レッドバロンがメディア向けに開催した試乗会に、コンディション良好な数々の絶版車が登場! メカの解説とインプレを交えつつ、当時をプレイバックしよう。まず一発目はヤマハのR1-Z。2ストロークネイキッドというレアな存在で、独特なデザインが魅力の1台だ。
取材協力:ヤングマシン
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レプリカからネイキッドへ、時代の端境期に生まれた新生RZ
2ストローク、しかもネイキッド……! 2ストレーサーレプリカからネイキッドにブームが移り変わる直前の’80年代後半、数少ないながらも誕生したジャンルが「2ストネイキッド」だ。
レーサーレプリカからカウルを剥ぎ取り、より軽量化を促進。当時最速を誇った2ストエンジンは出力特性も低中速域寄りとし、ハンドルをやや高めとすることで、戦闘力と扱いやすさを両立していた。本格的なスポーツ走行こそレプリカに譲るものの、街中での実質的な速さは2ストネイキッドが上回るほどだった。
今回紹介するヤマハのR1-Zもそんな1台だ。初代デビューは'90年で、'88年型TZR250(2XT)の水冷並列ツインを独自のスチールトラスフレームに搭載。小口径キャブレターを採用したほか、2次減速比や点火時期を低中速寄りに変更している。
RZの車名はもちろん'80年にデビューした名車RZ250/350からネーミングされており、新時代のRZとして気合が感じられるモデルとなっているのだ。

↑試乗した車両は'91年型で走行距離は5万1600km。30年以上前の車両ながら、外観がキレイだ。
まず注目したいのはデザイン。既に1年前の'89年にカワサキから古典的フォルムのゼファー(400)が発売され、旋風を巻き起こしていた時期だ。そんな中、実にデザインが挑戦的。一応はオーソドックスな丸眼ヘッドライトを備えているものの、バンディット250/400を思わせるトラスフレームなどが実に先進的だ。
中でも見どころは車体後部のセクション。金属のサイドカバーからレプリカを思わせる張り出したテールカウル(それでいてシートはレプリカ風ならぬ一般的なダブルシート)。そして珍しい右2本出しチャンバーがトドメ(笑)!
まだフルカウルが全盛で、ゼファーなどのネイキッドは新潮流といえど「新しさ」を当時19歳の私は感じなかった。一方のR1-Zは「新しい時代が始まったな」となんとなく思ったものだ。

↑水冷2ストクランクケースリードバルブ並列2気筒は45psを発生。現行250トップであるZX-25Rの48psに次ぐ馬力ながら、乾燥重量はわずか134kgに過ぎない。

↑ベース車TZR250のアルミフレームに対し、端正なX字形状のスチール製トラスフレームを採用。リヤモノショックのリザーバータンクはエンジン左側にマウントされる。

↑フロントブレーキは、φ282mmディスク+対向4ポットキャリパーをダブルで装備。正立フロントフォークはφ38mmでプリロードの調整が可能だ。

↑カーボン巻きの2本出しサイレンサーが独特。チャンバーは大容量で前側で交差するデザインだ。スイングアームはスチール製の楕円形状とし、上側に補強が入る。

↑メーターはオーソドックスな2眼式。タコメーターはレッドゾーン1万1000rpm以降だ。インジケーターは逆Y字型に配置され、右下に燃料計を備える。
意外にも足着き性がバツグン!
またがってみると、足着きのよさに気づく。レプリカはシートが高く、足着きが今一つのモデルも多いが、R1-Zは両足がベッタリ着くのだ。車体が軽いため、安心感が高く、もちろん取り回しもラクチンだ。
なお、R-1Zの純正ハンドルは低く垂れて上体がかなり前傾するが、試乗した車両はハンドルがカスタムされ、アップになっている。ライポジは参考として紹介したい。

↑試乗車はアップハンドルに変更されているため、上半身は前傾するものの、さほどツラくない。ステップ位置はノーマルながらバック気味でスポーツできる設定だ。シートはややソリッドな座り心地。

↑シート高が775mmと低い上に、車体もスリムなので足着き性は優秀。身長177cm&体重61kgでは、両足がベッタリ着き、ヒザが曲がるほど余裕がある。
2ストらしい加速感ながら、ピーキーすぎない
始動はキックスタートのみ。一発で簡単に始動でき、エンジンの状態がよさそうだ。走り出すと、低速域から違和感なくフツーに走れる。一般的に2ストレプリカは低速域でトルクがなく、ゼロ発進で気を遣うものだが、R1-Zなら問題ない。
そして5000~6000rpm以降は2ストらしいパワーを発揮! 4ストロークの250ccでは絶対味わえない、鋭く二次曲線的な加速だ。軽い車体と相まって、フワッと浮き上がるような加速感が楽しい。
とはいえ、2ストレプリカのような「これは無理かも!」と思わせるピーキーな加速ではなく、メーターを見ると実際の速度はそれほどでもなかったりする。非日常ではなく、日常から2ストらしい走りを楽しめるハズだ。

↑振動を伴いながら加速! 低中速トルクが充実しているので、2ストながら気楽に走れる。
ハンドリングも軽やか、過激さは控え目で、操るのが楽しい
車体もレプリカのようなガチガチ感がない。フレームは剛性を落としていると思われ、サス設定もソフト気味でよく動く。軽い車体によって、倒しこみは軽く、切り返しも軽快。前後17インチタイヤは、フロントから切れ込んだりすることもなく、前後が一体になって曲がっていく。ピーキー過ぎない出力特性と相まって、2ストとしてはかなり扱いやすいハンドリングだ。
一方、フロントブレーキは250ながらWディスクと豪華。ただ効きが今一つマイルドだった。個体差かもしれないが、ここはカスタムしてもいいのでは、なんて思った。
いずれにせよ、絶対的な速さではなく、FUNライドを味わえる、操って楽しい1台。とはいえ、R1-Zのカタログに「ナイフのような」というコピーがあるとおり、確かな鋭さを持ち合わせながら、扱いやすさも兼ね備える。R1-Zは、そんな珍しいマシンと言えるだろう。
R1-Z('91年型) 主要諸元
・全長×全幅×全高:2005×700×1040mm
・ホイールベース:1380mm
・シート高:775mm
・車両重量:133kg(乾燥)
・エジンン:水冷2ストローククランクケースリードバルブ並列2気筒249cc
・最高出力:45ps/9500rpm
・最大トルク:3.7kg-m/8500rpm
・燃料タンク容量:16L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/70-17 R=140/70-17