2023年のEICMAでアンベールされたばかりのGSX-S1000GX。2023年11月末、スズキはポルトガルにてGSX-S1000GXの「WORLDWIDE PRESS TEST RIDE(世界プレス試乗会)」を大々的に開催。世界中から50名近いジャーナリストが集められ、日本からは鈴木大五郎氏と、僕こと谷田貝 洋暁の2人が参加することになった。ちなみにこのGSX-S1000GX、渡欧の時点では日本での発売に関してのアナウンスはなかったが、2024年1月25日に早くも国内販売されることが決定! そんなホットなGSX-S1000GX「世界プレス試乗会」の模様を数回にわたってお伝えしよう。
ポルトガルでどんなバイクに乗るかわからない!?
今回のGSX-S1000GX海外試乗会に関して、スズキ二輪の広報さんから連絡が来たのは10月初旬のこと。「スケジュールの確認なのですが、11月下旬頃の予定は空いてますか?」 ってのがファーストコンタクトだった。コチトラしがないフリーランスのライター、「ちょっと今、運転中でスケジュールを確認できないんですが、そんな2ヶ月先の予定なんかまったくの白紙ですよ」なんて感じの受け応えをハンズフリーでしたら、「内容は海外試乗で、行き先はポルトガルになります」、なんて感じのやり取りだった。
ちなみにこのスズキ二輪の広報さんとは、僕が二輪雑誌の編集長をしていた頃からのお付き合い。2023春のVストローム800DE試乗会でも一緒に渡欧した方だが、試乗会初日からマシンを派手にコカしただけに“もうこの手の話は来ないだろうなぁ”なんて思っていただけにうれしいかぎり。
ただ、試乗するモデルに関しては車名も概要もしばらく公言できないのだという。「えっと、レーシングスーツは必要ですか?」。編集者あがりの僕にオファーが来ている以上、スーパースポーツ的なレーシングスキルが求められるモデルではないと思うが念の為聞いてみる。「……詳しい話はできないのですが、レーシングスーツは必要ないと思います」なんて具合で、本当にどんなバイクに乗るのか? その時にはまったく情報がなかったのだ。
その後、10月下旬に行われた「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」でもスズキブースを訪れた際も「来月下旬の試乗会よろしくおねがいします」なんて別の広報さんから声をかけられたものの、どんなモデルかに関しては、「まだ言えません(笑)。11月頭のEICMAで発表します」なんて感じで、やっぱり車名すらわからない(笑)。
困るのは、この手の海外試乗の場合、空港からの現地までの移動費、宿泊費、食事代、保険料など、いわゆる「アゴ」「アシ」「マクラ」はメーカーさん持ちなのだが、渡航そのものにギャラは発生しないのが普通。つまり、 ライターとしてお金を稼ぐには普段からお付き合いのある二輪雑誌やウェブ媒体に試乗記事を売り歩いて自分で稼がなきゃならない。当然、このForRの記事もそんなお仕事の一環だ。
それに海外試乗会に連れて行ってもらったものの、“どこも記事を買ってくれませんでした!”では済ませられないので、さっさと営業をかけたいのだが、出版社に営業しようにも車名もどんなバイクかもわからないようでは交渉しにくいことこの上ない(笑)。
「スズキさんの海外試乗に参加することになりました。行き先はポルトガルらしいんですが、車名もどんなバイクかもわからないんです……」なんて営業をしたところで、「車名が発表されてから改めてでいいですか? スズキさんとは広告のお付き合いもあるので掲載しないって選択肢はないと思いますが、ウチの媒体で引きがある車両かもわからないでページ数などの具体的な話はなんとも……」なんて具合である。
GSX-Sシリーズのニューモデル・GSX-S1000GX発表!
そんなこんなでようやく11月上旬、EICMAで発表になったGSX-S1000GX。車名からわかるとおり、GSX-S1000シリーズであり、GSX-S1000(無印)、GSX-S1000GT、それからシリーズではないが車体とエンジンを共用するKATANAの仲間ってことである。
ちなみにこれらのモデルは、エンジン、メインフレーム、スイングアームを共用する兄弟モデル。GSX-S1000GXも基本的な路線は変わらず、シリーズ共通のエンジン&車体を採用している。ベースとなっているのはフルカウルツアラーのGSX-S1000GTとのことで、シートフレーム(若干設計が異なる)やタンク形状をなど共通部品も多いようだ。
EICMAでのお披露目が済むと一気に情報が出始める。スズキが作る媒体向けの技術説明書「プレスインフォメーション」によれば、新作のGSX-S1000GXは、同じGSX-S1000シリーズのGTをベースにしたモデルで“The Supreme Sport Crossover(至高のスポーツクロスオーバー)”がプロダクトコンセプトとのこと。キャラクター的には、ロードスポーツモデルのGSX-SシリーズとアドベンチャーモデルのVストローム1050の間に収まるような、いわゆるクロスオーバーバイクという位置付けらしい。
GSX-S1000GX(欧州仕様)/主要諸元■全長2150 全幅925 全高1350 軸距1470 シート高845(各㎜) 車重232㎏(装備)■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 999cc 152ps/11000rpm 10.8kg-m/9250rpm 変速機形式6段リターン 燃料タンク容量19L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=190/50ZR17 ※諸元はすべて欧州仕様で、最高出力/最大トルクの数値が国内モデルのGSX-Sシリーズと異なっているが、エンジンの仕様は全く一緒。2023年12月時点で正式な国内発売のアナウンスはないが国内販売時には150ps/10.7kg-mになるものと思われる。
「プレスインフォメーション」から、ポイントを抜き出せば
●GSX-S1000/GT、KATANAと同じ車体&エンジンがベースの“X”系クロスオーバーモデル
●スズキ初のセミアクティブ電子制御サスペンション搭載で脚長(SHOWA EERA®︎/ストローク前後150mm)
●スカイフック制御に加え、平坦路から石畳などの凹凸路に入った瞬間にダンパー制御が自動で切り替わるスズキオリジナルの制御を搭載(SRAS)
●7段階+OFFに増え、IMUでコーナリング対応となったトラコン
●アドベンチャーを意識したクロスオーバーモデルで最低地上高155mm/シート高:845mm
という感じ。
さてEICMAでGSX-S1000GXが発表されてから出発までの2週間ちょっとの期間が本当にバタバタだった。英語版70ページにも及ぶプレスインフォメーションをグーグル翻訳で変換しながら読み込み、上記のポイントを各編集部に伝えながら営業をかけ、なおかつ抱えている別の原稿を出発前までに片付けるという感じ。
最初は車名すらわからないところから始まった今回の海外試乗会だが、プレスインフォメーションを読み込んでいると、GSX-S1000GXというバイクのキャラクターがなんとなく見えてきた。ただ、バイクは乗ってナンボ。結局のところは走らせてみないとわからない。
さあ、いよいよポルトガルへ向けて出発だ。
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