W1が集まるところメグロの姿あり!?

 先日レポートさせていただきましたカワサキ『W1ミーティング』。5月8日(日)、箱根・十国峠を会場に参加台数はおよそ250台と、半世紀以上前の1966年に初代が発売されたバイクであるにも関わらず、熱きファンが押し寄せました。

 

 ボクもそのうちのひとり。1971年式の『W1SA』に30年近く乗り続ける大ファンです。そんなボクたちダブワン乗りが同じ系譜のファミリー、いや先祖として崇めている(←ちょっと大げさですが)のが「メグロ」です。

W1はメグロK2の生まれ変わり

『W1ミーティング』には「メグロ」の姿も少なくありません。それは『W1』(1966年)の直接的なルーツが『カワサキ500メグロK2』(1965年)にあるからです。

「メグロ」=目黒製作所は1925年(大正14年)に創業。1937年(昭和12年)に『メグロ号500cc単気筒Z97型』を市販し、白バイとして警視庁に納入。戦前に500ccもの排気量のエンジンを開発・設計する、由緒正しき国産二輪メーカーなのでした。

 戦後に二輪メーカーは200社を超えましたが、第1回浅間ロードレースが開催される1950年代半ばには性能に優劣がつき、60数社に淘汰されていきます。振り返れば、その頃がメグロのピークとも言われ、1960年(昭和35年)には経営不振によって川崎重工と業務提携。1962年に「川崎目黒製作所」(昭和37年)と改称し、1964年(昭和39年)には川崎航空機工業による吸収合併がおこなわれます。

「メグロ」を継承し、川崎航空機の技術陣によって再設計したモデルが翌1965年の『カワサキ500メグロK2』(昭和40年)となり、ビッグバイク戦略を打って出たいカワサキは空冷4ストローク並列2気筒OHV2バルブ、排気量496cc、ボア・ストローク:66×72.6mmのK2エンジンのボアを74mmに拡大し、624ccの排気量を獲得。『W1』に積むのでした。

1971年の「W1SA」より左チェンジ、右ブレーキ化した空冷OHV並列2気筒エンジン。ルーツは「カワサキ500メグロK2」にあります。

▲1971年の「W1SA」より左チェンジ、右ブレーキ化した空冷OHV並列2気筒エンジン。

 このバーチカルツインエンジンは『650RS』通称W3(74年12月生産終了)まで用いられ、一連のWシリーズを形成しています。また、ボクが乗る『W1SA』からチェンジペダルを市場で常識になっていた左シフトチェンジ/右ブレーキにしています。それまでは英国流の左ブレーキ/右シフトチェンジでした。

川崎航空機技術陣が生み出す傑作

めったに見ることができないメグロも、W1のことでいつも相談に乗っていただいている相談役 モリさんのところへ行けば、珍しくありません。

▲めったに見ることができないメグロも、W1のことでいつも相談に乗っていただいている相談役 モリさんのところへ行けば、珍しくありません。

『カワサキ500メグロK2』は性能的にも優れ、いまなお走っている姿をこうした愛好家たちのミーティングで見ることができます。『W1ミーティング』の数週間前、ボクがW1の部品などをお願いする相談役のところへお邪魔すると、納車待ちの『カワサキ500メグロK2』がありました。

『W1ミーティング』の当日、その会場でオーナーに初めてお会いすることができました。十国峠まで快調に走ってきたようで、コンディション抜群のようです。なんとも羨ましいかぎり。

K1とK2は別モノ……!?

 そして1960年に登場した『メグロ スタミナK1』もお見かけすることができ、オーナーにあれこれとお話を聞くことができました。聞けば、ボクが関連書などを読んで知っていた通り、K1とK2は似て非なりで、K1を現代の交通事情の中、走らせるのはタイヘンだと教えていただきました。

メグロ スタミナK1

▲たいへん貴重なメグロ スタミナK1のオーナー。

 高速道路での連続走行はオイル潤滑などに難点のあるスタミナK1はかなり気を使うし、難しいそうです。そこで全てのパーツをストックしておきながら、W1〜W3系に要所を交換し、ツーリングを愉しんでいらっしゃいます。W系も複数台所有し、いろいろと熟知されているオーナーさんのハナシはとても興味深いものでした。 

 あっ、そうそう「スタミナ」っていうのはメグロの時代の車名で、500ccモデルがこう呼ばれました。250ccモデルは「ジュニア」、650ccは「セニア」です。

 こちらはメグロ『ジュニアS7』(1960年〜63年)。ジュニアですからニーハンです。4ストロークOHV単気筒248ccに前期型(6V)は三国アマルキャブレターがセットされ、11.5HP/5000rpmを発揮。12V仕様の後期は三国VM22キャブで、最高出力13.5HP/5450rpmでした。当時ではスポーティだったスイングアーム式のリヤサスペンションを備えます。

 そしてカワサキは2021年、メグロブランドを復活させ『MEGURO K3』を発売しました。メグロ スタミナK1、カワサキ500メグロK2、そして54年の時を経てK3へと進化・発展したというわけですね。

 興味がなかった人がもしコレを読んで関心を持ち、ストーリーの糸口が少しでも見えたら嬉しく思います。

カワサキ MEGURO K3(2021年)

▲カワサキ MEGURO K3(2021年)。画像提供:カワサキモータースジャパン

 今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。メグロK3報道向け記者発表会の模様が動画に残っておりましたので、ぜひこちらもご覧ください。

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