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43年間の不変……ではなく、SR400は変わり続けることでロングセラーを維持した
2021年2月、ビッグニュースがバイク業界を駆け抜けた。それは、1978年の発売以来43年という超ロングセラーを続けてきたヤマハ SR400の国内販売が終了するということ。
21年モデルは「SR400 Final Edition」として2カラーを展開。さらに特別カラーや専用装備をまとった「SR400 Final Edition Limited」を1000台限定でリリース。Limitedは即日完売で、通常バージョンのFinal Editionも好調。発表から数日で約6000台の予約が入ったという。
最後の最後に異例ともいえる大ヒットを飛ばし、「さすがSR!!」と喜びたい気持ちと、「でもやっぱり販売終了なんだな」という悲しい気持ちと……SRフリークを自認する僕としては、なんとも複雑な気持ちなのである。
さて、そんな有終の美を飾るSR400だが、なぜここまでの支持を得ることができたのか? セミダブルクレードルフレームに空冷SOHC単気筒エンジンという、いかにもバイク然としたスタイリングや、小気味良い鼓動感を持った乗り味など、その魅力はいろいろあるが、43年間、基本的な機構やスタイリングを変えることなく「不変」を貫きとおしたことも大きなポイントだといえるだろう。
だけど、じつはSR400は、これまで4度のフルモデルチェンジをはじめ、細かな点も含めて、じつに多くのマイナーチェンジや仕様変更をおこなってきているのだ。実際に、初期型と最終モデルを見比べてみると、たしかに同じに見えるが、なんとなく雰囲気が違う……ということに気づくはず。
それもそのはずで、初期型は12Lのスリムな燃料タンクにフロントホイールは19インチ、サイドカバーやマフラーの形状も最終モデルとは微妙に違うし、シート表皮のパターンも異なる。もちろん、見た目だけでなく、エンジン内部や車体各部の変更点などを考慮すれば、じつは「初期型と最終モデルはまったく異なるモデルだ」と言っても、決して過言ではないのだ。
……と、すっかり前置きが長くなってしまったが、それでは一体、この43年間でSRはどれだけ変わったのか? また、変わらなかったのか? 各年式を見ながら、振り返っていきたい。
1978 SR400
すべてはここから始まった、記念すべき初期型モデル。
前述のとおり、フロントホイールは19インチで、燃料タンク容量は12Lと最終モデルと同じながら、形状は「スリムタンク」と通称されるその名の通り、細身となっている。キャブレターは強制開閉式。この年式のみ、グラブバーを装備していない点にも注目!
1978 SR500
SRはもともと同社のトレールモデル・XT500をベースにしている。ということで、当時は400とともに500もラインナップされていた。こちらは400に比べてロングストロークで、より深い鼓動感を味わえる。
400との外観状の違いは、ハンドルバーやシート。シートカウルがつき、スポーティな印象を持つ400に対し、500はアダルティな雰囲気を漂わせていた。しかし、その違いもこの年のみ。翌年からはシートカウルがつき、見た目の区別はほぼつかなくなってしまった。
1979 SR400SP
翌年、さっそくマイナーチェンジがおこなわれ、当時人気だったキャストホイールを装着。車名をSR400→SR400SPに変更した。
キャストホイールになったことで、(当時は)スポーティな印象になったが、じつはこのキャストホイールがめちゃくちゃ重い! なので、実際にスポーティになったのかどうかは……。
ちなみにワイズギアから発売されているキャストホイールは軽くなっていて、カスタムするならそちらをオススメします!
1982 SR400
モデルチェンジでキャストホイールにしたのはいいけれど、「スポークホイール仕様が欲しい!」という声が多かったようで、82年に限定仕様としてスポークホイールを履いたSR400が登場。
スポークホイール=クラシカルというイメージからなのか、初期型SR500を思わせるアップハンドル&カウルレスシートを採用し、SPとの差別化を図っていた。
1983 SR400
翌年になるとスポークホイール仕様がレギュラーモデルとして復活。カウル付きシートや低めのハンドルバーを採用し、こちらではスポーティなイメージを踏襲した。
また、この年からフロントフォークのセミエアサス化をはじめ、ピストンリングやオイルラインの見直し、ハロゲンヘッドライトの採用などがおこなわれている。
1983 SR400SP
SPも併売されたが、この年で終了。以降、純正モデルとしてキャストホイール仕様が発売されることはなかった。
1984 SR400
SR誕生7周年を記念して、1000台限定(400のみ)で登場。SR400 Final Edition Limitedにも採用されているサンバースト塗装は、ここではじめて登場する。燃料タンクの音叉マークも、このモデルが初である。
1985 SR400
初のフルモデルチェンジ。一般的には85~00年式を「2型」と呼ぶ。
大きな変更点は、よりクラシカルイメージを高めるためにフロントにドラムブレーキを採用。ホイールサイズをF19・R18→前後18インチとし、さらにバックステップを採用することで、ワインディングでの楽しさが増した。また、最終モデルまで続くフォークブーツも、この年から装着している。
燃料タンク容量が12→14Lにアップ。実用性を増した。
1988 SR400
扱いやすさを重視してキャブレターを強制開閉式から負圧式へ変更。合わせてエアクリーナーボックスの容量も拡大している。ちなみにこのキャブレターのダイヤフラムカバーが紫外線ですぐに割れてしまうのは有名な話。僕も何度も交換しました……。
他にドライブチェーンのサイズを530→428に変更。エンジンはメタルガスケットシリンダーヘッドの採用やカムシャフトへのパーコリューブライト処理などで、熟成を重ねている。
1992 SR400S
ヤマハの原点といえる市販車第1号・YA-1をイメージしたカラー「ミヤビマルーン」を採用したSR400Sを限定1000台で発売。
初期型は希少価値あり! 2型はカスタムベースとしても人気
今回は前編として、初期型と2型(前期)の歴史を振り返った。
初期型は現状、タマ数も少なく、中古市場で純正に近いスタイルであれば、プレミア価格がついている。とくに500は他の70年代の名車を思わせるようなプライスタグがついていることも珍しくない。
対して2型は生産年数も台数も多かったので、年式の割には未だに多くの中古車を見ることができる。価格もまだまだ安いので、カスタムベースととしても人気だ。
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