前編では、伊豆市を拠点に活動する原動機研究部と伊豆市長・市議らがアニメツーリズムの現地視察を兼ねた山梨ツーリングを行ったことをお伝えした。その記事中で触れてはいたが、当地で進められているアニメツーリズムの動きについて、この後編で説明しておきたい。

聖地「スーパーおの」に礼子のスーパーカブ登場!

2021年、山梨県北杜市武川町を舞台に描かれたアニメ「スーパーカブ」は、そのタイトル名からもわかるように多くのライダーが北杜市の聖地(※)に足を運び、放送後の現在でもその人気が衰えることがない。 ※作中で描かれたスポットなど
作中にもそのまんまの姿と名称で登場した聖地「スーパーおの」店長であり北杜アニメツーリズム協議会の会長でもある小野桂一さんにお話を伺った。

▲北杜アニメツーリズム協議会の小野桂一会長(左)と榎本浩久理事(右)。榎本さんは登場人物の礼子(れいこ)が乗る郵政カブ(MD90)を再現した愛車で登場! 各部の再現度がスゴイ!

▲ヘルメットも礼子と同じ青いオフロードタイプ!

スーパーの一角に充実の展示コーナーあり!

▲スーパーの入口には「スーパーカブ」主人公の小熊(左)と礼子(右)の大型パネル!


店内の一角に設置された「スーパーカブ」コーナーの充実ぶりに目を泳がせながら小野会長にお話を聞いた。ちなみに、長い編集者人生、スーパー店内でバイクやアニメについてインタビューしたのはたぶん初めて。※以降、敬称略



田中:よろしくお願いします。まずは、小野さんが協議会の会長になられるまでの経緯とアニメツーリズムの始まりについて教えてください。

小野:2021年の4月、アニメが放送されて2、3話ぐらいの時にアニメファンの方たちがうちのお店に来るようになったんです。で、僕も面白半分でポスターを貼ったりスーパーカブのプラモデルを置いたりして「お店をこんなふうに飾りました」ってX(当時Twitter)に投稿したら反応がすごくて!

▲いまでは立派な展示コーナーとなっている。奥に見えるのは青果・精肉コーナー

市役所と話し、自らが仲間を集めて協議会を設立

小野:これだけ楽しんでくれる方たちがいるのなら何とかしたいなと思って、市役所とか商工会に話をしに行ったんです。一緒に何かしませんかと。

アニメでは一部の地域(武川町周辺)しか取り上げられていないので、それで市や商工会が動くのは難しいと言われたんですけど、観光協会と観光課の方が他の聖地を例に挙げて「誰かこの地域で中心となって、作品と地域を結びつけてくれる役を担ってくれる人はいないかな」となって。

スーパーおのは昔からあったお店なので、皆さんが僕のことも知っていて「小野さんがいいんじゃないか」と声をかけようとしていたみたいで「市としてはできないけど小野さんが中心になって何かやってくれませんか」と逆に提案された感じです。

じゃあということで知り合いに声をかけたら6、7人が集まって、そのうちのひとりが「ゆるキャン△」で地域活性化をしている身延町の団体「五条ヶ丘活性化推進協議会」とつながりが持てたということで、どういう活動をされているのかなどお話を聞きに行きました。

その話を聞いて、やっぱり会を立ち上げようということで、2021年6月6日に北杜アニメツーリズム協議会を作りました。6月6日は「スーパーカブ」の主人公・小熊の誕生日ということでお祝いを兼ねようとなって、釜無川橋ポケットパーク(アニメのキービジュアルの背景で小熊の通学路)にケーキを持っていって、そこで協議会を設立しました。

田中:その6、7人の方々が協議会設立メンバーということですね?

小野:はい。活動していく中で徐々に仲間が増えて今は15人くらいです。

自らマップを制作! 理解があった市役所担当者

▲公式マップの制作前に、市役所の担当者がオリジナルで作ってくれたというロケ地マップ


田中:ファンが聖地巡礼できるようなマップとかも作られてますよね?

小野:マップは市役所がメインで作りました。僕ら協議会はキャラクターの誕生日イベントや「北杜市スタンプラリー」を開催したり、あと、地域のゴミ拾いなんかも活動のひとつですね。

「TVアニメ『スーパーカブ』アニバーサリー2022 北杜スタンプラリー』:北杜市公式サイトより引用

田中:結局、市役所は動いてくれてるんですね。

小野:聖地だけでなく市内全体を対象とした活動とすることで、協議会の設立当初から補助金という形で活動を支援してくれて、アニメツーリズムについてもご理解は頂いていました。北杜市も元々そういうことをしたかったけど市役所では動けないのでという感じでしたね。

田中:山梨県内のアニメツーリズムで成功している「ゆるキャン△」の影響もあったんでしょうか?

小野:アニメ化される際にうちのお店を取材させてほしいというのがあって、連絡頂いた時には観光協会や観光課の人たちは「第2の『ゆるキャン△』を目指して『スーパーカブ』を広げたい」という話はされていました。

聖地ではない場所でスタンプラリーを実施

▲清里駅前通り。聖地ではないがスタンプラリーの設置場所、オリジナルステッカー交換所になっていた(2022年スタンプラリー)


田中:
スタンプラリーのスポット選びについても教えてください。

小野:協議会を作る時の目的のひとつとして、北杜市を知ってもらおうということがありました。一部地域だけでなく市全体を知ってもらうような活動をしたかったので、実はスタンプ設置場所の6か所はアニメに描かれていなくて「スーパーカブ」の聖地でもないんです(北杜市役所を除く ※2022年スタンプラリー)。

北杜市全部をまわってもらいたいですから。また、スタンプラリーを企画している時にJR東日本八王子支社の方から何か協力できることはないかと声をかけて頂いて、駅の構内とかいろんなところにポスターを貼って頂いたりスタンプの設置場所にしてもらったりと協力頂いて、JR韮崎(にらさき)駅でスタンプラリーの開催式をしますって言ったら600人くらいが集まってくれたり。

田中:韮崎駅自体は作中には出てこないのに?

小野:そうです。駅のちょっと上のほうにある観音像のあたりは出てくるんですが、駅自体は出てきません。

田中:スタンプラリーの他にはどのような活動をされているんですか?

小野:清里(きよさと)でやっている音楽イベントがあるんですが、たまたま協議会メンバーに主催のひとりがいまして、そこに出展させていただいて、特に売るものとかはなかったんですが「スーパーカブ」の周知・PRを兼ねてステッカーを無料配布させて頂いたり。

関係者も聖地を訪れてサインやコメントを残す

田中:原作者さんや漫画家さん、出版社さんの協力だったり、制作サイドと何か一緒にやるということはあるんですか?

小野:一緒にやってるということはないんですが、SNSで「スーパーカブ」関連の発信をした時には、それに対して必ずいいねをつけてくれたりコメントをつけてくれたりということをしてくださっています。

▲外伝となる「スーパーカブ Rei」の漫画を担当している、さいとー栄さんのイラスト&コメント

 

▲アニメ「スーパーカブ」で主人公・小熊の声を担当した夜道雪さんのイラスト&コメント

年齢高めのファンは親目線で見守っている

▲スーパーおのを訪れたファンのためのノート。コメントがずらりと並んでいた


田中:地域の方の受け止め方はどのような感じですか?

小野:「スーパーカブ」ファンってけっこう年齢高めの方が多いんです。元々アニメ好きな人たちが高校生の登場人物たちを親目線で見ていて、こう、見守るような感じでと。

田中:一般的な“萌え”とはちょっと違うんですね。

小野:激しい展開のない日常を描いた作品ですし、ファンの人たちが感情移入しやすいというのはよく聞きますね。

▲レジ前に設置された「スーパーカブ」グッズの販売コーナー。本当に圧巻!

アニメファンは地域を大切にしてくれた

若い人も含めて、ここに来るアニメファンの人たちは地域を大切にしてくれるんです。例えば、せっかく来たからここのお店でご飯を食べようとか。うちのスーパーも、ただただここに来てコーナーを見てグッズを買うだけじゃなくて食材も買って帰ろうとかお土産も買おうとか。

そんな形でその地域をよく利用してくれたり、いやらしい言い方をするとお金を落としてくれたりという方が多いです。そしてその地域を大切にしてくれるので本当に汚さないんですよ。僕らが清掃活動をしてもゴミ袋に入っているのがほとんど草ですから。

聖地のゴミ問題というのを聞いていたので清掃を始めていたんですが、本当にキレイに使ってくださって、各地域の人たちも自然と受け入れやすいようなファンの方たちが多いですね。

ツーリングライダーとアニメファン、地域の方が交流

▲北杜市明野町のひまわり畑とサンフラワーフェスはライダーにもお馴染み


北杜市自体が元々ツーリングライダーが多く訪れるところだったので、そういった意味では受け入れやすかったですし、アニメファンの人たちも聖地ではないけど新たな発見として行ってみようというのがあって受け入れられています。

田中:バイクが好きでアニメを見て来た方と、アニメが好きで「スーパーカブ」という作品を見て来た方と2種類のファンがいるということですね。

小野:大きく分けるとそうです。地域の人たちもファンの人たちを大切に思ってくれるようなところもあって、地域の人とファンが交流しやすい状況にはあります。

目標は、大洗町と“ガルパン”の関係性

▲スーパーおの限定の「椎の手作り風 黒パン」。こうしたコラボ商品・メニューも増えていくだろう


田中:
アニメツーリズムも各地の成功事例がある中で、目指しているもの、ああいう形はいいな、こういう風にしていきたいなというのはありますか?

小野:「ガールズ&パンツァー」(愛称ガルパン)の聖地の茨城県大洗町ですね。アニメファンの人たちが、アニメだけでなく町全体を好きになってくれるということが広がっていて、各商店をまわってくれたりとか、そういうところを僕たちも目指したいなと思っています。

「スーパーカブ」という作品をきっかけに北杜市を訪れてもらって、市内のいろいろなところを訪れてもらいたいというのがあるので、そういう持っていき方、発展の仕方をしたいなというのが僕らの目標です。

いま僕らが取り組んでいるのがオススメの飲食店紹介なんですが、今までアニメファンの人たちが行ったことがないような場所やお店もどんどん紹介していきたいですし、今後もいろいろな形で北杜市全体を紹介していきたいなと思います。

田中:ありがとうございました。

まとめ:ライダー・バイクで町おこしと地域活性化

▲大洗町の「大洗あんこう祭」ではガルパンの声優らも参加するステージイベントが定番となっており、毎年多くのファンが訪れる


北杜市のアニメツーリズムは、すぐ近くの身延町の成功事例「ゆるキャン△」を参考にしながらスタートし、ファンと地域が良好な関係性を持続・拡大させている茨城県大洗町の“ガルパン”を目標に活動している。

ライダー・バイクで町おこしといった場合は、地域の飲食店や商店街、宿泊施設などにライダーを誘客し、地域経済に関わる住民がその効果を肌で実感することが重要だ。北杜アニメツーリズム協議会の今後の施策に期待したい。

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事