2000年ごろからにわかに盛り上がってきたビッグスクーター人気。それが決定的になったのが、2003年のマジェスティCとフォルツァ・タイプXのリリース。そしてフュージョン・タイプXの復活!
【第1回はコチラ】
一方スズキは、そんなホンダやヤマハより早い2001年に、バーハンドル&ショートスクリーンのスカイウェイブ250・タイプSをリリース。来たるべきビッグスクーターブームへの備えは万全だった!
【第2回はコチラ】
こうして国内3メーカーが揃い踏み、いよいよビッグスクーター人気は沸点を突破するのであった!
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相次いで先進技術を投入していったフォルツァ
2004年、フォルツァが初のフルモデルチェンジを果たし、フォルツァ Xとして登場。そう、スタンダードモデルですでにショートスクリーン+バーハンドルを装着した状態となった。ビッグスクーターが「おじさんバイク」から完全に脱したのが、この年だといえるだろう。
さらにHonda S マチック(電子制御式ベルトコンバーター)の変速機構を装備するフォルツァ Zを同時にラインナップ。オートマチックでありながら、変速機構によってスポーティな走りも楽しめるようになった。
ちなみにHonda S マチックは250ccクラスでは世界初搭載。標準採用されたスマートカードキーシステムもバイクとしては世界初搭載である。当時のホンダのビッグスクーターへの力の入れようがよくわかる。
フォルツァ Zの登場によって、ビッグスクーターは「便利で楽ちんな乗り物」から「便利で楽ちん、さらに走る楽しさも併せ持つ乗り物」へと昇華。その人気をさらに高めることになるのだ。
2006年にはマイナーチェンジをおこない、デザインを変更。注目すべきはHonda S マチックの進化で、6速だったマニュアルシフトモードを7速に変更。さらに「キックダウン機構」と「オートシフトモード」を採用し、追い越し加速や上り坂など、走行条件に応じた走行フィーリングが好評だった。
ちなみにオートシフトモードは、当時バイクへの搭載は世界初。この時期、とにかくビッグスクーターへは惜しみなく最新技術が搭載されていった。
そんなフォルツァが熟成の域に達したのが2007年12月のこと。
2度目のフルモデルチェンジによって、エンジンとフレームを新設計。エンジンは4バルブ化され、フレーム剛性を大幅にアップ。快適性や安定性を向上させた。
また、ゴージャス感を増したスタイリングも好評だった。
2008年3月には、ホンダアクセスから発売されていたオーディオキットを工場出荷時から装着した『オーディオパッケージ』をラインナップ。
「便利で楽ちん、さらに走る楽しさも併せ持つ乗り物」からさらに、「ラグジュアリーで快適すぎる乗り物」へと最終進化を果たしたのだ。
ユーザーのニーズに合わせてラインナップを増やしたヤマハ
マジェスティCによって、若いライダーの心を掴んだヤマハは、翌年から怒涛のごとくラインナップを増やしていく。
まず登場したのが、グランドマジェスティ250。
コンセプトは「大人のスポーツセダン」。クラス初となるアルミフレームとDOHCエンジンを搭載し、快適性や安定性を向上したツーリングモデルとして人気を博した。
2005年には400ccエンジンを搭載したグランドマジェスティ400も登場し、250とともにワンランク上の走りを求めるライダーに支持された。
ちなみに略称は「G(ジー)マジェ」。メーカー発表会で「グラマジェ」と言ったら、広報担当者から「サガヤン、Gマジェだから! グラマジェはスタイリッシュじゃないからダメだよ」と注意されたのは良い思い出だ(笑)。
2005年にはロー&ロングのシルエットを持つマグザムが登場。フュージョンに真っ向対決を挑んだ。
基本設計が古いフュージョンに対して、やはりマグザムは当時の最新モデル。ロングホイールベースのスタイリングからは想像できないほど軽快。積載性こそ犠牲にされているものの、走りの安定性や快適性は格段だった。
そして、個性的なスタイリングは若いライダーに特に人気。そのまま乗ってもサマになり、カスタムすればなお良しということで、カスタムベースとしても支持された。
そして、ヤマハのメイン機種ともいえるマジェスティは2007年にフルモデルチェンジを果たす。
エンジンとフレームを新設計とし、スタイリングもガラッと変更。ヤマハ独自のAT技術『YCC-AT』を採用するなど、若者だけでなく、ベテランライダーも満足する技術とデザインが与えられた。
そしてこのモデルチェンジは、カスタムが当たり前だったマジェスティ(=ビッグスクーター)の在り方を大きく変えるキッカケとなったのである。
カスタムも人気
さて、全盛期を迎えたビッグスクーターブームだが、当時は純正そのままの方が珍しいくらい。大なり小なり、何かしらのカスタムを施すのが当然だった。
下に紹介するのは、当時の代表的なカスタム。
エアロマスクでフロントマスクのボリュームを増し、LEDウインカーを装備。ハンドルは手前に引いて、ライディングポジションをさらに楽ちんにするのが定番で、タンデムシートにはバックレストを装着し、ルックスと実用性を両立させた。
オーディオシステムを後付けするのも人気のカスタム。当時は音楽をガンガン鳴らしながら走るスクーターがじつに多かった!
フュージョンは純正デザインを活かしたカスタムが多く、ロー&ロングのスタイリングはそのままに、さらにローダウンを施したり、メッキパーツを多用した“ローライダー”スタイルが人気だった(この場合のローライダーはハーレーではなく、クルマのカスタムスタイルのこと)。
このように、ひとくちにビッグスクーターといっても、車種によってカスタムするポイントや方向性がまったく違った。
車種もカスタムマシンもカスタムパーツも豊富で、2000年代中盤はまさにビッグスクーター黄金時代だったのである。
メーカーメイドのカスタムモデルも!
とにかく時代はビッグスクーター一色! そうすると、メーカーとしても冒険がしたくなるようで……マジェスティやフォルツァ、スカイウェイブがビッグスクーターの王道だとすれば、その道から外れた異色モデルも登場した。
1台目は、『ピックアップスクーター』をコンセプトにしたPS250。スクーターといえばカウルに覆われているのが当たり前だったのだが、当時人気のズーマー50と同じくフレームを剥き出しにして、無骨なスタイルを前面に押し出している。
タンデムシートを起こすことでバックレストになるのも特徴。シートはスライド可能で、タンデムシートがあった場所に巨大なキャリアが現れる。
昨今のアウトドアブームと相まって、中古車はプレミアム価格となっている。
2008年にはスズキからジェンマが登場。ロー&ロングのスタイリングは、フュージョンやマグザムとも違う独特すぎるもの。
カスタムが当たり前だったビッグスクーターにあって、もはやカスタムする余地がないほどの個性&完成度を誇っていた。
個性が出揃い、ブームが落ち着きはじめる……
2007年にマジェスティがモデルチェンジによって路線を変更したことに加え、2008年に究極のメーカーカスタムともいえるジェンマが発売されたことによって、風向きは大きく変わった。
以下は、あくまでも僕の個人的見解だが……。
王者・マジェスティがカスタムの余地を少なくし、ニューモデル・ジェンマは個性が強すぎてやっぱりカスタムの余地が少ない。そして、相次ぐ先進技術の投入によって新車価格は上昇し、新車を購入したユーザーはカスタムに予算を回す余裕がなくなる……。そうした要因が重なって、ユーザーのカスタムへの情熱はどんどん冷めていったようだ。
2010年ごろにはビッグスクーターカスタムはかなり下火になってしまった。そして、それはそのままビッグスクーター人気そのものを下火にしてしまった。
現在、国内のスクーター市場で250ccクラスの主力になっているのはPCX160やNMAX155といったコンパクトなミドルスクーターだ。XMAXやフォルツァといったフルサイズのビッグスクーターもまた、コンパクトかつスポーティさが特徴で、かつてのラグジュアリーな雰囲気はほとんどない。
中古車市場を見てみると、このバイクブームの最中、PS250がプレミアム価格となっているだけで、他のビッグスクーターは軒並みリーズナブルな価格設定となっているようだ。
しかし、フォルツァZや最終型のマジェスティは当時の最新技術が投入された贅沢なモデルだ。中古車購入を考えているなら、これらは穴場といえるだろう。
人気が落ち着いたからこそ、じつは今狙うべきは、あの頃のビッグスクーターたちだと、僕は思う。積載性や快適性など、ツーリングマシンとしても優秀なので、この頃のビッグスクーターがあれば、充実したバイクライフを送れるのではないだろうか?
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