Vストローム1050DE800/DEと、2023年には矢継ぎ早に新作を登場させ、世界最大のアドベンチャーブランドに成長したスズキのVストロームシリーズ。250ccクラスには、なんと既存の水冷ツインエンジンのVストローム250に加え、油冷単気筒エンジンを搭載したVストローム250SXが新たに加わることになった。9月27/28日にはスズキ二輪が長野県・嬬恋でこのVストローム250SXのメディア関係者向けの試乗会を開催。しかも、比較用に水冷ツインのVストローム250を用意し、スキー場をベースとした専用のオフロードコースも作る気合の入れよう。さてさてVストローム250SXはどんなバイクなのだろうか?

スズキ・Vストローム250SXのカラーリングは3色展開

カラーリングはチャンピオンイエローNo.2(左)、パールブレイズオレンジ(中)、グラススパークルブラック(右/ローダウンシート装着車)の3色展開。

Vストローム250SXは油冷シングルエンジンを搭載したスポーティなアドベンチャーバイク

スズキ・Vストローム250SXはオンロードの走りも軽快

Vストローム250SXの最大の特徴は、油冷という冷却方式を採用したシングルエンジンにある。この油冷単気筒エンジンはジクサーSF/250に搭載されているユニットでもあるのだが、水冷エンジンに比べてとにかく軽量コンパクトという特徴を持っている。

エンジンオイルを冷却媒体に使うためクーラント液やウォーターポンプ、ラジエターといった水冷システムのためのパーツが必要なく、そのぶん軽いという単純な理屈。それでいてしっかりオイルをシリンダーヘッドまで循環させてでエンジンの冷却を行うので空冷エンジンよりもハイパワー化が可能。

またエンジンが軽量コンパクトになると、相対的にフレームなどの軽量化が行え、既存の水冷ツインのVストローム250よりもなんと27kgも軽い、車両重量164kgを実現したというからすごい。実際にサイドスタンドを払ってマシンを起こしてみるとかなり軽い。走り出してみてもその印象は変わらず、ハンドリングにもしっかり軽快感が出ている。

スズキ・Vストローム250SXのスタイリング

Vストローム250SXはメーカー希望小売り価格56万9800円と既存の水冷ツインのVストローム250に対して7万7000円も安い!

 

V-STROM250SX/主要諸元■全長2180 全幅880 全高1355 軸距1440 シート高835(各㎜) 車重164㎏(装備)■油冷4ストSOHC単気筒 249cc 26ps/9300rpm 2.2kgf-m/7300rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量12ℓ ブレーキF=ディスク R=ディスク タイヤサイズF=100/90-19 R=140/70-17■メーカー希望小売り価格:56万9800円

スズキ・Vストローム250SXのスタイリング スズキ・Vストローム250SXのスタイリング スズキ・Vストローム250SXのスタイリング スズキ・Vストローム250SXのスタイリング

高速道路も快適なVストローム250SX

スズキ・Vストローム250SXはオンロードの走りも軽快

エンジン&メインフレームの仕様に関しては、ジクサーSF/250と一緒とのことだが、吸気まわりが変更されており、ジクサーSF/250に比べて単気筒らしい強めのエンジンパルスが楽しめるのもこのVストローム250SXの特徴だ。

水冷ツインのVストローム250は、パラレルツイン由来の伸び上がる様なエンジンフィーリングが特徴なものの、低速トルクに関しては若干希薄なところがあった。ところが新型のVストローム250SXは低回転域からトルクが出ており、エンジンパルスも強め。ワインディングではキビキビとスポーティに走ってくれる。

スズキ・Vストローム250SXはオンロードの走りも軽快

さらに高速道路へVストローム250SXを連れ出してみると、意外と高速巡航走行も快適であることにびっくり(失礼!)。軽量コンパクトなバイクは総じて高速走行時の安定性が悪く、ふらふらとして疲れやすいものだが、Vストローム250SXはフロント19インチの大径ホイールと長めにとった軸間距離のおかげでしっかり安定性が確保されており、120km/hくらいの高速巡航走行も快適なのだ。

スズキ・Vストローム250SXはオンロードの走りも軽快

最高速は、水冷ツインのVストローム250よりも、プラス10km/h速い。この油冷エンジン、よく回る!

林道ツーリングも楽しいVストローム250SX

スズキ・Vストローム250SXはオフロード走行も楽しめる

日本でよく見かけるダート林道ならVストローム250SXの走破性で楽勝である。少なくとも乗用車が走れるような林道で困ることはない。

 

250ccクラスで2枚看板となるVストロームシリーズ。水冷ツインのVストローム250に対して、キャラクターの方向性を大きく変えて、未舗装路での走破性をしっかり考慮しているのもVストローム250SXの特徴だ。

というのも水冷ツインのVストローム250は前後17インチホイールを採用し、どちらかというとロードバイクに近いキャラクター。17ℓタンクによる500kmを超える航続距離や、純正アクセサリーによる3パニアなど、舗装路上でのロングツーリングが得意なアドベンチャーバイクである。

水冷ツインのVストローム250と新型で油冷のVストローム250SX

19インチのフロントホイールでダート適正を高めた新型で油冷のVストローム250SX(左)と、前後17インチホイールの水冷ツインのVストローム250(右)。

 

一方の新型Vストローム250SXは、油冷エンジン由来の軽量コンパクトな車体でスポーツ性をアップ。さらにはフロントタイヤに19インチホイールを採用してダート林道レベルの未舗装路走行に対応している。

最低地上高は205mmと高めに確保され、ABSの設定もダートでの走行を加味した味付けになっている。まぁ、フロントフォークのストロークは120mmとやや少なめではあるのだが、結構なペースで走っても、フロントアップやジャンプをしない限り底突きしない印象。この走破性があれば林道ツーリングくらいのダート走行なら楽勝である。

スズキ・Vストローム250SXはオフロード走行も楽しめる

最低地上高に余裕があるから、ギャップを気にせずガンガン進むことができる。

 

ただ個人的に一番気に入ったのはポジション設定だ。特にスタンディングでのポジションがとりやすく、ステップ荷重や外足でのマシンの押さえ込みがしやすいのだ。ちょっと右のマフラーガードがスタンディング時に踵に接触するのはご愛嬌というところだが、この操りやすいポジションのおかげで、ちょっとしたスライドコントロールも可能だったりする。

スズキ・Vストローム250SXはオフロード走行も楽しめる

Vストローム250SXの足つき性&ポジション

スズキ・Vストローム250SXの足つき性

シート高は835mmで筆者の体格は172cm/75kg。

アドベンチャーバイクとしては低めだが、一般的なネイキッドモデルに比べるとちょっと高めのシート高835mm。筆者の体格で両足をつこうとすると4cmほど踵が浮く足着き性となった。ポジションはアドベンチャーバイクらしい高めのアイポイントで広い視界を確保しており気持ちいい。膝の曲がりも自然で窮屈感はない。

スズキ・Vストローム250SXの足つき性 スズキ・Vストローム250SXの足つき性

純正アクセサリーには、約25mm座面が下がるローシートも用意されている(25,520円/税込)。

スズキ・Vストローム250SXには足つき性をよくするローシートがある

2023年10月発売予定のローシート。25,520円/税込

体感的には1~1.5cmほど踵の浮き具合が減る印象で、妙にアンコが少なかったり、膝の曲がりが窮屈になるような不具合は感じない。

スズキ・Vストローム250SXには足つき性をよくするローシートがある

ローシート装着車。シート座面は約2.5cm低くなっているが大きくシルエットが崩れていないのがいい。

スズキ・Vストローム250SXには足つき性をよくするローシートがある スズキ・Vストローム250SXには足つき性をよくするローシートがある スズキ・Vストローム250SXには足つき性をよくするローシートがある

Vストローム250SXのディティール

スズキ・Vストローム250SXのディティール

油冷250cc単気筒エンジンは、ジクサー250シリーズと共用。吸気部分のみ新作してキャラクターを変更している。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

クチバシのようなデザインは“ビーク(クチバシ)デザインと呼ばれ、80年代のパリダカ全盛期のDRジータにそのルーツがある。最近アドベンチャーバイクではこのデザインを見かけるが、実はスズキが元祖なのだ。ヘッドライトのLEDユニットはジクサーシリーズと共用している。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

メーターの左には、スマートフォンなどへの給電のためにUSBタイプAのソケットを用意。定格出力は5V2Aで、ナビアプリを動かしながらの充電に対応している。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

880㎜のワイドなハンドルは、ダート走行時の抑え込みもしやすい。ハンドル切れ角は片側35度を確保。スチール製。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

小型のスクリーンは固定式で高さの調整機構はない。スクリーンの避風性は小ぶりな見た目どおり、悪くはないがそこそこといったところ。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

水冷ツインのVストローム250が前後17インチホイールなのに対し、新型のVストローム250SXはオフロード性能のためにフロント19インチをチョイス。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

フロントフォークのストローク量は120㎜とオンロードロードモデルよりは多少余裕があるくらい。ビーク(クチバシ)デザインとアンダーのダブルフェンダー仕様となっている。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

未舗装路走行を考慮し、ABSの制御介入を遅めにした専用のABSセッティングを採用。滑りやすい砂利道の上でブレーキをかけてもしっかり制動力を発揮する。ただしABSのカット機能はない。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

エンジン&メインフレームなど、ベースはジクサーシリーズとしながらも、フロントホイールをはじめ車種専用設計のパーツが意外と多く、しっかりコストをかけている。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

ダート走行時にエンジン下部がヒットしにくいよう、最低地上高は大きめの205mmに設定。その分ちょっとシートが高いのはいたしかたないところ。エンジン前側には小ぶりながらアンダーガードを装備している。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

ハンドガードも装備し、高速走行時の走行風のあたりを軽減。転倒時にレバー類を守るような強度はなさそうだが、林道走行時のブッシュよけくらいにはなる。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

燃料はレギュラー指定でタンク容量は12ℓ。WMTCモード値の燃費は34.5km/ℓなので、ワンタンクでの計算上の航続距離は414km。アドベンチャーバイクらしくロングレンジ設定だ。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

油冷のためのエンジンオイルを冷やすオイルクーラー。飛び石から本体を守るためにガードを装備している。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

シートは前後セパレートタイプ。ロングツーリング時の快適性を考慮し前後ともクッションを厚めにしている。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

二人乗り時のグラブバーを兼ねたリヤキャリアを標準装備。このグラブバーとタンデムシート座面を使えば、キャンプツーリングに使うような大型のシートバッグも積みやすかった。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

タンデムシートはキーで外れ、下にはETC車載器+αが収まるスペースがある。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

タンデムシート裏側には車載工具に加え、左右にヘルメットホルダーを装備している。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

テールまわりは二人乗り時の快適性のために大きめとするも、カウルのカラーリングの切れ目の位置を工夫することでコンパクトに見せている。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

灯火類の光源はウインカー以外はタマ切れの心配のないLEDを採用している。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

排気系はジクサーシリーズと共用しており、エキゾーストパイプの取り回しは下回しで、サイレンサーもデュアルテールエンド。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

安定性確保のためにスイングアームはジクサー比で48mmほど伸ばされ、軸間距離は95mmプラスの1440mmとなっている。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

日本仕様のタイヤにはブロックパターンが強めのマキシスのマックスプロア(MAXXPLORE)をチョイス。内部構造とタイヤパターンをVストローム250SX用に設計した専用品だ。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

リヤホイール軸上ストロークは、ベースモデルのジクサーシリーズの132mmに対して、11.7mmもアップし143.7mmに。もちろんダート性能アップのためである。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

Vストローム800DEと共用と思われるステップは、しっかりダート走行を意識したワイドステップになっていて、スタンディング走行時の荷重コントロールがしやすい。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

グリップのいいパターンのラバーパッドをステップに採用しているが、ぬかるみなどウエットなコンディションではラバーパッドを取り外した方がブーツへの食い付きがよくなり遥かにコントロール性がよくなる。

スズキ・Vストローム250SXのディティール

サイドスタンドの足掛かりは、後端と中間の2箇所あるのが秀逸! 体格に合わせて出しやすい方を選べるようになっている。シートがちょっと高めのVストローム250SXだけに嬉しい装備だ。

 

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