000万台達成時。スーパーカブに またがる本田宗一郎氏。

▲鈴鹿製作所にて二輪生産1000万台達成時。スーパーカブに またがる本田宗一郎氏。

エンジンは高出力、静粛性と燃費に優れた4ストローク。車体は女性も乗り降りしやすいカタチとサイズにとこだわったスーパーカブ。

▲エンジンは高出力で、静粛性と燃費に優れた4ストローク。車体は女性も乗り降りしやすいカタチとサイズにこだわったスーパーカブ。写真は1958年式、初代C100のOHVエンジン。

4ストにこだわってよかった!

 安さが求められる原付バイクながら、クリーンかつ低燃費でなければならないと、2ストロークではなくあえてコストの高い4ストロークエンジンを採用。スカート姿でも乗り降りしやすいように、低床バックボーン式フレームで車体を構成しました。
 

 変速時は左手のレバーでクラッチ、左足のペダルでギアチェンジと複雑な操作をしなければならないモーターサイクルですが、より簡単に手軽にと、自動遠心クラッチを新開発し搭載。使い勝手の良さや丈夫さが支持され、たちまち人気となったのです。

まずはC65が先にOHC化

 ホンダはさらなる動力性能、耐久性の向上、メンテナンスフリーを追求し、OHCの新型エンジンを新たに開発しました。まずは1964年の『スーパーカブC65』に搭載します。 品質に自信があり、信頼を確固たるものにしたいホンダは、当時としては異例中の異例、世界に類を見ない「全車2年間5万キロ」という長期保証制度を導入。そして1966年、満を持して新型OHCエンジンを50と90にも採用します!

スーパーカブ第2世代へ

 初代『スーパーカブC100』(1958年)と『スーパーカブC50』(1966年)を見比べてみると、C100のテイストを受け継ぎながら車体のデザインが刷新されていることがわかります。ウインカーやテールライトといった灯火器類が大型化され、安全性向上も図られました。

ホンダ『スーパーカブC50』(1966年)

▲ホンダ『スーパーカブC50』(1966年)

 ウインカーレンズはスポーツカー『S600』と同一形状で、先が尖っていることからマニアからは「“ホニャララ”カブ」とニックネームが付けられています。

1966年のホンダスーパーカブC50

▲ウインカーに注目! その形状からニックネームが付けられました。

 さて、ココで問題! “ホニャララ”に入るのは、次のうちどれでしょうか。答えは最後にございますので、お楽しみに。

1.新幹線
2.富士山
3.おっぱい
4.ミサイル

今回も貴重な車輌に乗った!!

 それはさておき、ココではホンダコレクションホールで動態保存されている貴重なカブシリーズの歴代モデルを1952年(昭和27年)発売のF型カブから順に乗って紹介しているのでした。

ホンダコレクションホールで動態保存されている歴代カブシリーズに試乗。F型から順に乗らせていただきました!

ホンダコレクションホールで動態保存されている歴代カブシリーズに試乗。F型から順に乗らせていただきました!

 5回目となる今回も1966年の『スーパーカブC50』、乗せていただきました!

ホンダコレクションホールで動態保存されている『スーパーカブC50』(1966年)に試乗

▲ホンダコレクションホールで動態保存されている『スーパーカブC50』(1966年)に試乗させていただきました。

 じつに半世紀、50年以上も前につくられたというのに、ボクがよく知るスーパーカブそのものであり、OHV時代に比べると音は静かですし、なめらかにエンジンが回って、3段ミッションが入るときもスムーズ。

 それでいて、トコトコと穏やかな持ち味は変わりません。なつかしい乗り味で、ただ走っているだけで心が和みます。

OHC化により「絶対に壊れない」と神話へ!!

 早い段階でOHC化した意味は大きい。OHVはこまめにメンテナンスすれば耐久性も高く丈夫ですが、所有者の全員が全員定期メンテナンスに出すとはかぎりません。

1966年式ホンダ『スーパーカブC50』

▲ボア・ストローク:39×41.4mmで排気量49ccのSOHCエンジン。

 海外へ輸出したときも定期的に点検・整備を続けてくれるか不安。調整なしに乗り続けると、OHVではプッシュロッドの打音が出て、そのタペット音が気になります。また、オイルポンプのない「ハネカケ式」だったこともあり、オイルの量を適正に保つことも欠かせません。

 従来の車体を大幅に改造せずとも組み替えられる条件のもと、OHCエンジンはつくられました。オーバーヘッドカムになれば高さが増すところ、カムシャフトを低く設計。

 できるだけ下、エンジンの底にオイルポンプの吸い口を設置し、エンジン内部に確実に潤滑油を回す。100ccも残っていれば、充分にオイルポンプが機能し、「絶対に壊れない」と評判はさらに高まったのでした。

ホンダ『スーパーカブC50』1966年式

▲OHCの新エンジンを搭載して初のフルモデルチェンジとなった1966年式。

 世界最小の量産OHCエンジンは4.8PSを10,000回転で発揮。ホンダの歴史、いや世界のバイク史に残る最高傑作となったわけです。敬意を払ってボクは運転し、試乗を終えると「ありがとうございました」と、その小さく頼もしい車体に頭を下げるのでした。

 さぁ、今回も最後は動画で音や走行シーンをご覧ください。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 あっ、「“ホニャララ”カブ」の答えを発表します! 正解は「3.おっぱい」で、丸みを帯びたウインカーレンズの先が尖っていることから、マニアからは「おっぱいカブ」と呼ばれ、親しまれているのでした。面白いニックネームですよね。

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