前編に続いて、3月18日に開催されたバイカーズ議員連盟総会での討議について紹介する。駐車問題、高速料金問題、リターンライダーの事故増加問題などがテーマとなっている。
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国会でも発言されたバイクの駐車場問題
バイクの駐車問題については、議連で幹事長を務める横沢高徳(たかのり)参議院議員から具体的な報告と提案があった。横沢議員は総会に先立って参議院予算委員会でバイクの駐車問題について発言し、欧州や台湾など車道と歩道の間に駐車スペースがあるという海外の事例も交えて、参考にすべきではないかと説明した。

▲幹線道路から直接進入・駐車できる道路沿いの自動二輪駐車場。こうした駐車施設が求められている(神戸市内にて撮影)
なお、横沢議員は石破茂首相にも質問をして「鋭意検討していく」という回答を引き出している。ちなみに、石破首相は地元鳥取県の一大バイクイベント「第14回隼駅まつり(2024年)」に来場し、挨拶を行ったことでも知られている。

▲元モトクロス国際A級ライダーの横沢高徳(たかのり)参議院議員
国土交通省 都市局からの説明「3つの対応で推進」
国土交通省都市局からは自動二輪駐車場確保への取り組みと整備状況について、また新基準原付への駐車場の対応(前編参照)について説明が行われた。なお駐車場の整備については最終的には地方公共団体と民間事業者が行うものなので、国交省ができることの中で次の3つが説明された。
①駐車場法に基づく対応
駐車場整備地区の決定や整備計画の策定など、総合的かつ計画的な駐車場整備を推進する。2006年に駐車場法を改正し自動二輪車を含めたのもこうした対応のうちだ。
また、地方公共団体に対して、大規模商業施設などに自動二輪駐車場の設置を義務付ける附置義務条例の制定も推進しているが、これも地方公共団体次第であって現在まで全国で11の団体(※)にとどまっている。
※塩釜市、横浜市、川崎市、大阪市、さいたま市、川越市、京都市、神戸市、福岡市、那覇市、千葉市
②地方公共団体への技術的助言
駅周辺に設置されることが多い自転車等駐車場(自転車のほか、通常は原付一種まで受け入れ)や自動車駐車場への自動二輪車の受け入れを要請したり、地方公共団体の担当者が集まる駐車場担当者会議でモデルケースを周知する、駐車場施策のガイドラインを発出するなど働きかけを行っている。
③予算による支援
自転車等駐車場や自動車駐車場の整備・改良に対して社会資本整備総合交付金などによる支援を行っている(規模の大きなものが対象で、駐車枠・白線の引き直しなどには適用できない)。
こうした対応を行っているが、前述したとおり最終的には各地方公共団体や民間事業者が判断することだ。2006年の駐車場法改正以降、2022年度末までに自動二輪車駐車場の併用台数は1.9倍となり、自転車等駐車場での受け入れを含めて保有1000台あたり50.7台(自動車は70.9台)の駐車場が確保されている状況だ。
高速料金問題は車種区分の分離へ検討中
二輪業界は「バイクの高速料金が軽自動車と同じというのはおかしい、公平ではない」という観点からバイクの高速料金の見直しや軽自動車との車種区分の分離を求めている。現在、バイクの料金は「軽自動車等」区分に含まれ、普通車料金の0.8(80%)とされているが、軽自動車等からバイクを分離・独立した区分とし、「軽自動車の5/8(37.5%)=普通車の半額」の料金にすることを目標としている。
●最終目標は普通車の半額
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普通車 |
二輪車 |
係数(現行) |
1.0 |
0.8(軽自動車等) |
二輪車定率割引 |
【一走行の距離80km超で軽自動車の37.5%割引 】 |
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最終目標 |
【二輪車料金は軽自動車の5/8、普通車の半額】 |
この料率のシミュレーションともなっているのが、2022年から行われている「二輪車定率割引」(軽自動車料金の37.5%割引)で、開始当初は一回の走行で100km以上という条件だったが、昨年からは80km以上に短縮され、2025年も4月1日から11月30日まで同様の条件で行われる。
国土交通省 道路局からの説明「車種区分の見直しを検討中」
バイクの高速料金・車種区分の分離問題については、国土交通省道路局から説明が行われた。車種区分見直しの検討は国土幹線道路部会で2021年から検討されており、車種ごとの料金比率には3つの考え方(原因者負担・占有者負担・受益者負担)があって、占有者負担では「車両の長さ÷速度」という計算式が使われている。
しかし、バイクについては、1988年(昭和63年)から“バイクは車より車間距離を広く取る傾向にある”という考え方により、車両の長さに前後50cmを加えて計算されてきた。つまり車体の小さなバイクでも「道路上の専有空間は大きいじゃないか」という理屈だ。

▲バイクの前後50cmを車両長に加えて占有者負担の算定に用いるというのは昭和63年検討時の考え方。ABSも義務化されたいま見直しの機会となりそうだ ※配布資料より引用
しかし近年のバイクはABSの義務化やCBSなどによりブレーキ時の安全性も高まっていることから、この50cmを取っ払ってもよいのではないかという議論が行われている。こうした車両の安全性能の向上とETC利用率の向上により、システム改修は必要となるものの、現状の5車種区分以上の判別も可能ではないかという。
今後は国土幹線道路部会において二輪・四輪業界など関係団体からのヒアリングを経て当面の車種区分を決定するほか、将来の車種区分のあり方を検討するとのこと。

▲国土交通省 道路局高速道路課企画官の有田祐介さん
さて、二輪車は軽自動車と同じ車種区分なので、高速道路の利用台数や利用率といったデータがほとんど取られてこなかった。あからさまな不公平を正すのが政治の役割だが、その政治を後押しするのは数というのもまた正論だ。
ETCが普及したいま、二輪車定率割引やツーリングプランの利用者数向上といったデータが車種区分の分離を後押しすることは間違いない。ETC車載機の装着・登録が必要となるが、バイクで高速道路に乗る際には定率割引とツーリングプランをぜひ検討してほしい。
●二輪車定率割引2025申し込みサイト
●ツーリングプラン2025申し込みサイト
リターンライダーの事故増加問題

▲2024年中の東京都内の二輪車交通死亡事故の年代別グラフを見ると、20代と50代が多く、過去5年平均だと50代が多いことがわかる ※警視庁サイトより引用
ここ数年の課題として、リターンライダーの事故増加も議論された。YouTube「マッスルバイクちゃんねる」のゆっちさんこと一般社団法人二輪車安全指導協会代表理事の酒井佑弥さんが、同協会の活動内容と新設されたバイクの練習場「マッスルバイクファーム」について説明を行った。
酒井さんは二輪専門の教習所でインストラクターとして務めたのちユーチューバーとして独立し「マッスルバイクちゃんねる」を開設。17万人超(2024年8月現在)の登録者に速く走るための技術ではなく公道を安全に走るための技術や知識を発信している。

▲事故類型別に見ると単独事故が最も多い。過去5年を見ても同様だ ※警視庁サイトより引用
また、リターンライダーの事故増加については、若いころの感覚でスロットルを回しすぎるなど具体的な操作ミスのほか、練習する場所がないことも要因のひとつと見ており、ネット上だけではリアルな交通社会での安全運転普及活動には限界がある、直接的な指導をしたいという考えのもと、2024年6月に二輪車安全指導協会を立ち上げ、千葉県千葉市で二輪車専用のトレーニング複合施設「マッスルバイクファーム」を開設した。

▲マッスルバイクちゃんねるのゆっちさんこと、一般社団法人二輪車安全指導協会代表理事の酒井佑弥さん
同協会では、指導員の減少・高齢化という課題を受けて、若手指導員の育成にも取り組んでいくとのこと。指導員の育成は残留三ない運動の撤廃にもつながっていく。酒井さんら民間主導での指導員育成には大いに期待したい。
参加議員からは様々な質問や意見
参加議員らによる質疑応答の内容からピックアップしてお伝えする。※答は担当者からの回答
質:占有者負担の算定に用いる車両長に関して「バイクは車間距離を取りがち」ということだったが、それはクルマや人によってまちまちだし、グループ走行なら千鳥走行になって逆に車間がゼロに近づく。
また、道路損傷に関しての原因者負担であれば、バイクが軽自動車と同じというのはおかしいし、ETCも導入されて把握しやすくなったので、高速道路料金の見直しに期待している。
答:今後、二輪・四輪団体とヒアリングをしたうえで最新のデータを算定して進めたい(国交省)
質:高速道路の割引もいいが、しまなみ海道のように地域の一般道を走るバイクツーリズムにも目を向けて、自転車のようにツーリングロードの整備とか検索サイトを作るのはどうか。
答:すでにバイク専用のアプリも出ているしツーリング雑誌もあるが、バイクツーリズムをどう進めていくかは今後のテーマとして取り組みたい(小熊慎司議員)
質:二輪免許の教習時に路上教習がないことが、公道走行の怖さや不安につながり、ペーパーライダー化の要因になっているのではないか。卒業時に案内があって教習コース以外を走れるようなサービスが選択できたりすると緩和できるのではないか
答:教習所は教習以外をやってはいけないわけではなく、免許を取った後の練習などを事業としてやられているケースもある。民間のやることなので強制はできないがそういう声があったことは伝えたい(警察庁)
以上、バイカーズ議員連盟総会の様子をかいつまんでお伝えした。政治を動かすのはいつだって民意であり、減少傾向とはいえ、国内にはまだ1,000万台以上の保有台数があるのだから、ライダーやバイク利用者の声を集める仕組みづくりも求められているのではないだろうか。今後の議員連盟の活動に期待したい。