2025年6月刊行の『ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選』より、オフの名車をまとめてみた。単なるモデル紹介ではなく、当時のライダーにとってそれぞれがどんな存在だったのか、文化や時代性を含めて振り返ろう。前編ではパリダカレプリカマシンを紹介する。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真:編集部/YM Archives
浪漫の塊だったレプリカ
年末、あるいは正月にフランスのパリをスタートし、アフリカ大陸を走破してセネガルのダカールを目指す「パリ・ダカールラリー」(2009年からはコースを南米に移して開催)。1978年に始まった当初はラリー好きのフランス人による“壮大なイベントレース”だったが、1981年にFIA(国際自動車連盟)とFIM(国際モーターサイクリズム連盟)の公認を獲得してからは各メーカーのワークスチームも参戦するようになり、世界中から注目されるメジャーレースとなった。
ホンダは、第4回大会の’82年に単気筒のXR500をベースにしたレーサー・XR500Rで優勝したが、1983年にBMWが投入した800cc(後に1000cc)水平対向2気筒のファクトリーマシンは、1985年まで3年連続優勝という強さを示す。パリ・ダカはスピード競争になっていて、重くても大排気量のツインのほうが有利だったのだ。
そこでホンダは、XLV750Rの水冷SOHC3バルブ45度V型2気筒を4バルブ化して搭載したワークスレーサーのNXRを開発。初めて投入された’86年から、ライバルのBMW/ヤマハ/カジバ、後に加わったスズキと激闘を繰り広げ、1989年まで4年連続で優勝するという快挙を成し遂げた。
そして1988年、そのNXRの技術をフィードバックした市販車・アフリカツイン(欧州名:XRV650)が発売される。さすがにその大きさから国内では限定車扱いだったが、モデルチェンジを繰り返して2000年まで販売された。
1988 HONDA Africa Twin[RD03]:500台限定で登場したチャンピオンレプリカ
ロードスポーツのブロスと同じ水冷52度Vツインを角断面ダブルクレードルフレームに搭載。大容量24Lの燃料タンクと一体にデザインされた大型フェアリグ、アルミ製アンダーガードがNXRのスタイルを彷彿させる。
主要諸元■水冷4ストV型2気筒SOHC3バルブ 647cc 52ps/7500rpm 5.7kg-m/6000rpm 195kg ■タイヤF=90/90-21 R=130/90-17 74万9000円 1988年
1988 HONDA Africa Twin[RD03]
1990 HONDA Africa Twin[RD04]
1990年に排気量を647→742ccにアップするとともに、フェアリングを大型化。写真の’92年型はデジタルトリップメーターを装備する。
1992 HONDA Africa Twin[RD04]
1993 HONDA Africa Twin[RD07]
フレームやサスペンションを新設計するとともにデザインも一新した’93年型。’95年にはカウルとスクリーンの形状を変更している。
1993 HONDA Africa Twin[RD07]
1986 HONDA NXR750:パリダカ4連覇の伝説的マシン
1984年秋にプロジェクトチームが結成され、1986年の優勝を目指して開発されたワークスマシン。エンジンはダートトラックレーサーRS750Dのノウハウを生かしたもので、1989年型では最高速度177km/hをマークした。
主要諸元■空冷4ストV型2気筒SOHC4バルブ 779.1cc 75ps/7000rpm以上 8.29kg-m/5500rpm 128kg以下 ■タイヤF=19(21) R=18 競技専用車 1989年
1986 HONDA NXR750
1985 HONDA XL600R ファラオ
エジプトの砂漠を走るラリーとして1982年に始まったファラオラリーは、パリ・ダカに次ぐ規模を誇った国際レース。そのファラオラリーに出場したワークスマシンのレプリカがXL600Rファラオだ。エンジンはSOHC4バルブ単気筒ながら、ツインキャブを採用することで低中速トルクと42psのパワーを両立。国産のオフロードバイクで初めてのチューブレスタイヤ付きアルミスポークホイールなど、ラリーレイドらしいメカニズムを備える。
主要諸元■空冷4スト単気筒 591cc 42ps/6500rpm 4.8kg-m/6000rpm 156kg 54万8000円 1985年

1985 HONDA XL600R ファラオ
日本人がダカール・ラリーに参戦!
2026年1月3日~17日に開催されたダカール・ラリー2026に、藤原慎也が出場した。藤原はトライアルライダーとして名を馳せたが、2024年より世界ラリーレイド選手権に参加し、経験を積んできた。今回駆ったのはホンダCRF450RX RALLY。
YAMAHA XTシリーズ:他にもあったパリダカの名車たち
ヤマハは、当時のフランスの現地法人であったソノートヤマハがパリダカの1978年第1回大会から参加。マシンは、大型燃料タンクなどのラリー装備を追加しただけのXT500だったが、2年連続して優勝する。
その後、XTシリーズは’82年のXT550Jを経て、1983年にパリダカレーサーのレプリカであるXT600Zテネレへと発展した。ちなみにテネレとは、パリダカのルート上になったニジェール共和国の砂漠の名前に由来したものだ。
一方、パリダカは第3回大会以降、BMWが3連覇するなどハイスピード時代を迎えていたが、1985年の第7回大会でXT600Zの排気量を660ccに拡大したレーサーが2位に入る快挙を成し遂げている。
1983 XT600Z Ténéré:30Lタンクのモンスター
ホンダのVLX750Rが発売された翌月の1983年9月に登場したXT600Zテネレ。エンジンはXT550のボアを拡大した空冷SOHC4バルブ単気筒で、リンク式モノクロスサスペンションを備えた車体に搭載。パリダカレーサーを思わせる容量30Lの巨大な燃料タンクが話題に。その後、1986年型(写真奥)でセルスターターを新採用。さらに、1988年型(写真手前)でタンク容量を23Lに減らす一方、ボディマウントのカウルを採用してレプリカ度をさらに増して行った。
主要諸元■空冷4スト単気筒SOHC4バルブ 595cc 40ps/6500rpm 4.7kg-m/ 5500rpm 138kg F=3.00-21 R=4.60-18 51万円 1983年
1988 YAMAHA XT600Z Ténéré
1985 FZ750 Ténéré:FZ750の4気筒エンジンでパリダカに挑戦
ますますハイスピード化するパリダカに1986年、ヤマハはXT600テネレの車体にFZ750の水冷DOHC5バルブ並列4気筒を搭載したFZ750テネレを投入。XTよりも60kgほど重かったが、12位に入る健闘を見せた。さらに翌’87年にはFZ920テネレが7位に入っている。

1985 YAMAHA FZ750 Ténéré
1989 XTZ750 SuperTénéré:2気筒でコンパクト化
ハイスピード時代を迎えたラリーレイドで勝てるマシンとして1989年に発売。エンジンは水冷DOHC5バルブ並列2気筒で、シリンダーを45度前傾させることでコンパクトさと低重心を両立している。1990年のパリダカでは2位、1991年には優勝を勝ち取っている。
主要諸元■水冷4スト並列2気筒DOHC5バルブ 749cc 70ps/7500rpm 6.8kg-m/6750rpm 195kg F=90/90-21 R=140/80-17 輸出専用車 1989年
1989 YAMAHA XTZ750 SuperTénéré
SUZUKI DRシリーズ
スズキのDRシリーズは、1981年に4スト単気筒を搭載したエンデューロマシンのDR400と、その公道仕様のDR400Sでスタート。その後、バハ1000などで活躍したDR500/500Sを経て、1985年にDR600/600Sに発展。1990年に650となり、現在までDR650SEとして生産が続けられている。一方、パリダカなどで活躍したワークスラリーレーサー・DR-Zのレプリカとして、1988年にDR750Sビッグが登場。1990年には800となった。
1985 SUZUKI DR-Zeta Rally
フロントカウルがくちばしのように見えることから”ファラオの怪鳥”と呼ばれたDRジータ。単気筒ながら2気筒勢に対して善戦した。
1985 SUZUKI DR-Zeta Rally
1990 DR800S:世界最大のビッグシングル
パリダカやファラオラリーで活躍したワークスマシン・DRジータのレプリカモデル。エンジンは油冷SOHC4バルブ単気筒で、排気量はスズキのDRシリーズだけでなく、量産バイクの単気筒エンジンとしては世界最大の779ccを誇る。ちなみにこのエンジンは、欧州で流行したシングルのロードレースでも活躍。元GPレーサーのロベルト・ガリーナは、自身のシングルレーサーの公道バージョンであるガリーナTGA6S1まで市販している。
主要諸元■油冷4スト単気筒SOHC4バルブ 779cc 52.5ps/7000rpm 6.06kg-m/5500rpm 185kg F=90/90-21 R=130/80-17 輸出専用車 1990年
1990 SUZUKI DR800S
1988 SUZUKI DR750S
DRビッグの初代が’88年に登場した750。排気量は727ccで、リアブレーキはドラム式。
1988 SUZUKI DR750S
KAWASAKI KLRシリーズ
カワサキは、ラリーよりもエンデューロレースに積極的で、水冷4スト単気筒を搭載したエンデューロレプリカのKLR600(国内はKL600R)を1984年に発売。1987年には排気量をアップするとともに、フレームマウントのフェアリングや23L入りの大型燃料タンクを備えたKLR650(国内も同じ車名)へと進化した。また、1989年にはKLR650をベースにしたデュアルパーパスツアラーのTengai(天涯)が登場。ヨーロッパで高い人気を博した。
1989 KAWASAKI Tengai
燃料タンクと連続性のある大型カウルを備えたフォルムはラリーレイドレプリカのようだが、フロントのダウンフェンダーから分かるように走りはオンロード寄り。フロントウインカーはカウルにマウントされている。
主要諸元■水冷4スト単気筒DOHC4バルブ 651cc 48ps/6500rpm 5.6kg-m/5500rpm 159kg F=90/90-21 R=130/80-17 輸出専用車 1989年
1989 KAWASAKI Tengai
1984 KAWASAKI KLR600
新開発の水冷DOHC4バルブ単気筒を搭載。オートデコンプ機構やフラットバルブ式CVキャブなど、先進のメカを採用していた。
1984 KAWASAKI KLR600
1987 KAWASAKI KLR650
600のボア×ストロークを拡大し、排気量を564→651ccにアップ。角型ヘッドライト内蔵のカウリングはフレームマウント式だ。
1987 KAWASAKI KLR650
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