前編では「親子でバイクを楽しむ会」の概要とオリエンテーションまでをお伝えした。後編では実技講習の模様をお届けする。親御さんが先生となってバイクを教えるという独特な講習内容をご覧いただきたい。

まずは、走行準備(準備体操、装具装着)から

みんなで準備体操をする。かなりしっかりと、本格的な内容だ。


オリエンテーションが終わったら、みんなで外に出て、準備体操が始まった。体をほぐして温める、ラジオ体操のような運動でかなり本格的。

続いて、屋内に移動しての入念なストレッチ。親御さんがお子さんを、お子さんが親御さんを手伝いながら体を伸ばしていく。「うあぁあ…」とお父さん達の嗚咽が漏れていて、それをちゃかしているお子さんの姿が面白い(失礼)。

親子でストレッチ。普段体を動かしていない親御さんにはキツそうだった(笑)


体操が終わったら、親御さん組とお子さん組に分かれて装具の装着をする。モトクロスで使うようなチェストプロテクターのほか、肘、膝、くるぶしにハードプロテクターを装着する。

プロテクターはしっかりしたハードタイプのものを装着する。

バイクとご対面! 基本操作の確認

乗り降り時の周囲の確認も忘れない。「マフラーは熱くなるからさわらないで」という注意も。


親御さんは外で、お子さんは屋内で、これから乗るバイクの取扱いについて学ぶ。各部の説明、エンジンの始動法、前後ブレーキのかけ方、バイクへの乗り方と降り方、ライディングポジションなど基本的なことを教わる。

なお、親御さんはCRF125Fだが、子どもたちは特別に改造されたCRF50F改を使う。改造ポイントは、リヤブレーキペダルを外して左グリップ部にリヤブレーキレバーを装着していること、ふいに足で触ってしまわないようにシフトペダルを長いものに変更していること、バイクが暴走しそうになった時にエンジンを停止できるようにリヤフェンダー上部に点火カット用のループワイヤーがついていることなどだ。

CRF50Fのリヤブレーキは本来はペダルだが、左手部に移設してある。

キルスイッチの役割をするループワイヤーも後付けで設置されていた。万が一、暴走した時はワイヤーを引っ張り抜けばエンジンが停止する。

エンジンをかける前に、ブレーキ操作に慣れよう!

みんなで列になってバイクの押し歩きをする。背の小さな子どもは少し大変かも。


ヘルメットをかぶったら、いよいよコースで練習となる。親御さんが慣熟走行を終えて戻ってきた頃、子どもたちはバイクの押し歩き練習の真っ最中。

ここからは、親御さんとお子さんがペアになる。いきなり走り出すのではなく、まずはブレーキの練習から。親御さんが後ろからバイクを押して、1歩、2歩、3歩と勢いをつけて離し、慣性で少し走ったらお子さんがブレーキをかけて足を出して止まる。

まずはブレーキを使って止まり、その時に、ちゃんと足を着地する練習。この時点ですでに息が上がっているお父さんも。


この練習をコース一杯につかって繰り返す。最初はヨロヨロしている子どもたちも、2周目くらいにはもう真っ直ぐ走れるほどにバランスが取れている。

エンジンをかけて、発進・停止を繰り返す

インストラクターが悪い見本を見せている。自動遠心クラッチならではのスロットルの取扱いについての注意だ。


次に、エンジンのかけ方やギヤの説明が始まった。なお、CRF50Fは自動遠心クラッチ(N・1・2・3速)なので、ギヤが入っている時のスロットル操作には注意が必要。不用意にスロットルを回してしまわないよう、エンジンがかかっている時は右手をスロットルには置かないように注意があった。

ここで、インストラクターが悪い見本を見せる。スロットルを大きく回しながらギヤを入れることでフロントアップをして転びそうになったり、ギヤが入った状態でバイクを降りるときにスロットルを回してしまって走り出してしまうというものだ。

ギヤを入れる時、バイクの乗り降り時には、必ずスロットルから手を離しておくのだ。

発進・停止の練習では、親御さんに向かって走っていく。暴走しないようブーツで輪留めを作ったりブレーキレバーに手をかけられるように準備しておく。


次に、いよいよ発進・停止の練習となる。親御さんがバイクから少し離れた所に立ち、発進したのち、待ち構える親御さんの手前でブレーキをかけて停止するというもの。万が一に備えて、親御さんはブーツで輪留めを作ると同時に、掌側を見せておき、突っ込まれてもブレーキレバーを押しこんで停止させられるように準備しておく。

少しずつ、親子の距離を離していく。アクセルを少し開けた状態でキープすることもこうした中で学んでいく。


最初は1mくらいから始めて、その距離を徐々に延ばしていく。子どもたちの上達は早く、2周もすると、コースの一辺(40mほど)をまるまる使って練習できるようになった。

正方形に作られたコースの一辺を端から端まで走って止まる。親御さんはブレーキの合図や停止の合図を出している。


親御さんたちはブレーキをかけるポイントや目線、ニーグリップなどについて注意している。インストラクターに教わったポイントを親御さんがお子さんに繰り返し伝えているのだ。

親子で並走しながらの目標制動

一定の区間にパイロンを置きながら、ゴー&ストップを繰り返す。スタート地点から走って緑色のパイロンでスムーズに止まれるようにブレーキをかける。


お子さんが真っ直ぐ走り、止まれるようになったところで、今度は親子一緒に並走しながら指定された位置(パイロン)で止まるという練習をする。コースの端から端までの間に指定位置が数回設定されているので、ゴー&ストップの繰り返しとなる。親御さんはお子さんを気づかい、目線を送ったり、声をかけたりしながら並走している。

コースの端でUターンするときはバイクを降りて押す。この時に右手はスロットルに置かないように注意する。


なお、子どもたちはまだ曲がることを練習していないので、コースの端では、バイクを降りて転回する。この時は、親御さんも一緒にバイクを押して歩く。実は、この瞬間がとても危ないそうで、こうした講習会で最も暴走事故が起こりやすいんだそう。なので、押し歩き中は、右手を絶対にスロットルにかけないように注意している(上写真)。

オーバル走行と8の字走行で、曲がる練習

まずはオーバル走行から練習。2つのパイロンを回って感覚をつかむ。


お昼休みの後に行なわれたのが、曲がる練習だ。2つのパイロンを使って、オーバル(楕円)走行と8の字走行を練習する。インストラクターがお手本を見せた後、親子がそれぞれに練習を始めた。

進入時にパイロンに近づきすぎて大きくふくらんでいる子が多かったが、インストラクターがアドバイスをするとキレイに曲がっていくから面白い。目線やニーグリップ、シートに座る位置など的確なアドバイスだ。

お子さんが曲がることに慣れたら、今度は親御さんが先導してライン取りや加減速のタイミング、目線なども見てあげる。

仕上げは、パイロンコースを周回

パイロンコースを走り抜けることで、これまで学んだことが全ておさらいできる。


最後の練習は、総合力が試されるパイロンコースの周回。最初は、親御さんが先導していたが、途中からはお子さんが先に走って親御さんが後ろから追走する形に。この頃になると、子どもたちもすっかりバイクに慣れていて、直線部分での加減速やライン取り、正しいライディングポジションなど大人と変わらない走りをしている。笑顔で走っている子も多くて楽しそうだ。

最後も一礼で、礼儀正しく!

教室に戻って、一日の振り返りをする。目標が達成できた子、ちょっとできなかった子もみんな頑張った。最後は親子で一礼。


実技講習が終わったら、洗車や給油(前編参照)、片づけをしてから屋内の教室へ。子どもたちには、目標の達成具合など今日一日の感想を聞く。最後に、親子が向き合っての一礼で、会は終了となった。

なお、ファーストステージの次には、セカンドステージ、サードステージ(オフロード/ロードコース体験)、スペシャルステージがある。また、中学生コース(ファーストバイク体験)も用意されている。※もてぎの場合。実施場所(鈴鹿、熊本)でコース編成は異なる。

「バイクには14年ぶりに乗りました」

「この子にはバイクを好きになってもらって家庭内で味方を作りたい…」というお父さん。14年ぶりのバイクとは思えない腕前だった


栃木県宇都宮市から来ていた周藤(すとう)さん親子に話を伺った。「YouTubeを見てたらバイクがカッコよかったから乗りたいと思った。今日はコース走行とかめちゃくちゃ楽しかった!」という祥馬君(7歳)。

8の字練習を見ていたらとても上手だったので気になっていたが、お父さん(55歳)はその昔、Aクラス(大型バイク)の栃木県代表として二輪車安全運転全国大会にも出場していたツワモノだった! どうりでフォームもキレイなわけだ。


親御さんもバイクに乗り、一緒に走りながらお子さんにバイクを教えるという「親子でバイクを楽しむ会」は、親子の絆も深まる、楽しい取組みだった。小学生のお子さんをお持ちのお父さんお母さん、ぜひ一度参加してみては?

【関連記事】
・お父さんお母さんが先生!? ホンダ「親子でバイクを楽しむ会」のスゴさ!<前編・概要>
・「バイクに乗ってみたい」と子どもに言われたら? ヤマハ親子バイク教室レポート

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事