「キツネなんてちょすな!」
何度か北海道ツーリングを経験して、とある土産屋の店主が怒ったように言った。
「ちょすな?」ってどういう意味だ?
「ちょす」は北海道弁で「触る」と言う意味。「ちょすな!」は「触るな!」と言うこと。
ではなぜ?「ちょす」のはイケナイのか?
一番の大きな理由は「エキノコックス」と言う寄生虫が野生のキタキツネには必ずいると言うこと。このエキノコックスの卵(直径0.03~0.035 mm)が人間の身体に入ると、幼虫となって体内に寄生し、発熱・倦怠感・肝機能障害などで日常生活が送れなくなり、最悪死に至る可能性がある。しかも発症するまで5年以上の時間差があり、人間にとっては非常に厄介な存在なのだ。
ただし、生まれたばかりのキタキツネを生んですぐに母キツネから離し、隔離するとエキノコックスには侵されないと言う事実もある。
次の理由として、キタキツネはかなり頭が良い。
野生のキタキツネは森の中でネズミやカエル、虫、木の実、果実などを食べて暮らしている。
ちなみに道民はキタキツネを見てもなんとも思わない(ネコが道路を歩いている方が珍しい)。
が、観光客は違う。「かわいい~♡」とキタキツネに対して手持ちのおやつなどを「エサやり」してしまうのだ。それに味を占めたキタキツネは「道路にいるとエサに有りつける」と学習するのだ。
キタキツネにはエサをやらない。ちょさない。そのことは私が北海道に移住してから必ず守るようにしている。
ツーリング中、キタキツネが飛び出してきたら、日中や視界の良い夕暮れは減速・ハンドル操作で回避することが出来る。しかし、突然の雨や峠道の濃霧で飛び出してきたらパニックになる事も。
落ち着いて回避することができた後は、絶対に「エサやり」をしないことだ。キタキツネはイヌ科の動物なので、噛まないとも限らないのだ(噛まれる=エキノコックス感染リスク増)。
もし、安全にキタキツネを鑑賞・触れ合いたいのであれば、北見市にある「北きつね牧場」に行きましょう。ここで飼育されているキタキツネは先に述べたように、生まれてすぐに母キツネから隔離されて飼育され、寄生虫の心配がない状態です。
ちなみに、弟子屈町の川湯温泉と言う街。昭和の時代には一世を風靡した温泉街だったが、今では人影も少なく閑散としている。
その街の中に観光客にエサをねだるキタキツネが出没するのだ。
人なつっこいけど、無視していればいなくなる。私の場合、子供を叱るように愛情を込めて「コラっ!!」と言って追い払うようにしている。
…というわけで、ツーリング中にキタキツネを見かけても、くれぐれも、エサやるな!ちょすな!…というお話でした。