♫「真ぁ〜っ赤に流れるぅ〜」血潮は体重の8%!

我々が日々愛用している人体、約37,000,000,000,000[37兆]個の細胞のひとつひとつに酸素や栄養、タンパク質などを送り届けている血液。

どれくらいの量が流れているかというと体重の約8%だとか。

つまり体重60㎏の人なら4.8ℓ……つまり5ℓ弱。100㎏に近い筆者だと8ℓ弱の血液が、今この瞬間も体内を駆け巡っているというわけですね。

オイル交換イメージ

●筆者の愛車、スズキGSF1200Sのエンジンオイル全量は4.6ℓ。体重60㎏弱の人の血液量とほぼ同じと言えます。油冷エンジンだけに多めの設定。筆者の血液量、約8ℓなら水冷ポルシェの交換時オイル量クラスですね(何の話でしたっけ?)

 

5つもあるエンジンオイルの「作用」とは?

よくバイク好き仲間の会話内では「オイルはエンジンの血液だからよぉ」というフレーズが頻出しますが、確かに身体の血液、エンジンのオイル、どちらもとても重要な存在という点においては間違っていません。

シリンダーとピストン(リング)、ピストンとピストンピン、コネクティングロッドとクランクシャフト、カムシャフトとバルブ……。エンジン内で数多く存在している金属同士の摺動部分、そこでの摩擦抵抗を軽減するオイルの「潤滑作用」は非常に大切なもの。

GSX-R1000エンジンカットモデル

●スズキGSX-R1000Rのエンジンカットモデル。197馬力を13,200rpmで発生するにはフリクションの少ない上質なオイルで機関を包み込むことが重要です

 

ですが、それしかやってない、と誤解している人もたまにいらっしゃいます。

実際にはシリンダーとピストン(リング)間などの気密性を高めてガス抜けを防ぎ、パワーを維持する「密封作用」、エンジン内部の熱を吸収してオーバーヒートを防ぐ「冷却作用」、エンジン内部の汚れを取り込みキレイに保つ「洗浄分散作用」、そしてエンジン内で発生する酸や水分が原因で発生する錆を防ぐ「防錆作用」という、ざっと5つの作用が存在しており、各オイルメーカーが総合的な性能を向上させるため開発にしのぎを削っているのです。

栄養を運び、ケガを治す「冷却水」……!?

対して血液も複数の役割を担っています。

誰でも簡単にイメージできるのは「運搬作用」ですね。酸素をデリバリーして二酸化炭素を回収することは基本中の基本。ほかにも栄養素、ホルモン、免疫物質、そして体外に排出すべき老廃物なども血液はえっちらおっちらと運んでくれるのです。

次なる役割は「生体防御作用」。

バイクライフを満喫しているとメンテナンスやテント設営時などでも、ちょっとした切り傷や擦り傷は作ってしまうもの(転倒はダメですよ)。よほど深い傷でない限り、放置しておけば自然と出血は止まり、かさぶたで覆われます。この止血作用も血液が持つ大切な役割。同時に血管内へ入ってきた細菌などの異物も速やかに除去されます。このあたりは大ヒットした「はたらく細胞」シリーズで面白おかしく知識を得た人も多いはず(笑)。

出血のイメージイラスト

●メンテナンス中、カウルのバリやタイラップの不適切な切断跡などで簡単に出血大サービスすることも……。即座に血液中の白血球くんやマクロファージさん、血小板ちゃん(byはたらく細胞)らがフル活動して殺菌&止血に勤しんでくれるのです

 

そしてそして、言われてみれば納得な3つ目の役割は「体内環境維持作用」です。

“浸透圧(水分や栄養分を細胞に行きわたらせるときに重要)”と“pH(弱アルカリ性であることがベスト)”の維持に関しては、また別の機会に……。とっておきの役割は“体温の調整”でしょう。

皮膚の表面はラジエター同様の熱交換ポイント

身体の深いところにある筋肉や肝臓や心臓ほかの臓器では、活動するため大量の熱を発生します。あたかも稼働しているエンジンのように。何もなく放置しておけばアッという間にオーバーヒートを引き起こしてアジャパー状態です。が、血液がその熱を引き受けて体表を覆う皮膚へと運び、放出することで体温は一定に保たれます。まさしくバイクのラジエターと同じですね。

刀ラジエター

●写真はスズキKATANAのラジエーター。パワフルなエンジンが発生する熱を大気へと放出させる熱交換器。サーモスタットによってオーバークールを防ぎ、冷却ファンで渋滞中などのオーバーヒートを回避する

 

暑い時期ならば血管を太くして毛穴を開き、足りなければ発汗作用による気化熱効果まで動員してクールダウン。逆に寒い時期は皮膚近くを通る血管を細くして毛穴を収縮させ、熱交換を抑制。さらに体毛を立てたり(トリハダ状態[関西ではサブイボという]。逆立った毛が空気を含み断熱効果を生み出す……が人間では退化)、筋肉をブルブル振るわせて追加で熱を生み出すことまで行います。結果、人間の体温は外界の気温にかかわらず、常に36.5度前後に保たれるというわけなのです。超優秀かつ敏感なサーモスタットが備わっているようなもの。これ、地味に凄いこと……。

鳥肌のイメージ写真

●寒さを感じると毛穴のそばにある「立毛筋」と呼ばれる小さな筋肉が収縮し、普段は横になっている毛がぴんと屹立。毛穴の周辺がやや盛り上がり「鳥肌が立った」状態になるのです。恐怖や感動によっても鳥肌が立つことがありますが、そちらのメカニズムは現在でも不明とか

 

なお、ウイルスや細菌に感染して高熱が出るという状態は、身体内部で侵入者と免疫チームとが壮絶なバトルを繰り広げているということです。熱自体の力で病原体を制圧している場合もあるので、解熱剤の使いどころはお医者さんの言いつけを守るべきでしょう。

オイルのように血液は「劣化」しないのか?

さて、エンジンオイルは簡単に交換できて、奮発した銘柄の実力に一喜一憂することもライダーの楽しみではありますが、体内の血液はそんなにたやすく交換はできません。

遠い遠い将来なら、「今回体内に入れたelfの上級血液、以前試したMOTULのものより全力疾走時の呼吸が楽だなぁ」なんてこともあるかもしれませんが……。

では、血液は劣化しないのか? 120歳 現役ライダーを目指す人が血液の健康を保つために気をつけるべきこととは? を次回お話いたしましょう。(後編へつづく)

足のツボのイラスト

●東洋医学で「血」に関する名穴を挙げたとき筆頭にくるのが①の血海(足の太陰脾経)。名前からして血の海です(笑)。位置は太ももの前面、ヒザのお皿の内側から指3本分上のところで、多くの人は押すと痛みを感じるはず。血の滞りを改善させるツボですので、女性の生理痛にも特効があるとされています。血の流れがよくなれば疲れも早く取れ、元気も湧いてきますよ!

 

> 120歳まで乗り続けるために〈第13話〉 「体のエンジン:心臓(後編)」

> 120歳まで乗り続けるために〈第15話〉「体のエンジンオイル!?:血液(後編)」

> 120歳まで乗り続けるために〈第16話〉「体の吸排気システム:肺(前編)」(現在執筆中)

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