MT-07をベースに、幅広い技量のライダーがサーキットで扱いきれることを目指して誕生したのが、このYZF-R7だ。センターブレースなどで剛性バランスを調整したフレーム/KYB製の倒立フォーク/ブレンボの純ラジアルマスターなどを採用。100万円を切る車両価格にも注目だ。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:松井愼 ●外部リンク:ヤマハ
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’22 ヤマハ YZF-R7 概要
スタイリング
【YAMAHA YZF-R7】■全長2070 全高1160 軸距1395 シート高835(各mm)車重188kg■水冷4スト2気筒DOHC4バルブ 688cc 73PS/8750rpm 6.8kgf-m/6500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量13L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色:青 黒 ●価格:99万9900円
【さまざまな工夫でスキニープロポーションを実現】MT-07のスチール製ダイヤモンドフレームをベースに、スイングアームピボットの上下をアルミ製センターブレースで補強。フロントカウルのM字ダクト内に新作のLEDバイファンクションヘッドライトを設けることで、YZF-Rシリーズで最もスリムな車幅を実現している。アンダーカバーはアルミ製で、最大バンク角は53°だ。
ライディングポジション
シート高はMT-07よりも30mm高いが、座面前方がスリムなので足着き性はまずまず。後退したステップと低めのセパレートハンドルで構成されるライディングポジションはバランス良し。[身長175cm/体重62kg]
[◯] 操縦性はスーパースポーツそのもの。シャーシの完成度高し
小排気量のYZF-R25/R3とMT-25/03が同時に開発されたのに対し、MT-07をベースに誕生したこのYZF-R7は、完全に後から設計された。その背景には欧米で盛んなツインズカップという草レースの存在がある。600cc前後の2気筒車がエントリーできるこのクラス、アプリリアのRS660やスズキのSV650などが参戦しており、そこで活躍するべく作られたのがこのYZF-R7というわけだ。
さて、その走りはというと、低回転域から扱いやすく快活なエンジンフィールにMT-07の面影を感じるものの、ハンドリングは完全にスーパースポーツのそれだ。フロントの接地感が非常に高く、まるでタイヤのラウンド形状が手に取るように分かるほどだ。そして、車体の傾きに応じて前輪からグングンと向きを変え、スロットルを開ければリアタイヤがググッと路面を捉える。前後のサスペンションだけでなくフレームのしなやかさも特徴的なMT-07に対し、YZF-R7はアルミツインスパーほどではないにせよ芯の通った剛性感があり、これをセンターブレースの追加程度で達成したことに感心せざるを得ない。なお、新設計の倒立フォークとR7に最適化されたリアショックの作動性は非常に良く、巡航時の乗り心地も優秀だ。
ブレンボの純ラジアルマスターシリンダーと、ラジアルマウント化されたフロントキャリパーによるブレーキ性能も秀逸だ。コントロール性の良さは街乗りレベルでも感じられるほか、高い速度域からガツンと利かせられるのは高剛性な倒立フォークがあるからこそ。なお、ライダーエイドな電子制御としてはABSのみであり、その介入レベルなど作動性については特に不満はない。
270度位相クランク採用の688cc水冷並列2気筒“CP2”エンジンは、ほぼMT-07そのままだ。最高出力73PSは、599cc並列4気筒のYZF-R6が約120PSだったことを考えると控えめだが、渋滞にハマってもストレスを感じないほどフレキシブルであり、またCP2エンジンでは初採用となるA&Sクラッチによりレバーの操作力が軽いのも魅力だ。
【ハイスロットルプーリー&2次減速比変更。スーパースポーツ的な味付けに】688ccの水冷パラツインは最高出力73PSも含めてMT-07と共通で、ハイスロットルプーリーの採用/ドリブンスプロケットを43→42Tに変更するなどしてスポーティな乗り味を演出。
【足回りはMT-07から極力流用しコスト削減】キャリパーはフロントがアドヴィックスのラジアルマウント、リアはニッシン製だ。リアサスペンションはリンク式のモノショックで、ショックユニットはバネレートと減衰特性をYZF-R7用に最適化している。プリロード7段階と伸び側減衰力が調整可能だ。
ブレンボ製のセミラジアルではなく純ラジアルマスターシリンダーの採用は、量産モデルでは初となる。ちなみにYZF-R1は’04年からブレンボのセミラジアル、’15年以降は上位モデルのMも含めてニッシン製を採用する。
フロントフォークはMT-07のφ41mm正立式から新設計のφ41mm倒立式フルアジャスタブルに。キャスター角を24.8°→23.7°と立てながらトレール量90mmを維持するため、フォークオフセットを40→35mmへと短縮している。
セパレートハンドルはシートおよびステップ位置とのバランスを考慮した絞り&垂れ角に。新作メーターは高精細なネガポジ反転液晶で、漆黒に見えるのが特徴。
【YZF-Rシリーズの遺伝子を随所に感じるスタイリング】タンクカバーはニーグリップエリアを深く絞り込みながら、MT-07と同じ13Lものタンク容量を確保。
ライダーシートは座面後方をワイドにして自由度を確保する。タンデムシートとテールランプはYZF-R1/R6から流用。
[△] やや薄らいでしまったベース車の自由自在感
どんな操縦でもスッと旋回体制に移行でき、バンク中のライン変更も自在なMT-07に対し、YZF-R7は速度域が高くなるほどしっかりとしたステップワークが必要に。とはいえ、スーパースポーツらしい操縦を学ぶにはいい教材とも言える。
[こんな人におすすめ] スポーティな走りを日常的に楽しめる優良車
YZF-R25/R3がツーリングも楽しめるスポーツモデルなのに対し、YZF-R7はライディングポジション/ハンドリングともスーパースポーツ寄りであり、イメージ的に近いのはカワサキのZX-25Rだ。サーキットデビューしたい人に自信を持って勧めたい。
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