年が明けて令和7年となった2025年。昭和に換算すると今年はちょうど昭和100年なんですね。いわば節目の年であります。ならば新年イッパツ目のバイク散歩は、昭和100年にちなんで昭和レトロな街へ行こうということに。行き先は東京都青梅市。いい街なのです、ここが。
昭和レトロな商店街
クロスカブ110で奥多摩街道を西進し、旧青梅街道へスイッチして青梅市の中心部、JR青梅線・青梅駅方面へと向かいます。
旧街道って、歴史が感じられていいですよね。青梅市は東京都西部・西多摩地域最大の市で、かつて青梅街道の宿場町「青梅宿」として発達した現在の青梅駅周辺には、古き良き商店街が今も残っています。
この商店街がいい味を出しているのですよ。筆者がこの街に通うようになった1990年代後半は、『夕陽のガンマン』や『君の名は』など往年の名作映画の看板がアート作品的に街のあちこちに掲げられており、昭和レトロな雰囲気が濃厚に漂っていました。観光客を誘致し、街を活気づけるため、そうした演出を行なっていたわけですね。
ネコが名作映画の看板に
名作映画の看板を描かれていたのは「最後の映画看板師」と呼ばれた地元在住の絵師・久保板観氏。平成30年に氏が亡くなられた後、青梅駅前の商店街は「猫の街」として町おこしに力を入れ、ネコがらみの映画看板へと路線を発展・継承。
青梅駅前の商店街は今なお昭和レトロなまま、なのであります。
しかしニャリリン・モンローって(笑)。本来は『お熱いのがお好き』(昭和34年)という邦題でしたが、ネコは猫舌なので「お熱いのは苦手」なんですね。
昭和24年に制作された映画『第三の男』をモチーフにした看板。これら一連のネコがらみパロディ映画看板作品は絵本作家、イラストレーター、画家、版画家として活躍している山口マオ氏の手によるもの。
「あんたら、覚悟しいや! ニャーッ!!」
ゴジラに戦いを挑むのは巨大化したネコのニャジラ!? がんばれ! となりの自転車屋さんを守るんだ!
というように、商店街のいたるところにネコがらみの名作映画看板が掲げられており、見ていて楽しいのですよ。
看板の前で記念写真を撮影する観光客は多いようで、この日もコンデジ片手に散策する若いふたり連れの女性を見かけました。
古いコンパクトデジタルカメラ、流行っているそうですね。iPhoneなどの最新スマホだと綺麗に写り過ぎるんだとか。チョイ古のコンデジだと画像が荒く、それがエモいということらしいです。
ちなみに筆者が今回の撮影に使用したのも古いコンデジ。当時は名機と絶賛されたキヤノンのPowerShot S120。2013年のモデルなのに、人気のため中古相場が高騰してます。当時のメーカー希望小売価格よりも高い。S120もバイクでいえばゼッツーやヨンフォアのような存在になっていくのでしょうか。
レトロとギャグの組み合わせ
閑話休題(それはさておき)。青梅駅のとなりには「まちの駅 青梅」なるお土産屋さんがありまして、平成28年(2016年)創業なのに昭和レトロ感を演出。
古き良き昭和の看板をイメージした遊び心満点の宣伝を展開していました。
覚えてます? 女優の松山容子さんがボンカレーを手に微笑んでいたホーロー看板。昭和時代は日本全国津々浦々の街角で色あせたやつを見かけたものでしたよね? それがここ青梅ではカレーではなく納豆に。しかもワラで包まれた本格派。
グリコのキャラメルは一粒300メートルだったはずですが、青梅マラソンは30キロの部と10キロの部があることからこんな表記に。
日本初の市民マラソンだったとは知りませんでした。ギャグ広告だけど、勉強にもなります。
昭和をもっと深彫りするなら
青梅駅前の商店街は、とにかく「昭和」推し。旧青梅街道沿いの歴史・文化施設「昭和レトロ商品博物館」では、昭和30年~40年頃のお菓子や薬などの商品パッケージや玩具など生活雑貨を展示(入館料350円、金土日祝開館)。
ただし駐車場がないんですよね。125㏄までのバイクだったら、青梅駅のとなりの「まちの駅 青梅」の斜め向かいにある「青梅駅自転車等駐車場」に駐められますのでご利用ください。そこから徒歩4分で到着します。
では、126㏄以上のバイクだったら、どこに駐められるのか。青梅市観光協会に電話で質問してみたのですが、分かりかねますとのことでした。
日本二輪車普及安全協会のWEBサイト「全国バイク駐車場・駐輪場案内」で検索してみたら、表示されるのは予約制の「akippa」ばかり。予約なしにブラリと立ち寄れたら気楽なのになあ。
これはもう、おもしろ看板を眺めながら素通りするしかない? もったいない話ですよね。青梅駅前商店街の方々に、なんとかしていただきたいところです。
昭和軒で昭和麺
お腹もすいてきました。どこかでラーメンでも食べたいとウロウロしていると、駐車場付きの町中華を発見。その名も「昭和軒」。昭和レトロなバイク散歩にぴったりのお名前です。
場所は旧青梅街道沿い、青梅駅と東青梅駅のほぼ中間。駐車場は道路をはさんだ向かい側にクルマ1台分が確保されています。ラッキー! 迷うことなく入店。
店内は4人掛けのテーブルふたつと、椅子5客のカウンターがひとつ。ご高齢のご夫婦が営む、創業して半世紀という老舗の町中華。古めかしくて、どこか懐かしい、心温まる空間。いいなあ、大好きです、この雰囲気。
メニューを見ると、「昭和麺」なる一品が。
「なんですか? 昭和麺って」
「タンメンってございますでしょう? 塩味の。それの餡かけです。たまごも入れて」
優しくて上品な女将さんがていねいに応えてくれました。昭和軒さんのオリジナルだから昭和麺なんだそう。いいねえ、しかも寒いこの時期に餡かけのラーメンは身体が温まるから最高じゃないですか。
で、待つこと数分、いただいたのがこちら。
これが昭和軒の昭和麺。野菜たっぷり、豚肉もけっこうな量。たまごも入っています。
箸で引き上げると、とろみのあるスープが麺にまとわりついてきてアツアツのハフハフ状態。うまい、安い、身体も心も温まる。
野菜の旨味がしっかり溶けだした塩味のスープは、余計な仕事が施されていない、すっきり、バッチリ、正統派の旨さでした。
さあて、身体も温まったことだし、もう少しカブで散歩を楽しみましょうか。
青梅駅に戻り、ロータリーの真ん中に飾られていた巨大だるまと記念写真。
1月12日、住江町交差点~市民会館前交差点で「青梅だるま市2025」が開催されるとのこと。
毎年1月12日に開催される「青梅だるま市」は、西多摩地区の新春の風物詩のひとつ。旧青梅街道沿いに約40店のだるま店やその他の露店200店が並び、縁起物のだるまなどを販売。その日、旧青梅街道は一般車両通行止めになるので、会場まで直接バイクで来ることはできませんが、懐かしい風景に出会いたくなったら、いずれまた青梅の商店街まで足を運ぶとしますか。
ということで昭和レトロな青梅のお話でした。ではまた!