モーターサイクリスト編集部の大先輩がスクープしていた情報のとおり、2007年のパリショーにて「カワサキ ニンジャ250R」がアンベールをはたしました。全世界的に厳しくなる一方の排ガス&騒音etc……つまり環境諸規制の基準をキッチリ満たす、新時代を切り拓く250㏄スポーツとしての仕切り直しモデル。しかもなんとフルカウルではないですかぁ!?

前身となるZZ-R250についてはコチラから(以降も表記はZZ-Rで統一いたします)

ニンジャ250カタログ

●2009年型のカタログより。国内外の厳しい環境諸規制にも完全対応した「NEXT GENERATION」……次世代の世界戦略モデルとして登場したカワサキ ニンジャ250R。2007年のパリショーでは同様のKLX250、D-トラッカーXとともにお披露目され、熱い注目を浴びました。ただ、当初は「なんで2気筒?(バリオス-Ⅱの4気筒エンジンを使えばいいのに)」や、「なんで鉄フレーム?(ZZ-Rはアルミだったじゃん)」とのネガな意見さえ聞かれたものです

ニンジャRの登場なくして250スーパースポーツの隆盛なし!

令和となっている現在、大型二輪用品店や休日のサービスエリア、ワインディングに近い道の駅などバイクが多数集まるスポットへちょいと足を向けたなら、ホンダCBR250R/RR、ヤマハ新旧YZF-R25、スズキGSX250R、そしてR付き・Rなしのニンジャ250、さらにはニンジャZX-25RKTMRC250ほか、コンパクトながらシビれるほどカッチョええフルカウル250スーパースポーツ百花繚乱状態であることは理屈抜きに分かるはず(スズキGSR250Fも筆者判断で含めます)。

KTM RC250ABS

●写真は2018年型のKTM RC250。世界戦略車としてRC390とRC125が開発され、わざわざ日本市場のために仕立てられた250㏄版として話題となりました。中古車も少数ながらしっかり存在。現在RC250は日本で販売されていませんが、2023年型で兄弟車がフルモデルチェンジを受けたので、その勢いで再び日本導入も……? 期待したいですね

 

しかし、ほんの十数年前である2000年代の前半から中盤にかけて、250スポーツといえばノンカウルのトラッカーとネオレトロとネイキッドとモタード(とビッグスクーター)ばかりがデカい顔でノシている排気量クラスでありました。

流行りの(?)擬人化で当時の状況を語ってみますと……!?

ブオンブオン、パラパラパラ大声とクサい煙を吐きつつ長ラン(フルカウル)姿で徒党を組んでクラスを席巻していたレーサーレプリカ先輩は20世紀のうちに卒業して久しく、唯一ZZ-R250くんが旅姿に仕立て直した長ランを受け継いでいるのみ。

しかし風紀にうるさい先生(環境諸規制)に目をつけられ、「声が大きいわね、小さくしなさい!」「出す息がクサいわね、炭化水素や窒素酸化物など有害な物質を減らしなさい!」と執拗なご指導が矢継ぎ早に……。

いらすとや 風紀

●いや、排ガスの有毒物質や騒音を抑える重要性に反論をとなえる気は全くないのですけれど、2000年代中盤の国内規制は本当に厳しかった……。一時は各メーカーのバイクラインアップが壊滅しましたからね

 

大企業のご子息根が真面目なZZ-R250くんは厳しい条件を突きつけられるたび真摯に対応し、高くなる一方のハードルを何度も乗り越えてきたものの、昔ながらの肺構造(キャブレター)だったため2007年リミットの難関課題がクリアできず、あえなく自主退学の道へ。

20世紀のうちに卒業した先輩方と同じレーサーレプリカの心臓を持ちながら長ランを脱いでいた裸ん坊たちも同時期、根こそぎ風紀委員に退出させられます

バリオスⅡ

カワサキレーサーレプリカの雄として登場したZXR250の並列4気筒エンジンを外観、そして中身にも大胆に手を加えてネイキッドの心臓としたバリオスシリーズ。1991年に登場してからロングセラーモデルとして長らく君臨しましたが、こちらも排ガス規制強化をクリアできず、2007年8月末をもって生産を終了……(写真は1997年以降、2本サス化されたバリオス-Ⅱ)

 

嗚呼、大排気量車への登竜門となるべき250㏄のロードスポーツクラスは、“キムタクドラマさまさまトラッカー”と“トコトコ懐古趣味シングル”だらけのペンペン草も生えない状態となってしまいました。

TW200北米仕様

●1987年からヤマハが発売してきたTW(Trail Wayの意)シリーズ。2000年に放送されたテレビドラマ「Beautiful Life」で主演の木村拓哉さんがカスタムされたTW200を颯爽と乗りこなすシーンから火がついて大人気に! ライバルメーカーも次々と同様のストリートバイクで追従したことは記憶に新しいところ。そんな俗に言うトラッカーブームの火付け役となったTW(225E)は2008年に国内向け生産を終了していますが、海外ではいまだに現役なのです(写真は2010年型北米向けTW200)

 

かくいうYOUはショック!な状況下に、突如として現れたのがケンシロウ……ではなく忍者、いや「ニンジャ250R」だったのです。

ビッグネーム“Ninja”が、しょぼくれていた250㏄クラスに喝!

2007年秋のパリショーで姿を現すや、バイク雑誌業界は大盛り上がり

カワサキ広報が「世界戦略車ではありますが、まだ日本で発売するかどうかは分かりませんよ」と言っている段階から各社とも特集記事を組みまくり(笑)。

モーターサイクリスト編集部員だった筆者も、無理をお願いして参考出品車を借り出し撮影したり、兵庫県明石市にある川崎重工業株式会社まで日帰りスケジュールで乗り込んで開発者インタビューを敢行したり、初代iPhoneの登場に気を取られつつ、取材に東奔西走したものです。

ニンジャ250Rカタログ

●2009年型カタログより。1985年にGPZ250Rに搭載されて以来、連綿と受け継がれてきた水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジン。ニンジャ250Rの最高出力は最終型で35馬力だったZZ-R250よりさらに下げられた31馬力……だったのですが、当時の時代背景は「馬力が低い? ンなことどうでもエエ。よくぞフルカウルスポーツを復活させてくれた!」という風潮が全開で、ローパワーであることに文句を言う人は皆無だったはず

 

お約束のとおり日本での発売も正式決定し、2008年4月5日、ついにゲームチェンジの瞬間が訪れました

「50万円切り!」という超絶に戦略的な価格でデビュー

なななななななんとなんとなんとな(文字数)メーカー希望小売価格は、税込みで50万円を割り込む“49万8000円”!!!! 

前年に姿を消したZZ-R250の最終型が同じく税込みで53万4450円でしたから、それより3万6000円以上お安くなっているというインパクトがギョーカイに巨大すぎる波紋を広げました

ベースとなる水冷並列2気筒エンジンはZZ-R250を受け継いだものながら大規模な見直しと改良が行なわれ、さらにFI(フューエルインジェクション=電子制御式燃料噴射装置)とハニカムキャタライザー(排ガスを浄化する触媒装置)が新たに装備されて厳しい排ガス規制値もクリアしながらのプライスダウンですからメカニズムとコスト面にちょいと詳しいライダーならなおのことブッタマゲです。

ニンジャ250Rカタログ リヤビュー

●後期型のZZ-R250に引き続き、タイ王国生産となったニンジャ250R。国際戦略車らしく、2008年当時は仕向地によってキャブレター仕様も存在していました。なお、ZZ-R250のような凝った格納式ではなかったものの、タンデムステップステーの後端とリヤウインカーの少し前方にゴムひもを引っかけやすい荷掛けフックを用意。そのあたりの配慮もまたカワサキ!

 

フレームの素材こそアルミニウムからスチールへ変更されたものの、その形状は初代ニンジャことGPZ900Rのそれを彷彿とさせる高剛性ダイヤモンド型で性能的に全く問題なし。

250スーパースポーツデザインの原点にて最高地点(個人の感想です)

しかし何よりもバイク好きの心を鷲づかみにしたのは、クリーンで流麗、かつ精悍なそのスタイリングだったと言っても過言ではありますまい

ニンジャ250R 青色

●筆者的なスタイリングのツボはサイドカウルにあるブーメランのような開口部から、折れ線がサイドカバー〜テールカウルの下端に向かってキレイな三角形を描きつつ収束されていくところです。分っかるかなぁ〜分っかんねぇだろうな〜[by 松鶴家千とせ]。現行ニンジャ250がマッシヴで複雑な線の入り交じるMSZ-010 ZZガンダムのデザインなら、この時代のニンジャ250Rはまさにガンダムの原点、RX-78の趣きがあるのですよ。分っかるかなぁ〜分(以下略)

 

ミニマムツアラーを標榜していたZZ-R250から一転、自らがスーパースポーツを名乗り、兄貴分であるニンジャZX-10R/6Rのデザインエッセンスを取り込みつつも250㏄クラスであることを主張する軽快なフォルム

個人的には初代TZR250に勝るとも劣らない傑作スタイリングであったといまだに思っております。

TZR250

●はい、こちらが1986年に登場した初代ヤマハTZR250です。う〜ん、美しい……

 

なお、上級スーパースポーツに憧れるナウなヤングたちを魅了するレーシーなフルフェアリング姿でありながら、ツーリング用途にも対応できる楽チンなライディングポジションを実現しており、ZZ-R250ロスに戸惑っていた層までキッチリ取り込んでいったのはさすがのカワサキ

はたして人気は大爆発! 

「納車まで1年待ちだぁ!?」という街の声(悲鳴)がちょくちょく編集部にも届いてきたものです。

行列イラスト

●「長く待ってもいいからニンジャ250Rが欲しい!」という老若男女が数多くバイクショップへと押しかけました。そんな動きに驚いたライバルメーカーたちは慌てて対策を考え始めます……

 

次回はその伝説的な快進撃ぶりライバルたちの対応についてお届けいたしましょう。

あ、というわけで爆発的な人気を得た“ニーゴーニンジャR”は、ゆえにバラエティあふれる程度と価格帯から中古車を選ぶことのできるモデル。国内直営300店舗オーバーのレッドバロンならアナタの狙いに一番近い車両がきっと見つかります。ぜひお近くの店舗に行ってイントラネット検索システムにて在庫を確認してみてください!

(つづく)

ニンジャ250Rというゲームチェンジャー【中編】はコチラ

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事