スズキは、同社を代表するフラッグシップ・スーパースポーツ「GSX-R1000」「GSX-R1000R」のエンジンと電子制御を大幅改良し、2026年より欧州/北米をはじめ世界各国で発売すると発表した。各国にはもちろん日本も含まれていると見て間違いない!
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:スズキGSX-R 40周年スペシャルサイト
Contents
スズキCNチャレンジのファクトリーマシンと同じウイングを装着(一部地域でオプション設定)
スズキは、初代GSX-R750から40周年にあたる今年、「GSX-R1000」「GSX-R1000R」の復活を宣言した。GSX-Rシリーズはこれまでに累計で120万台以上を生産したスーパースポーツのビッグネームで、世界耐久選手権では20回のタイトル獲得、スーパーバイク世界選手権や全日本ロードレースでも数々の栄光を勝ち取ってきた。
現行モデルは北米など一部でのみ存続していたが、初出は2017年と発売から時間が経っており、最新の排出ガス規制に適合することなく日本や欧州では2021~2022年を最後に姿を消していた。
そんなGSX-R1000/Rがいよいよ復活する。
GSX-R1000
今回のモデルチェンジでは、“The King of Sportbikes”としての⾼い性能を犠牲にすることなく、排ガス規制と騒⾳規制に対応し、エンジン内部部品の徹底的な⾒直しに加えて、最新の電⼦制御システムや、軽量・コンパクトで信頼性が⾼く、幅広い温度特性を持つエリーパワー(ELIIY Power)製のリチウムイオンバッテリーを採⽤することで、さらなる進化を遂げた。
これらの進化には、2024年の鈴鹿8耐に復活参戦を遂げたGSX-R1000Rの技術が反映されているのは想像に難くない。CNチャレンジでは、現行モデルをベースにバイオ混合燃料や再生素材を用いた外装、タイヤなどといったサステナブルアイテムを用い、環境性能を高めつつパフォーマンスを発揮するための技術が磨かれ、その中でエリーパワー製のバッテリーも使用された。
最新型では、エンジンや電子制御の大幅改良だけでなく、象徴的な外装パーツであるカーボン製ウイングレットはCNチャレンジのマシンが装着していたのと同じもの。これをオプション設定するとともに、一部地域では装着した状態で販売するという。
ちなみに日本では、新型GSX-R1000Rの発表にともないGSX-R 40周年記念スペシャルサイトを更新。ウイングレットとシングルシートはオプション装着状態と表記していることから、日本仕様ではウイングレットをオプション扱いとする可能性が高そうだ。
カーボン製のウイングレットはスズキCNチャレンジのレーシングマシンと同じ。
具体的な発売スケジュールは「2026年より欧州/北米をはじめ世界各国で販売を開始」となっているので、日本でも来年の今頃には鈴鹿8耐を走る最新型GSX-R1000Rの姿を見ることができるかもしれない。
GSX-R1000シリーズは、2001年に当時のGSX-R750のエンジンをボア・ストロークアップすることで1000cc化し、ロングストローク4気筒のスーパースポーツという独自路線でファンを生んだ。2003年に大幅パワーアップとフレーム剛性アップを受けてトップパフォーマーとしての確固たる地位を築き、2005年モデル(通称K5)で伝説的なハイパフォーマンスかつ軽量なマシンとして最強の名をほしいままに。その後もエンジンの刷新などを受けながら2017年に現行モデルへとフルモデルチェンジした。
現行モデルは当時最新世代の電子制御技術が盛り込まれるとともに、剛性をあえて抑え気味にしたフレームを採用するなどMotoGPマシンGSX-RRとの類似点を見いだすこともできる。バルブ駆動には吸気側にVVT(バリアブルバルブタイミング)という可変バルブタイミング機構を仕込み、これが遠心力による機械的な作動でエンジン出力特性を変化させることも注目された。じつはこれもV4エンジンを搭載していたかつてのMotoGPマシン・GSV-Rから転用された技術だ。
このようにレースと切っても切り離せないのがGSX-R1000/Rであり、今回も海外向けリリースではSERIUS FUN(シリアス・ファン)という『サーキットを真剣に楽しむためのマシン』をイメージさせるキャッチコピーが付いているのだ。
エンジンは内部部品などを全面改良
実績のある並列4気筒エンジンは、インジェクター、シリンダーヘッド、カムシャフト、バルブ、鍛造ピストン、クランクシャフトなど主要部品のほぼ全てを全面改良。最新の厳しい排ガス/騒音規制をクリアしながら、ハイパフォーマンスと耐久性の向上を実現した。
新しいクランクシャフトは厚みを増したクランクジャーナルで高負荷に対する耐久性を向上。これに合わせてクランクケースの設計変更がなされた。圧縮比は13.2→13.8へと高められ、ピストンヘッドは排気バルブの大径化(24mm→25mm)にともない形状変更を受けた。
吸気バルブの作動タイミングを可変するSR-VVTは引き続き採用し、バルブの最大リフト量は変えず、リフトカーブを変更することでカムシャフトオーバーラップを減らした。これにより、排出ガスのクリーン化や慣性加給による充填効率の向上が実現しているはずだ。
これらの結果、厳しい排ガス規制などに適合しつつ従来の最高出力は従来の202psから195psに。とはいえ、ハヤブサがユーロ5に適合した際には最高出力をダウンしながら実質的な加速力といったパフォーマンスは高めていたことから、最高出力の数値だけで判断するのは早計だろう。
カムシャフトオーバーラップを減らしつつ、最大リフト量はキープ。
サークリップなど細かい部分に変更を受けたピストンまわり。
1番と4番のインテークはシングルステージのショートファンネルを採用。あえて2番/3番と違いを作ることで過渡特性を改善している。
触媒の位置などを見直したマフラーはスリムな形状を実現。
このほかフィンガーフォロワーロッカーアームやセカンダリーインジェクター、スズキクラッチアシストシステム(SCAS)などは引き続き採用。プライマリーインジェクターは孔数を10→8とした。
シリンダーヘッドの吸排気ポートはモディファイを受け、ヘッドガスケットも変更。ショートスカートにDLCコートを施したピストンはサークリップなど細かい変更を受けている。耐久レースなど厳しい環境下で使用されることを想定し、カムチェーンの幅を広く、また排気システムの形状や触媒類の配置を見直すことで、排ガス規制への対応と高い出力性能を両立した。また、レイアウトを変更したことでマフラーボディがスリムでスタイリッシュなデザインとなっている。スロットルボアはφ46mmから48mmに大径化された。
今回のモデルチェンジで新設計になったエンジン内部部品が黄色になっている部分だ。
カーボン製ウイングレットはCNチャレンジのレーシングマシンと同じ!
車体では、軽量・コンパクトで高剛性なアルミツインスパーフレームとブレース付きアルミスイングアームを継続採用。ボルトオンタイプのサブフレームも変更はない。
定評のある軽量・コンパクト、高剛性なフレームは従来型から継承。
車体まわりで新しいのはカーボン製ウイングレットだろう。これは鈴鹿8耐を走るスズキCNチャレンジのレース仕様GSX-R1000Rが採用しているものと全く同じもので、車体にダウンフォースを発生させることでスタビリティを向上し、コーナーからの立ち上がり時にフロントのリフトを抑制することでスムーズな加速を実現した。
カーボン製ウイングレット。
軽量6本スポークのアルミ鋳造ホイールやブリヂストン製バトラックスレーシングRS11、φ320mmダブルディスクにラジアルマウントキャリパーを組み合わせる足まわりは変わらずトップパフォーマーの走りを支える。
ちなみにスペック表を見る限り、GSX-R1000とGSX-R1000Rの装備の違いは、リアショックにSHOWA BFRC-liteを採用しているのがRということ以外にない模様だ。
フロントリフト制御を追加した電子制御
スズキの最新電子制御システムであるS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)は、IMUとホイール回転速度センサーにより車体姿勢や車速を検出し、バンク角や速度に合わせて駆動力をコントロールする「ロールトルクコントロール」を採用。これに加速中のフロントホイールの浮き上がりを抑制するリフトリミッター、トラクションコントロールを統合して制御するシステムは「スマートTLRシステム」と名付けられた。
IMUによって3方向の加速Gと回転加速を検知し、車両の制御に生かしている。
電子制御スロットルや双方向クイックシフター、バンク角に応じてブレーキの液圧をコントロールするバンク角対応ABS=モーショントラックブレーキシステムなどは継続採用。スズキの定番である、セルボタンをワンプッシュするだけでエンジンが始動するまでセルモーターが回る“スズキイージースタートシステム”や、発進時にクラッチをつなごうとした際にエンジン回転がわずかに上昇することで発進加速をサポートするローRPMアシストももちろん完備している。
メーターは従来型から反転表示のLCDパネルを継承。
このほか、スズキCNチャレンジに車載バッテリーやサステナブルなピット電源を供給したエリーパワーからは、リチウムイオンバッテリーを新採用。リチウムイオンバッテリーは軽量かつ高温でも安定した性能を発揮し、自然放電も少ないのが特徴だ。
エリーパワー製のリチウムイオンバッテリーを新採用。
40周年記念グラフィック&エンブレム!
新型GSX-R1000/Rは、シリーズ40周年を記念して車体の側面やタンク上部、キーマスコットに40周年記念グラフィックやエンブレムを施している。また、シートやマフラーに『GSX-R』ロゴもあしらわれる。
40周年記念グラフィック。
タンク上面にも。
往年のイメージを想起させるRロゴ。
キーにも40周年記念ロゴを配置。
車体カラーは、GSX-Rの王道と言える『パールビガーブルー×パールテックホワイト(Pearl Vigor Blue / Pearl Tech White)』、ラッキーストライクスズキのRGV-Γを思わせる『キャンディダーリングレッド×パールテックホワイト(Candy Daring Red / Pearl Tech White)』、HBカラーをオマージュしたかのような『パールイグナイトイエロー×メタリックマットステラーブルー(Pearl Ignite Yellow / Metallic Mat Stellar Blue)』の3色だ。
2000年にイタリアスズキが製作したスペシャルカラーエディション。1993年にケビン・シュワンツがチャンピオンを獲得したマシンがモチーフになっており、配色パターンは異なるものの使用している色が今回の最新カラーのモチーフになっているように見える。
1993年にWGP500でチャンピオンを獲得したケビン・シュワンツ。ゼッケン34は鈴菌感染者にとって永遠の憧れだ。ゴールド&ブラックのストライプが新型GSX-R1000Rの車体色にも引き継がれている(と思われる)。
1983年に鈴鹿8耐を制したGS1000R[XR41]が纏っていたHB(ハーベー)カラー。赤いシートとブルーのストライプが特徴的だ。
1984年のGSX-R(400)などがレプリカカラーを採用していた。新型GSX-R1000のイエローもパターンは異なるが、赤シートを除く色の組み合わせは似ているように見える。
ちなみに、GSX-R(400)から数えると41周年じゃないか、という声もあると思うが、グローバルでの登場という意味では初代GSX-R750から数えるのが一般的なようである。
SUZUKI GSX-R1000R[2026 model]
※写真は全てGSX-R1000R
SUZUKI GSX-R1000R[2026 model]Pearl Vigor Blue / Pearl Tech White
SUZUKI GSX-R1000R[2026 model]Candy Daring Red / Pearl Tech White
SUZUKI GSX-R1000R[2026 model]Pearl Ignite Yellow / Metallic Mat Stellar Blue
車名 | GSX-R1000 / GSX-R1000R |
全長×全幅×全高 | 2075×705×1145mm |
軸距 | 1420mm |
最低地上高 | 130mm |
シート高 | 825mm |
キャスター/トレール | 23°20′/95mm |
装備重量 | 203kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ |
総排気量 | 1000cc |
内径×行程 | 76.0×55.1mm |
圧縮比 | 13.8:1 |
最高出力 | 195ps/13200rpm |
最大トルク | 11.22kgf・m/11000rpm |
変速機 | 常時噛合式6段リターン |
燃料タンク容量 | 16L |
タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 |
タイヤサイズ後 | 190/55ZR17 |
ブレーキ前 | φ320mmダブルディスク+4ポットキャリパー |
ブレーキ後 | φ220mmディスク+1ポットキャリパー |
価格 | 未発表 |
発売時期 | 欧州、北米を中心に2026年より順次 |
※諸元は欧州仕様
GSX-R1000 写真ギャラリー
【動画】GSX-R1000R | Official Promotional Video | Suzuki
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
WEB YOUNG MACHINE - NAIGAI PUBLISHING, Co., Ltd. All rights reserved.