超絶ウルトラ高性能な液体の精密機械!

しつこいようですが、人体にある約37兆個の各細胞へ酸素や栄養、タンパク質などを送り届けている血液。

心臓からドックンドックン拍出され、極小の毛細血管まで含めると10万㎞あるという全身の血管を約50秒で巡りつつ(!?)、途方もないマルチタスクを行なう、体重の約8%を占める液体の正体とは一体どのようなものなのでしょうか? 

ツーリングイメージカット

●の〜んびりツーリングしている間はもちろん、恋人と愛を語らうときや、睡眠中でさえ血液は身体を駆け巡っています。なお、体重50kgの人の血液量は約4ℓ。仮に事故などの原因で血管が破れると全血液量の約30%(体重50kgなら1200㎖)以上の出血で生命の危険に……。くれぐれも安全運転を

 

誰でも、うっかり切り傷を作ったり鼻血を出してしまったときなど何度かは手で触れているはず。ご存じのとおり、真っ赤でちょいと粘性のある液体で、空気中に放置していると、みるみるうちに固まっていきます。

そんな血液を一定量、試験管へと入れたあと固まらないようにする薬(抗凝固剤)を混ぜてしばらくすると、淡い黄色の上澄み液と赤い沈殿物とに分かれます。

上層のレモンイエローな液体は血液の約55%を占める「血漿(けっしょう)」で、その約90%が水分。残りを各種タンパク質、ブドウ糖、脂質、電解質、ホルモン、ビタミンなどが占めており、細胞が求めるものを的確にデリバリーするとともに、二酸化炭素を受け取り、免疫や止血の手助けまで行うというマルチプレーヤーぶりがとてもステキです。

「血小板ちゃん」はアナタの血にも大勢います

片や下層に沈んだものは血液の約45%を占める「血球」という細胞成分で、国民的体内細胞擬人化マンガ“はたらく細胞”でもおなじみ、赤血球と血小板、白血球がその中でひしめき合っています。

はたらく血小板ちゃん書影

●大ヒットシリーズ「はたらく細胞」のスピンオフとして血小板の活躍を描く作品が、講談社の月刊少年シリウスにて連載されていました。上書影は「はたらく血小板ちゃん(1) 」(シリウスKC) 著:ヤス 原著:柿原 優子 監修:清水 茜 定価:693円 ※最終巻4巻は2021年6月9日発売

 

血球中では何といっても赤血球の数が突出しており、その数、実に1μL(マイクロリットル)中に男性で約500万個、女性で約450万個……。といってもピンとこない方がほとんどかと。マイクロリットル自体、聞き慣れない単位ですよね。

1μLとは、ずばり1立方ミリメートル。つまりは一辺が1㎜の立方体でして、それこそゴマ粒の半分くらいの容積内に男性なら約500万個の赤血球がビッシリ詰まっているということです。信じられますか??? 

赤血球のイメージ画像

●正常な赤血球の大きさは約8μm(マイクロメートル。1㎜の千分の1が1μm……)。赤血球の形状は真ん中に凹みのある平べったい円盤状。 酸素を効率よく運べて、細い毛細血管を通っても壊れない必然のカタチです

 

赤血球のものすごさにかすみがちになりますが、血小板も同じ1μLの中に約14~36万個、白血球でも同4000~9000個が入っているのです。

それぞれの働きを大まかに言うと、赤血球は肺で受け取った酸素を運搬して各細胞へと届け、血小板はケガなどで生じた傷口の止血する作用、白血球は体内へ侵入して悪さをしようとする病原菌などを処理することを担当しています。

バラエティに富む働きをする液体……。まさにそれは潤滑、冷却、密封、洗浄、防錆の各作用が渾然一体となったエンジンオイルの比喩として使われるのに相応しいものですね! 

オイルイメージ写真

●ベースオイルが約80%なら、残りの約20%に防錆剤、酸化防止剤、油性剤、流動点降下剤、洗浄分散剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、消泡剤、粘度指数向上剤といった数々の添加剤が注入されているエンジンオイル。そのブレンドの妙が各オイルの個性を形作っているのです

 

エンジンオイルはパワーユニットが推進力を生み出すために機関内で混合気を燃焼するたび発生するスラッジを吸収し、高熱にさらされたりすることで劣化し、数千㎞を走行するごとに交換すべき時期を迎えます。

オイル交換の風景

●オイルフィルターは金属片など大きめの混入物を濾し取るものであって、液体自体をリフレッシュはさせません。オイルは定期的に交換する必要のある「消耗品」なのです。銘柄を変えるだけで走りも変わったりしますので、いろいろ試してみてくださいね!

 

対して人間の血液は、健康でいる限り体内を循環するたびに肺、腎臓、肝臓などの臓器でリフレッシュされ、血球細胞はくたびれたものから分解&廃棄。適宜新たな血液が骨の中心にある“骨髄”で生み出されていくという玄妙な仕組みが用意されているのです。

骨で作られる血液イラスト

●「はたらく細胞」ファンなら、上記血液細胞のすべてが作中内キャラクターの顔に見えてくるのではないでしょうか(私はそうです)。ともあれ、1種類の造血幹細胞から様々な性格の細胞が生まれていくのがとても不思議かつ面白いところ。さらに興味深い「免疫」については、また項を改めてお話できればと考えております

 

なお、この骨髄にある造血幹細胞に異常が起こり、正常な血液が作られなくなってしまうと、酸素が運ばれない、病原体をやっつけられない、出血しても止められないという不具合がドンドン加速していきます。そんな生死にかかわる怖い病気が「白血病」なのです(バイクで言えばオイルラインに水分が大量に浸入していく状態でしょうか……!? 水分を含んだオイルがカフェオレのように目に見えて白濁化するというのも“白”血病とイメージが重なります)。

多くの場合、白血病が発病する原因は不明なのですが、異常に疲れやすく何をしても回復しないという症状が日に日に強くなっていくときは迷わず、かかりつけ医へ相談を! 

「血液のがん」である白血病関連ほど重篤な病気ではなくても、スムーズに流れるべき血液が滞ったり汚れているときは、体に不定愁訴が数多く現れます。

どろどろ血液イメージ図

●健康を取り扱うテレビ番組でよく言われる「ドロドロ血、サラサラ血」……。どういう状態がドロドロでサラサラなのか。医学的に正確に定義できる基準値などはないのですが、血流の流れが悪いと健康に悪い、というのは間違いのないところです

 

こちらを東洋医学では「血(おけつ)」とも呼び、皮膚の黒ずみや頭痛、肩こり、痔、吹き出物などの原因になるとしています。

喫煙、飲酒、脂っこい食事のしすぎほか、欲望に身を任せた悪しき生活習慣が悪化の要因ともされていますので、脳の血管障害発症という最悪なケースを遠ざけるためにも体の不調に耳を傾け、正しい方向へ生活を改めていきましょう。

脳血管障害のイラスト

●オイルラインはもちろん、ブレーキライン、ガソリンが流れていくホースetc。密閉されていてしかるべきところが破れてしまうとバイクはもうまともに走れません。人間の場合も同様。体内で血管が破れてしまうと部位によっては重大な局面を迎えてしまいます。ご注意を

 

超絶ウルトラに精密な人体の各動作に対応した最高の“エンジンオイル”を勝手に劣化させて不調になるのはもったいないですよ! (血液編:おわり)

三陰交のツボイラスト

●前回ご紹介した「血海」同様、血の不調に効果が高いとされる名穴が「三陰交(さんいんこう)」です。第13回でも紹介いたしましたが、血液の流れを良くしたり、元気な血の生成を行なう“補血活血”にも大きな影響を及ぼします。足の太陰脾経上にあるツボですが、足の少陰腎経、足の厥陰肝経にも交流しており、セルフ灸をしたりマッサージをするだけで、3つの経脈を活性化できるのです。場所は内くるぶしの一番高いところから指4本分上がったところ。軽く押しただけで強い痛みを感じるはずですから、無理をせず弱い刺激から与えていきましょう!

 

> 120歳まで乗り続けるために〈第14話〉「体のエンジンオイル!?:血液(前編)」

> 120歳まで乗り続けるために〈第16話〉「体の吸排気システム:肺(前編)」(執筆中)

> 120歳まで乗り続けるために〈第17話〉「体の吸排気システム:肺(後編)」(執筆中)

 

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