2000年代にバイクシーンを盛り上げたのが、TWやFTR、SR400をはじめとするストリートバイク。じつはそのストリートバイクブームから遅れること約2年……ストリートバイクと並行するようにして人気を博し、同じくフルカウルスポーツによってブームの終焉を迎えたジャンルがある。それが「ビッグスクーター」である。
ビッグスクーターも火付け役はYAMAHA!!
TW人気が急上昇した2000~2001年ごろ、東京・原宿や大阪・アメ村あたりのいわゆる“早い”お兄さんたちが「なんだか最近は誰でもTWに乗っちゃって、面白くねーなー」と言ったかどうかは知らないけれど、とにかく、次なる“おしゃれなバイク”を探しはじめた。
そこで目をつけたのがホンダ・フュージョンである。
1986年登場のフュージョンは、当時はすでに絶版。しかも、それまでは「おじさんが乗る、なんだか無性にでかくて長いスクーター」くらいにしか認識されていなかった。それがあら不思議。原宿やアメ村のお兄さんたちがバイカーキャップにサングラスをかけ、車体にはペタペタと横乗り系ステッカーを貼って乗り出すと、なんだかかっこよく見えてしまうのだ。
ちなみにこの頃はフュージョン用のカスタムパーツなんて皆無。だから、カスタムといえば横乗り系ステッカーにロングスクリーンを短くカット、マフラーをスーパートラップなどの汎用サイレンサーに変えるくらい。じつにおとなしいものだった。
で、これまたFTR250と同じく、フュージョンはすでに絶版で、中古車もそんなに流通しているわけではない。しかも、彼らは人と被るのがイヤ……そこで次に人気が出たのが、マジェスティだった。
80年代のサイバーレトロな雰囲気を醸し出すフュージョンに対して、マジェスティはスタイリッシュ。
ちなみに、僕がはじめてビッグスクーターカスタムを見たのは90年代の終わり。雑誌『ライトニング』で所ジョージさんが初期型マジェスティをベースにカスタムを施したのだ。その内容は前後サスペンションをローダウンし、スクリーンを短くカット。シートはあんこ抜きされ、外装をイエローにペイントし、ステッカーをペタペタ貼ったものだった。
たしか『陸を走るジェットスキー』というコンセプトでカスタムされたもので、当時大学生だった僕は「おっさんバイクがこんなにカッコよくなるのか!? さすが所さん!」と衝撃を受けたのを覚えている。「所ジョージ マジェスティ」で検索すると出てくるので、気になる人は調べてみてください(笑)。
所さんのマジェスティは知る人ぞ知る存在なのでここでは置いといて、ともかくフュージョンからスタートして、マジェスティによって、ビッグスクーター人気に一気に火がついたのである。
この流れは絶版車・FTR250からスタートして、TW200で人気に火がついたストリートバイクブームとまったく同じなのが面白い。
メーカーが思いっきりストリートに寄せてきた!!
そもそもが「おじさんバイク」という目で見られていたビッグスクーターだけに、実際にストリートで乗りこなすにはカスタムが必須だった。といっても、初期のビッグスクーターカスタムは、スクリーンカットやリヤサスローダウン、ハンドルカバーを外してのバーハンドル化、マフラー交換くらい。しかし、それでも十分にスタイリッシュ……いや、いま考えると、逆にこれくらいがカッコよさと利便性のバランスがよくて、十分どころかむしろ最適だったと思うのだが……まぁ、それはおいといて。。。
ともかくビッグスクーターの人気は爆発。カスタムするのが当たり前という時代がやってきた。
そうすると、ストリートバイクブームでFTR250がFTR223として復活したように……そう、メーカーだって黙っていない。
2002年に登場したのが、マジェスティCである。
ななな、なんと! はじめからショートスクリーン、バーハンドル、メッキミラーが採用されているのだ。これはまさにメーカーメイドのカスタムモデル。公式発表にはないが、おそらく(というか絶対)マジェスティCの「C」はカスタム(Custom)から来ているのだろう。
当然、マジェスティCは大ヒット。翌2003年には黄色いボディで、よりカスタム感を増したモデルを出しちゃったりして、その勢いはもう止めようがない!!
ホンダ、まさかのアレを大復活!!
そのときホンダは何をしていたのか? というと、もちろん指をくわえて、ヤマハの快進撃をただ眺めていただけではない。
2代目マジェスティがリリースされたのと同じ2000年にフォルツァをリリース。
しかし、ラグジュアリーとスポーティを絶妙に両立させたマジェスティに対して、フォルツァはかなりスポーツ寄り。シート下収納スペースの容量も少なめで、マジェスティほどの人気を獲得するには及ばなかった……とはいえ、ブームの後押しやホンダのブランド力、そしてスポーティに振り切ったデザインによってファンは多く、決して不人気だったというわけではないのだが(ちなみに僕も好きだった)。
ともかく、ホンダとしても、このフォルツァをなんとか盛り上げようと思ったのだろう……2003年に登場したのが、
じゃ~ん! フォルツァ・タイプX!! こちらもショートスクリーンにバーハンドル、メッキミラーを装着したストリート仕様になっている。
ちなみにタイプXのカラー展開は標準色3色とカラーオーダープラン4色の計7色から選べた。上の写真はカラーオーダープランの『キャンディタヒチアンブルー』である。
タイプXはスポーティながらも、ストリート感を強調したスタイルがウケて人気を博した。カラーオーダープランによる豊富なカラーリング展開も、カスタム好きには好評だったようだ。
そして、ホンダにはもう1台……
そう、フュージョンの大復活である。
1996年以来発売が途絶えていたフュージョンが、新車市場に帰ってきたのである。しかもスタンダードタイプに加えて、ショートスクリーンやバーハンドルを装着したタイプXをラインナップ。さらにタイプXのカラーは全10色(標準色3色、カラーオーダープラン7色)という力の入れよう。
もちろん、これでヒットしないわけがない! スクーターにはあまり興味のない僕でも、フュージョン・タイプXは欲しいと思ったのを憶えている。
ちなみにホンダは公式には「復活」ではなく「モデルチェンジ」と発表している。6〜7年の時を経て、フュージョンは排気ガス浄化システムやアラーム機能などを追加してモデルチェンジしたのである……はい。
ビッグスクーター時代の到来
こうして2003年はビッグスクーターカスタム元年ともいうべき年になった。
この年から、車両メーカーやカスタムパーツメーカー、カスタムショップ、そしてユーザーを交えた『大ビッグスクーター時代』へと突入するのである。
あれ、スズキは? ……じつは、スズキ・スカイウェイブもまた、独自に注目すべきモデルチェンジや派生モデルをリリースし、存在感を出し続けていたのだ。
だけど、今回はここまで! 後編をお楽しみに~!!
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