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ギア抜けは頻発すると癖になって症状は悪化していく……
信号が青になって勢い勇んでスタート、加速してギアチェンジしているときにギアとギアの間の幻のニュートラルに入って、エンジンだけ吹け上がって急減速!なんて経験はライダー誰しもがしたことがあると思います。
あわててクラッチを切って、ギアを入れ直すと「ガチョン!」と異音とショックがしてやっと駆動力が復活して再び加速……というのがその後の一連の流れとなりますが、これを路上でやるとエンジンが一気に吹け上がって周囲に爆音が轟くし、ぜんぜん加速しないし、結構恥ずかしい思いをするものです。
この症状、一般的には「ギア抜け」と呼ばれるものですが、実はあまりミッションに良いことではありません。頻発するようだと深刻なトラブルに発展している可能性もあります。
ほとんどのバイクに採用されているリターン式ミッションは、シフトペダルの動きがシフトドラムに伝わり、そこからシフトフォークと呼ばれる部品が左右に動いてギアをスライドさせて変速を行っています。
ギア抜けは主に変速時にギアとギアがしっかり噛み合っていない状態でエンジンの駆動力がかかってしまうと発生しやすい。
ギア抜けが発生する主な要因は操作ミスによるもの
ギア抜けの主要因は加速時にシフト操作がラフになって、ペダルを十分に動かし切れていなかったり、クラッチがしっかり切れていない状態で無理にシフトすることによるものです。ギアとギアが十分に噛み合わずに空転してしまうのです。
ギアとギアが噛み合わないままクラッチの動力を受けるメインシャフトが空転し、ドライブスプロケットが固定されるカウンターシャフトに動力が伝わらないのです。
これを繰り返すと、ギアとギアが噛み合うための「ドッグ」と呼ばれる突起のエッジが摩耗して丸まってしまったり、シフトフォークの先端やシフトドラムの溝などが摩耗して、駆動力がかかったギアを抑えきれなくなり、特定のギアで慢性的なギア抜けが発生し、加速できなくなってしまいます。
オレンジの丸で印を付けた部分に摩耗が発生しやすい。シフトドラムの溝が崩れると、シフトが重くなったり、シフトそのものが入らなくなることもあります。
丸印の部分がギアのドッグと呼ばれる突起です。写真の状態は完全に角が丸まってしまっており、この状態だと慢性的なギア抜け状態に陥ることになります。
ミッション機構はクランクケース内に組み込まれているため、修理するにはほとんどの場合、エンジン全バラ作業となります。工賃も部品代も高額になりがちなので、そのバイクを修理せずに諦める廃車要因にもなり得ます。
ギア抜けによってダメージを受けるギアは特に2速が多い。
1速でスタートしてニュートラルをひとつ挟むのでシフトストロークが大きいし、加速時に最もトルクをかけることが多いからです。
ギア抜けの予防は確実なシフト動作を行うことに尽きる
そんなギア抜けを防ぐには「シフト操作を確実にする」ことを心がけるのが最善です。特に公道では加速よりもシフトの確実性を重視して、しっかりクラッチを切って、シフトペダルを上げ下げするようにしましょう。
意外と多い!自分の体型にシフトペダルの位置が合っていない問題
バイクのシフトペダルは上下に位置を変更して、ライダーの体型に合わせることができます。バイクショップでバイクを購入した場合は、納車時にメカニックに調整してもらうのが、納車時の儀式ですが、通販や個人売買の場合は自分で調整しない限り、ペダル位置はそのままです。
ギア抜けが頻発するのは意外とシフトペダルの高さが合っていないことが原因かもしれない。
ペダル位置が高すぎればシフト操作の際に足首の曲がりが急になるし、低すぎればコーナーリング時にペダルやブーツのつま先を路面に擦りやすくなります。
最適なペダル位置を見極めて調整を行うのは、やはり信頼のおけるプロメカニックに依頼するのが最も安心です。
シフトペダルのリンク機構の摩耗&ガタがシフトミスの要因になることも
特に過走行車や旧いバイクはシフトペダルのリンク機構のピロボールなどが摩耗してガタが発生することがあります。このガタがシフトミスの原因となることもありますので、気をつけたい。
と、このようにシフトペダルひとつで、深刻なトラブルの要因になることも。
最近のバイクのエンジンは丈夫なので、オイル交換など定期メンテをだけで10万キロを走るのは珍しいことではありません。しかし、ヘッド周りやシリンダー、ピストンなどいわゆる腰上が元気でもミッショントラブルがあればエンジン全バラオーバーホールとなりかねません。くれぐれもミッションにやさしいライディングを心がけたいものです。