速さではなく、安全に上手く乗りこなしたい。それはライダーにとってはじめの一歩であり、永遠のテーマでもある。――こんな風に考えるライダーにうってつけなのが「那須MSLライディングスクール」。教習所では教えてくれないテクニックの数々を紹介していきたい。まず第1回はライディングポジションの作り方を解説!

上達に不可欠のテクニックを広いコースで学べる!

バイクに末永く楽しく乗るためには、安全に走る技術が必要。その上で、愛車をスマートに上手く乗りこなすテクニックを身につけたい……と思いつつ、漫然と自己流でバイクに乗っている人も多いのではないだろうか(筆者もその一人・・・・・・)。そんな人にオススメしたいのが「那須MSLライディングスクール」だ。

会場は、東北道・浦和ICから2時間少々の位置にある、栃木県の那須モータースポーツランド。そこで行われるライディングスクールは、好評につき15年以上の歴史を誇る。普段の公道で役立つカリキュラムを中心に、参加者のレベルに合わせて基礎や実践的な技術をレクチャー。リピーターが続出しているほど好評だ。

こうしたスクールは駐車場や教習所のコースで行われることが多く、「なぜサーキットなの?」と思う人もいるだろう。その理由は、敷地が広いので思う存分練習でき、コースを利用してワインディングを想定したライン取りまで学べるのが理由とのこと。また、路面が整備され、摩擦係数が高い(スリップしにくい)のもポイントだ。個人的には、なかなか走れない場所を走れる“オトク感”も大きい(笑)。

参加費はレッドバロン会員9000円、一般1万円(ともに税・見舞金制度込み)。車両は持込で126cc以上なら車種を問わず、スクーターでも参加できる。定員は先着順で40名だ。

↑ここが会場の那須モータースポーツランド。■栃木県那須塩原市寺子字坂の上677-1 電話0287-62-6358 月曜休(祝日は営業) 営業時間8~17時

 

↑当日は8時半までに集合。会場に到着したら、受付で体温の測定や必要事項の記入を行い、スクール中に使うゼッケンを受け取る。


スクールは9~16時のミッチリ1日コース(1時間の昼休みあり)。
まず特別講師の中井直道さんが「ライディングで重要なのは、自分を知ること。今日は自分の走りを振り返るタイミングをつくってください。これが上達のきっかけになるかもしれません」と挨拶した。

↑鈴鹿8耐に20回の出場経験を持ち、'14年の8耐ではSSTクラス優勝も果たした中井直道さん。MFJ公認インストラクター制度の最初期から活躍する超ベテランで、わかりやすく的確な指導が評判だ。

「面」で下半身とバイクを一体化させる

準備体操で体をほぐした後、正しいライディングポジションを学習した。ライポジは基本中の基本。建築の土台のようなもので、これが間違っていたらせっかくの練習も台なしになりかねないのだ。

バイクとライダーが接するポイントは「お尻」、「手」、「足」の3つ。この位置でライポジが決まってくる。
「お勧めしているのは立ってステップに乗ること」と中井さん。まず足の置き方が重要で、土踏まずをステップに載せるのが基本だ。つま先をステップに載せる方法もあるけど、ブレーキペダルの操作ができないので街乗りではお勧めできないという。

↑よい例。土踏まずがステップに載っていて、すぐペダルを操作できる。

 

↑ステップに荷重はしやすいけど、ペダルに足が届かないので街乗りには不向き。

 

つま先の角度も大事だ。つま先が開くと、ペダルを操作するために踏み変えが必要になるし、ヒザが開いてニーグリップができない。

↑よい例。進行方向にビシッとつま先が向いている。

 

↑つま先が開いた悪い例。足首やヒザのホールドが甘くなる。

 

足の位置が決まったら、次はお尻の位置。バイクを直立状態にしてステップの上へ立ち、座っていく。ストンと座る方法が一般的だけど、当スクールでは足をホールドした状態で「ゆっくりジワジワと腰を降ろす」のがポイントだ。
「ストンと座ってもいいのですが、後ろに座りがちです。直立して足をホールドした状態で、太ももに力を入れながらゆっくりジワジワ座ると、ストンと座るよりほんの数cm前寄りになる。この位置が大事なんです」と中井さん。

座る位置にも色々あって、リアに荷重をかけるための「後ろ乗り」や、「タンクから拳一つ分開ける」方法もよく耳にする。これらは目的に応じた乗り方なのだが、下半身の踏ん張りは利きにくい。一方の中井流はしっかりと腰が入り、下半身で操りやすい。実際に試してみたら、なるほど中井さんの言うとおりバイクと下半身が一体になった感覚がある!

↑センタースタンドなどでバイクを直立状態にして、ステップの上に立つ。

↑何気なく座るのではなく、足首と太ももで車体をホールドしたままジワジワと腰を降ろしていく。


“バイクは下半身で扱うもの”とよく言われるように、腰を含む下半身を安定させることがスポーツの基本。バイクに乗るたびにやるのもアリだけど、自分の愛車で何度か試せばベストポジションを覚えられるハズだ。

最後に、その姿勢のまま手をハンドルに添える。上半身の力はできるだけ抜いて、下半身をガッチリ固める。
「なかなかできませんが、意識してください。腕に力が入っているとスロットルを丁寧に開けようと思っても無理です」(中井さん)。

↑ヒザ、お尻、ステップが描く「三角形の面」でホールド。これでバイクと下半身を一体化させるのだ。背中を押されてもしっかり安定している。


もちろん、この状態をずっとキープし続けるのもシンドイ。高速道路など状態の変化が少ない場面では力を抜いてもOK。「走る、止まる、曲がる」の際にホールドすればいい。

上半身を積極的に使えば、繊細な操作が可能に

さらにフォームで意識すべきなのが「上体の前後の動き」。つまり、加速と減速時に上半身を使うのだ。加速の際はGで上体が後ろに行こうとするし、ブレーキング時には体が前に行く。こんな状態で思うままにスロットルを開けたり、ブレーキレバーを操作するのは難しい。
そこで、加速時はスロットルの動きと連動させるように前傾。減速時はヘソの下辺りに力を入れて上体を起こす。どちらの場合も腕の力は抜いたまま。これも上体の力が抜けて、下半身のホールドができているからこそ可能な芸当だ。

↑腕の力は抜いたまま、加速時に前傾のフォームを取れば、スロットルを自由に動かせる。

 

↑ブレーキング時。お腹に力を入れて上体を起こし、腕をフリーに。これで繊細なブレーキ操作が可能になる。

テクニックの全てが詰まった8の字には「松竹梅」がある?

続いて、インストラクターによる8の字走行のデモが行われた。
「8の字にはバイクのライディングに必要な操作が全てギュッと凝縮されています。これから様々なレッスンを行いますが、基本が詰まっているので、8の字で学んだことを最後まで忘れないでください」(中井さん)。

参加者が数名のグループに分けられ、いよいよ実践だ。
一口に「8の字」と言っても、当スクールでは3段階のステップがある。
デモ走行でも披露されたのだが、まず視線を進行方向に向けて下半身ホールドによる"定常円”8の字からスタート。次に、外側から進入してリアブレーキで小さく回る方法をマスター。最後に、しっかり加減速するメリハリのついた8の字で完成だ。

始める前に中井さんが受講者に質問してきた。
「バイクというものは“走る、曲がる、止まる”の組み合わせです。どれも大事ですが、一番大事なのは何だと思いますか?」
私は「曲がる」と答えたのだが、正解は「走る」。
「“止まる、曲がる”がきちんとできていないと、スロットルを開けられません。最終目標は“スロットルをいかに開けられるか”ということです。8の字でも丁寧なブレーキングと向き変えで小さく曲がれることによって、直線でスロットルを開けることができるようになるのです」
要は、「逆算で考える」ということだ。なるほど! 

ということで、次回では8の字をミッチリ解説。まさにライテクの全てが詰まっていた!

詳細は次回で。お見逃しなく!

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