熟成期に入ったSR400……しかし、それでも変わり続ける
2021年にファイナルエディションを発表し、いよいよ国内での販売終了がアナウンスされたヤマハSR400。43年もの歴史のなかで、SRは「変わらないために変わり続けてきた稀有なモデル」だといえよう。
具体的にいえば、ティアドロップタンクに代表される美しい車体シルエットや空冷SOHC単気筒エンジン、さらにキックスタートやビッグシングル特有の鼓動感、意外なほど軽快なハンドリングなどは守りつつ、ホイールサイズやハンドル形状、エンジン内部のリフレッシュに、吸気システムなど……スーパースポーツのような劇的な変化はないが、しっかりと確実に、43年の時を経て進化を続けてきたのだ。
そんなSR400/500の変化の歴史をあらためて振り返る本企画。最終回となる今回は、吸気システムにFI(フューエルインジェクション)を採用した4型(2010年)から最終型の5型(2018年)、そしてファイナルエディションまでを一気に紹介しよう。
2010 SR400
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:174kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:19kW(26PS)/6500rpm ●最大トルク:29Nm(2.9kgm)/5500rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●当時新車価格:57万7500円
2008年の3型生産終了から1年のブランクを経て、「4型」としてフルモデルチェンジ。
排気ガス規制に対応するため、吸気システムにFI(フューエルインジェクション)を採用し、マフラー内部に触媒を装備。
燃料タンクの見た目は変わらないが、FIシステムに対応するため、底部の構造が大きく変わり、それ以前のキャブレターモデルとの互換性はなくなってしまった。また、燃料ポンプをサイドカバー内側に配置したため、バッテリーをシート下に移設。これにより、シートの互換性もなし。サイドカバーも少し大きく、膨らんだ形状となっている。
ルックスはほとんど変わらないが、4型と3型以前は大きく違っているのだ。
ちなみにこの記事では「2010年式」となっているが、実際に店頭に並んだのは2009年12月後半のこと。そのためごく少数だが、2009年に新車登録された4型が存在する。
2013 SR400 35th Anniversary Edition
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:174kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:19kW(26PS)/6500rpm ●最大トルク:29Nm(2.9kgm)/5500rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●当時新車価格:53万5500円
35周年記念モデルは特別カラーの外装をシルバーフレームに搭載し、受注期間限定で発売。
35年というロングセラーに対する謝恩価格として、レギュラーモデルよりも安い53万5500円(消費税5%込み)に設定された。
※レギュラーモデルは57万7500円
2014 SR400
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:174kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:19kW(26PS)/6500rpm ●最大トルク:29Nm(2.9kgm)/5500rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●当時新車価格:53万5500円
2014年は機構に変更はなく、カラーリングを一新し、ニューカラー3色のラインナップに。サイドカバーのエンブレムも変更された。
また、価格を前年に発売された35周年記念モデルと同じ53万5500円(消費税5%込み)に値下げした。
2015 SR400 YAMAHA60th Anniversary Special Edition
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:174kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:19kW(26PS)/6500rpm ●最大トルク:29Nm(2.9kgm)/5500rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●当時新車価格:58万3200円
ヤマハ創立60周年を記念して、2015年12月~2016年4月までの受注期間限定モデルとして発売。
イエロー×ブラックの「スピードブロック」カラーを燃料タンクに施し、タンク天面には専用エンブレムを配置。前後ハブとリムはブラック処理されている。
60周年記念モデルはSR400だけでなく、VMAXやボルト、マジェスティSなどにも設定された。
2016 SR400
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:174kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:19kW(26PS)/6500rpm ●最大トルク:29Nm(2.9kgm)/5500rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●当時新車価格:55万800円
継続カラーのブラックに加えて、ミニトレGT50/80をオマージュしたビンテージ感溢れるカラーリングが登場。サイドカバーのエンブレムもクラシカルな雰囲気になっている。
4型はこの年で最終。一旦生産終了がアナウンスされるも、反響の大きさから「後継モデルの開発」がヤマハ公式HPで発表される異例の事態となった。
2018 SR400
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:175kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:18kW(24PS)/6500rpm ●最大トルク:28Nm(2.9kgm)/3000rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●当時新車価格:57万2400円
またまた1年のブランクを経て、5型が登場。O2フィードバック制御の精度を向上させ、さらに車体左側にキャニスターを装備するなどで、排出ガス規制に適合。また、4型と見た目の変わらないマフラーは、音響解析技術によって低音と歯切れの良さをアップさせている。
ちなみに4型の最大トルクは29N・m/5500rpmだが、5型は28N・m/3000rpm。1N・mダウンしているとはいえ、2500rpmも低い回転数で最大トルクを発揮するため、より単気筒らしいトルク感モリモリの乗り味となっている。5型が高く評価されているポイントだ。
2018 SR400 40th Anniversary Edition
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:175kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:18kW(24PS)/6500rpm ●最大トルク:28Nm(2.9kgm)/3000rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●当時新車価格:69万1200円
5型発表と同時に40周年記念モデルを500台限定で発売。アニバーサリーモデル恒例ともいえるサンバースト塗装に、ゴールドのリムホイールを採用している。
2021 SR400 Final Edition(ダークグレー)
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:175kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:18kW(24PS)/6500rpm ●最大トルク:28Nm(2.9kgm)/3000rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●メーカー希望小売価格:60万5000円
そして2021年、ついにファイナルエディションが発売。ダークグレーはこれまでになかったカラーながらも、デザインはSRの定番ともいえるもの。SRらしく、それでいて最後に相応しい特別感を演出するものとなっている。
2021 SR400 Final Edition(ブルー)
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:175kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:18kW(24PS)/6500rpm ●最大トルク:28Nm(2.9kgm)/3000rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●メーカー希望小売価格:60万5000円
ブルーは2018年モデルに比べると、より深みがあるカラーとなっている。サイドカバーに「Final Edition」の文字が入れられ、このモデルが特別であることをアピールしている。
2021 SR400 Final Edition Limited
●全長×全幅×全高:2085×750×1110(mm)●軸間距離:1410mm ●シート高:790mm ●車両重量:175kg ●エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 ●排気量:399cc ●内径×行程:87.0×67.2(mm)●圧縮比:8.5:1 ●最高出力:18kW(24PS)/6500rpm ●最大トルク:28Nm(2.9kgm)/3000rpm ●点火方式:TCI(トランジスタ式) ●燃料供給:フューエルインジェクション ●燃料タンク容量:12L ●タイヤサイズ:F 90/100-18 / R 110/90-18 ●ブレーキ形式:F 油圧式ディスク / R 機械式ドラム ●メーカー希望小売価格:74万8000円(完売)
上の2台と同時に発表されたのが、1000台限定のリミテッド。ブラックを基調としたサンバースト塗装は、ファイナルに相応しい重厚感あふれるものとなっている。他にも本革調シート、真鍮エンブレム、ボディーカラーと合わせたカッパーブラウンのホイールなど、何もかもが特別。
即日完売も納得のクオリティである。
4型と5型は、まさに完熟。そしてファイナルエディションは、43年の集大成に相応しい
こうしてあらためて振り返ってみると、1型や2型では毎年のように変更が加えられ、3型では変更は最低限の細かなもの。そして、4型以降ではほとんどマイナーチェンジらしきものはおこなれず、ついに5型ではトルク感を大幅に増し、完成の域に達したといえよう。
時代の流れとはいえ、そんなバイクが消えてしまうのは、やはり寂しい限りだ。
国内販売は終わってしまうが、SRが日本を代表する名車であることに変わりはない。いま、SRに乗っている読者の方はぜひ大切に、これからも長く乗り続けていただきたいし、これからSRに乗りたいという方は新車に乗れるラストチャンス! ぜひぜひ、SR乗りとしての第一歩を踏み出してほしい。
もちろん中古車だって豊富だ。しかしタマ数が多く、年式も幅広いがために、市場は玉石混淆といった感は否めない。購入する際は、信頼できるお店に足を運ぶことを強くおすすめする。
ともあれ、SRは新車であろうが、中古車であろうが、素晴らしいバイクである。「43年間ありがとう。そして、これからもヨロシク」と、僕は心からそう言いたい。
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