SUZUKIはいつだって“ちょっと早すぎる”!?
前回はヤマハとホンダの動きをもとに、ビッグスクーターブーム黎明期を振り返ったのだが、その間、スズキは何をしていたか……両社の動きを見ていた? いえいえ、見ているどころか、いち早い動きを見せていたのが、じつはスズキだったのだ!
スズキのビッグスクーターといえば「スカイウェイブ250」だが、その初期型は1998年に登場。2000年リリースの初代フォルツァよりも早かった。
そして驚くべきが……
なんとマジェスティCやフォルツァ・タイプXが登場する前にショートスクリーンやバーハンドルを装着したスカイウェイブ250・タイプSをリリースしていたのだ!
は、早すぎるぜ、スズキさん!
時流を捉えたみごとな動きだったが、いかんせん、この頃はTWブーム全盛……たった2年だけど、この素早さは勇み足気味だった感が否めない……。
ちなみにビッグスクーターブームが落ち着くのは2008年~10年ごろだと言われていて、つまりこの企画『ビッグスクーターの時代(全3回)』で紹介する怒涛の動きは5~10年程度のお話。まるで幕末史を見ているかのような忙しなさ(ペリー来航から大政奉還まで15年!)といえよう。
そう考えると、スズキはビッグスクーター界の長州藩! いち早くタイプSを投入したのは、倒幕運動を開始し、第1次長州征伐を引き起こした長州藩の動きそのもの。そして、今なお当時の面影を残すモデル・バーグマン400(今回のメインは250ccだが、そこはご愛嬌)を残すことに成功したのは、薩長同盟による大逆転で明治政府を樹立した長州藩とやっぱり同じ! うーん、スズキは長州藩だったのか!?
……と、大きく話が逸れそうになったので、戻します(反省)。
時代の兆候をカワサキも見逃さなかった!
いかんせん、まだ本格的なブームが来る前のスズキの動きではあったが、そのモデル展開を支持したのが、意外や意外、カワサキだったのだ。
当時、スズキとカワサキはOEMによる業務提携をおこなっていて、カワサキ Dトラッカーがスズキ 250SB、バリオスⅡがGSX250FXとして発売されていた。その一環として、スカイウェイブ250・タイプSがエプシロン250としてカワサキから発売されたのだ。
カワサキは基本的にはスクーターを出さないと思われていたので、当時、誰もがびっくり! そう、カワサキも今後来るであろう大ビッグスクーター時代を、この時すでに予見していたのだ(多分)。
しかし、今あらためて見ると、エプシロン250って結構かっこいいね。ブルーとシルバーの配色はスポーティで、ブラックのホイールも存在感抜群。そして何よりカワサキブランドというのがいい! もしもレッドバロンで中古車を見つけたら、チェックすべしですな!!
ちなみにスカイウェイブは2002年に初のフルモデルチェンジをおこなうのだが、エプシロン250もモデルチェンジ後の2006年まで発売されていた。
で、またまた話が逸れますが(笑)、エプシロン以来、カワサキはスクーターを出していないと思われがちだが、じつはヨーロッパ向けにJ300とJ125というスクーターを発売していたのは知る人ぞ知る話。ちなみにこちらはスズキではなく、台湾のKYMCOから供給を受けていた。
僕もまだ実物は一度も見たことがないので、機会があればぜひ見てみたい、そして乗ってみたい1台である。
さて、話を元に戻すと……そうそう、“スズキは早い”という件。現在は250ccフルサイズのビッグスクーターに変わり、150~160ccのミドルスクーターが人気。じつはその点でも、スズキは早かったのだ。
1999年にミドルサイズの軽二輪スクーター・アヴェニス150を発売。まさに時代を先取りしていたのだ。
現在、スズキは同クラスにおいては、排気量大きめでロー&ロングスタイルのバーグマン200をラインナップしているだけなので、いまこそアヴェニス150を復活させるべきだと思うのだが……。
ついでに書くと、アヴェニス150もカワサキにOEM共有され、2002年からエプシロン150として発売されていた。
……やっぱり話が逸れてしまいました(反省)。
スカイウェイブで大ハッスル!
さて、本当に戻します、話を! スカイウェイブ250の話です!
1998年に登場したスカイウェイブは2002年に初のフルモデルチェンジを敢行。そしてビッグスクーターブームを迎えるわけだが、ヤマハがマジェスティに加え、グランドマジェスティやマグザム、ホンダがフォルツァ、フュージョン、フェイズとモデルを増やすの対し(詳細は第3回で)、スズキはスカイウェイブ1本で勝負する。
ただし、派生モデルの数が他とは違った!
Type S
初代から続くタイプSは、最終モデルまで引き継がれた。むしろ、ベーシックは2008年モデルが最後で、2009年モデル以降はタイプSがベーシックを兼ねることとなる。
Limited
グリップヒーターとハンドガードの“冬アイテム”を標準装備したリミテッドは、通勤ライダーをはじめ、冬でも雨でも走るというハードなライダーに人気。カスタムブームと逆行するロングスクリーンやタンデムシートのバックレストも、リミテッドをチョイスするユーザーには好評だった。
Type M
ルックスだけでなく、技術の進歩が著しかったのもビッグスクーターブームの特徴。
タイプMは電子制御CVTによって7段変速機構を装備。ハンドルのスイッチを操作することで、マニュアル変速を楽しむことができた。もちろん、通常のオートマチック操作も可能で、他にもパワーモードなど、変速モードを変えて、状況や気分によって乗り味・乗り方を変えられた。
ルックスはタイプSと同じく、ショートスクリーンやバーハンドルを備えたスタイリッシュなもの。
SS
メーカーカスタムを極限まで押し進めたのがSSといえよう。
スクリーンはショートですらなく、当時のカスタムモデルで主流になっていたエアロマスクを装着。バーハンドルはクルーザーに用いられるインチバーを採用し、ハンドル周りのゴツさをアップ。さらにバックレストをコンパクトにして、カスタム感をおおいに高めている。
こうしてスカイウェイブはベーシックも合わせると最大時には5バージョンで展開。特に2007年モデルからはエンジンをDOHC化したこともあって、走りにこだわるユーザーにも支持されて独自のファン層を築いていったのだ。
え? 「スズキといえばスカイウェイブだけじゃない!」……もちろん、ジェンマを忘れるわけがありません。だけど、それは次回『全盛から終焉へ』編にて!
というわけで、今回はここまで! 次回はいよいよ最終回、お楽しみに~!
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