バイクの高回転高出力化を支えてきた存在!

昔からバイクやクルマが好きな趣味人たちは「リッター馬力」で最新鋭マシンの実力を推し量っていました。

これはエンジンの最高出力を排気量1ℓ……1000ccあたりの数値に換算をするもので、例えば排気量が2ℓのクルマで200馬力なら「リッター100馬力」。25馬力の250バイクでも「リッター100馬力」となります。多少アバウトでも比較の目安にはなりますよね(笑)。

シビックタイプR

●クルマの世界では、自然吸気(NA)でリッター100馬力を超えれば一級のスポーツエンジン。中でも強烈な印象を残しているのが、1997年に登場した我らがホンダのシビック タイプR。専用開発された「B16B 98 spec.R」エンジンは185馬力を8200回転で発生し、なんとリッター116馬力を実現。こんなクルマが税抜き約200万円で売られていたなんて……

 

一般的にこの数値が高いほど高回転時のエンジン性能が優れているとされ、特に自然吸気のパワーユニットでは丹念な各部の革新&改良によって高回転高出力化を実現した証にもなったのです。

その進化の速度をバイク市販車で一気に加速させたのは、1982年にデビューしたホンダの初代VT250Fだと言っても過言ではないでしょう。

ホンダVT250F

●今見てもシビれるほどにカッコイイ初代VT250F。当時の4スト250モデルがなかなか30馬力の壁を越えられなかったところ、突然2ストヒーローRZ250とスペックで肩を並べたという衝撃はもの凄いものがありました。その後、同クラスの2ストは45馬力の世界へ。すると4ストは高回転高出力化を究める並列4気筒モデルで追従……(VTのVツインエンジンはハイパワー追求競争から外れ、穏健スポーツやクルーザーモデルへ)。ホントに面白かったなぁ(遠い目)

 

当時市場を席巻していた2ストロークモデルのヤマハRZ250と同じ最高出力35馬力というカタログ数値を引っさげて登場し、「4ストなのにリッター140馬力は凄い!」と、市場に一大センセーショナルを巻き起こしたことは同世代を生きていた人なら鮮烈な記憶として残っているはず。

ヤマハRZ250

●今見ても悶えるほどにカッコイイ初代RZ250。1970年代のオイルショックと環境諸規制の強化ぶりから「2ストはもう消えるかもしれない。ならば最後に究極のモデルを」との意気込みで開発され、1980年に登場したこの流麗なモデルがなければ空前のバイクブームは起きなかったはず。この2ストのヤマハが世に放った絶対王者に世界グランプリ4ストレーサー「NR」直系のメカニズムで対抗してきたVT……という構図がまたファンを熱くさせました

混合気の燃焼パワーを減耗させない液体パーツ

その後、ご存じのように4スト250モデルでもリッター180馬力は当たり前となり、今やスーパースポーツジャンルを中心にリッター200馬力を大きく超えるモデルも珍しくはなくなりました。

BMW M1000RR

●ジャパニーズスーパースポーツの十八番だったインライン4エンジンを搭載し、本家を凌駕する魅力を勝ち取ってきたBMW S1000RR。そちらをベースにクルマの世界で鳴らした“M”ブランドを与えられるべく、各部をモディファイして2021年に登場した「M1000RR」。S1000RRからさらに高回転化が推し進められ、最高出力は207馬力→212馬力へ……

 

ハイオクガソリン使用を前提にした高圧縮比化や緻密な燃料噴射制御、動弁機構の改良、摺動部分の抵抗低減……。性能向上に伴い高まるばかりの各種要件を進化改良で応えてきたミクロン単位の油膜。

メーカーの開発陣が総力を結集して積み上げてきたパワーユニットの高性能化(高効率化、低公害化も含め)を縁の下の力持ち的にサポートしてきたのがエンジンオイルでもあるのです。

では質問です。エンジンオイルは何から作られているのでしょうか?

……これは簡単ですね。ガソリンやLPG、灯油、軽油、アスファルトなどと同じく地底や海底の深くから掘り出された「原油」がおおもとで、そちらを製油所にて蒸留することにより生み出されている、れっきとした「石油製品」なのです。

基本的な特性が異なる「ベースオイル」を知る

加熱された原油が蒸気と化し、そちらが冷えて液化する温度や精製の工程、合成の過程ほかの違いによって、エンジンオイルの根幹を構成するベースオイルは大きく3種類に分類されています。

製油所のイメージカット

●100%化学合成油の原材料となるPAO(ポリαオレフィン)は原油蒸留時に「軽質留分」として取り出されるエチレンガスなどを合成することで得られます。鉱物油やVHVIは「重質留分」として取り出され、精製することで不純物を除去していきます

 

そちらは……そう、鉱物油、化学合成油、部分(化学)合成油の3つですね。

ライダーなら誰しも、いざ愛機へ注入すべきオイルを選ぼうとしたときにどれにしようか悩んだ経験があるのではないでしょうか。

の鉱物油とは大まかに言って原油から不純物をザッと取り除いて精製したもの。「ミネラル」とも「スタンダード」とも呼称され、必要十分な基本性能を確保しつつ、リーズナブルなお値段が嬉しい限り。

の化学合成油はとは真逆で高価ではあるものの性能はダントツ。それもそのはず、原油からの精製時に抽出された潤滑へ最適な成分を分子化したあと、改めて化学的に合成するという手間ひまをかけるため不純物もしっかり排除され、低温から高温まで常に安定した性能を発揮してくれるのです。「100%シンセティック」という称号はダテではありません。でもやっぱりお高い……(涙)。

そこでとがバランス良く配合された部分(化学)合成油の出番です。鉱物油に化学合成油を20~30%混ぜ合わせ(高度水素化分解油[VHVI]という油分を使う場合もあり)コストと性能をうまく両立させているのが「セミシンセティック」や「パートシンセティック」とも表記されている製品群。セレクトされているオーナー各位も多いはずです。

エンジンの快調さを維持する「5つの作用」

さて、ここで改めて質問。エンジンオイルの役割とは何でしょうか?

一般的に5つあるとされる作用をスラスラと全部言えたアナタは素晴らしい!

正解は①潤滑作用 ②密封作用 ③冷却作用 ④清浄作用 ⑤防錆(ぼうせい)作用ですね。

①と③、そして④くらいはパッと頭に浮かんだ人も多いはず。あらゆる部分で金属と金属がこすれ合っているエンジン内の摩擦抵抗を減らして円滑に動くようにし、そこで発生する摩擦熱はもちろん混合気の燃焼で出てくる熱、そして汚れ(燃えカス)までを吸収してくれるエンジンオイル。

さらには機関内部で生まれる水分や酸が原因となるサビや腐食を防ぎ(⑤)、ピストンとピストンリングの間のほか、各部にある摺動部のわずかな透き間を油膜が埋めることで燃焼ガスが抜けないようにし、パワーを維持してくれている……(②)のですから呆れるほどのマルチタスクぶり。

そりゃぁエンジンオイルの劣化=性能ダウン、かつ放置が過ぎると根本的に壊れかねない……ということも理解できますね。

オイルの力イメージ

●イメージしやすいピストンとシリンダー間の潤滑だけでなく、何十個とあるギヤが噛み合うもの凄いエネルギーを受け止め、分散させる働きもエンジンオイルは行わなければなりません

 

「バイクの心臓が壊れちゃう!? 怖い怖い怖い、じゃぁもうエンジンオイルは高性能な化学合成油の一択じゃん……」と思う人もいるかと。

確かに間違いではないのですけれど、エンジンオイルの性能はベースオイルだけで最終確定はいたしません。

じつは一般的な製品でベースオイルの占める割合は約80%。残りの2割……つまり約20%は多種多様な添加剤なのです。

性能をアップさせる添加剤のレシピは門外不出!

エンジンオイルに注入されている各種添加剤、主なものをザッと列記するだけで、消泡剤/酸化防止剤/摩擦調整剤/粘度指数向上剤/サビ止め剤etcetc……。

これら原材料の種類や品質、調合の比率、混ぜ合わせる順番やタイミングに至るまでが、各オイルメーカーの腕の見せ所でありトップシークレットである部分。

オイル交換イメージ

●極端な言い方をすれば、バイクライフとはエンジンオイル交換ライフ!? どんな排気量、どんなジャンル、どんなモデルでも内燃機関をパワーユニットにしているモーターサイクルならエンジンオイル交換からは逃げられません。だったらいろいろ試して楽しんでしまいましょう!

 

実際、ベースオイルが鉱物油や部分合成油だったとしても、それらの弱点を添加物で補うことは十分に可能ですので、バイクメーカーと有名ブランドor新興勢力ブランドとがコストと性能とのより高いバランス点を目指して開発にしのぎを削っているのです。

特にバイクの場合は大部分がエンジンオイルに浸される湿式クラッチを採用しているため、そちらを滑らせることなくエンジン内部は滑らかに……、という二律背反する高性能を狙わなくてはなりません。

一石二鳥のイメージ

●ひとつのオイルで高い潤滑性能と湿式クラッチのハイレベルな締結ぶりを両立させねばならないという、一石二鳥(ちょいとニュアンスは異なりますが)な世界を狙って日夜研究が進められているエンジンオイル。これって、ものすごいコトなのですよ〜

 

添加剤とベースオイルともに地道な進化改良が続けられ、今やリッター200馬力オーバーの市販車が当たり前にサーキットと一般公道を行き来できる時代となりました。

かくいう背景を踏まえつつ、次回は交換時期に関するアレコレを、お届けいたします!

 

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