●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
埼玉県の講習会が始まった
埼玉県教育委員会による「令和3年度高校生の自動二輪車等の交通安全講習」が’21年も始まった。埼玉県は、’19年4月に三ない運動を撤廃し交通安全教育へと転換、公立高校の生徒は学校への届け出制によりバイクに乗れるようになった。三ない運動の思いがそうであったように、バイクに乗車する高校生の命を守るための本講習は、県内の5地域6か所で順次行われ、7月26日には県南部の高校生がレインボーモータースクール和光に集まり、実技講習/座学/救急救命講習を受けた。なお、受講料は県教委が負担するので、生徒/保護者への負担はない。この点においても本講習が教育の一環であると認識できるだろう。
母数が増えたのだから当然だが、本講習の開始以降でも県内高校生のバイク事故は発生しており、’19年47人/’20年61人と増加傾向にある(自転車事故は800人超)。深刻な重傷事故も発生しているが、講習内容には、モニタリング組織「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する指導検討委員会」での協議や意見が反映され、都度改善が図られている。テンプレート通りの講習ではなく、毎年細かな改善が見られている所に今後の期待が持てるのだ。
本講習の良い点は、運転技術のレベルを上げることではなく、”気づきを与える”ための講習であり、経験が少ない高校生を事故から守るためには、とても良い講習内容となっている。▲バイク事故類型の上位である交差点での右直事故を再現。トラックで視界が遮られる中、歩行者や右折車の動きに注意し、一時停止/左右確認をしてから進行する。▲見通しのきかない交差点での出会い頭事故を再現。一時停止して左右を確認しながらゆっくり進行する。
▲ヘルメットのあご紐がゆるいと頭からスポッと抜けてしまうことを再現。 ▲肘/膝/胸部のプロテクターは日本二輪車普及安全協会から貸し出されている。
’21年度の主な変更点
なお、’21年度は講習内容等に大きな変更があった。
(1)他団体の講習会でもOK
本講習には年1回の参加が義務付けられているが、絶対的な強制力や不参加生徒への罰則はない。体調が悪いといった理由で参加できなかった生徒は、他の地域の講習会へと案内されるが、100%の参加を実現できるものではない。そうした中、今期からは、県内で開催されている2輪関連団体等が主催している運転講習会への参加でもOKとなり、間口が広げられることになった。ただし、そうした講習会への参加費用は実費となる。
▲日本二輪車普及安全協会のグッドライダーミーティング/交通教育センターレインボー埼玉の二輪車安全運転講習会/セーフティクラブの二輪車安全運転講習会/埼玉県交通安全協会のテクニカルライディングスクールへの参加でもOKとなった。※写真はグッドライダーミーティング府中(東京都)
(2)参加資格の拡大
まだ免許を取得していない、免許はあるがバイクを所有していない生徒も参加できるようになった。実技の運転講習はできないが、バイクや安全運転の基礎、救急救命法について学ぶことができる。
(3)座学内容にKYT(危険予測トレーニング)を追加
ホンダの安全運転普及本部が開発した危険予測トレーニング(KYT)を座学に導入した。「交通センス=危険予測能力」が身につくというもので、運転手視点などの動画を見ながら道路上の危険を知り、予測能力(かもしれない運転)を高められる。手元のボタンを押すことで全員が参加できるので盛り上がる。
▲座学の時間帯に追加された「危険予測トレーニング」。街中を走行する動画の中で、自分が危険だと思った瞬間に手元のボタンを押すと記録、画面に表示される。道路走行中の様々な危険を学ぶことができる。
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