CB400 SUPER FOURという英雄【その4】を読む

「鬼に金棒、CBにHYPER VTEC」……。1999年の全面刷新以降もスーパーフォアの快進撃は止まりません。装備を充実したりカラーオーダープランを開始。ハイパーVTECも2002年に“SPEC Ⅱ”、翌2003年には“SPEC Ⅲ”へと矢継ぎ早に改良が重ねられ、完成度は高まるばかり。そして2005年、今も絶大な人気を誇る「アイツ」が登場いたします!

2008_CB400

●写真はキャブレターから電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)への変更とともに、エンジン本体にもさらなる改良がなされ、“HYPER VTEC Revo(レボ)”として新たに搭載された2008年モデルのカタログ表紙より。まだ「主役はあくまでネイキッドのスーパーフォアだ!」感がにじみ出ています(笑)。CB400SF/SBは以降も厳しくなっていった排出ガスや騒音などの環境諸規制に細かく対応しつつ平成を完走して令和の時代へ! ふと周囲を見渡すと1990年代に覇を競った直4ライバルたちは軒並み姿を消していました……

ネイキッドモデルにカウリングが付いたら……!?

“ホリエモン”こと堀江貴文社長率いるライブドアの「ニッポン放送株式大量取得」がホットな話題となっていた2005年の春、バイク業界にも激震が走ります。

テレビ局 イメージ

●小さな親会社ニッポン放送と大きな子会社フジテレビという“ねじれ状態”を突いて、ライブドアが敵対的買収を実施。IT業界の風雲児が一気に巨大メディアを手に入れるのか……。ワイドショーなどでは連日大騒ぎでした。どんな決着になったのかは各自でお調べください(笑)

 

ネイキッド界の絶対的王者として君臨してきた1300そして400のCB-スーパーフォアシリーズに、相次いでハーフカウルを装着した「スーパーボルドール」タイプ追加されたのです(2005年2月に1300、400は3月に登場)。

2005年CB400スーパーボルドール

●CB400スーパーボルドールのツートーンタイプ。本体価格は税抜きで72万円。当時はまだ消費税が5%だったので(遠い目)、税込みでも75万6000円でありました。初代に追加されたビキニカウルの“バージョンR”は不評を買ってしまいましたが、フレームマウントのハーフカウルは形状もカラーリングもガチ決まりで、すぐ市場へ受け入れられていきます。実際、防風性もよく考えられており、SF比で高速巡航が圧倒的に楽チンに……

CB400SBの小物入れ

●ハーフカウルの左右には容量1ℓの小物入れまで設定あり。写真は右側(鍵なし)で、左側のそれはキーロックが可能という細やかな配慮が嬉しい。まだバイク用ETCがなかった時代、高速道路入り口でもらったチケットをここへポンと放り込んでおけるのは、本当に便利でした〜

 

「ん? もうこれ、ネイキッドではないよな……。裸じゃなくなったハーフカウル付きの車両は“タンキニモデル”とでも言えばいいのかなぁ~っ? ワハハハ」と筆者がモーターサイクリスト編集部内で大声を出しても周囲にいたスタッフやアルバイトくんからは何ひとつ反応はなし

タンキニイメージ

●え〜、言わずもがなではありましょうけれど、タンキニとは「タンクトップ」と「ビキニ」を組み合わせた造語です。CB400スーパーボルドールのリリースを一読して、ハーフカウルという響きに上イラストのような連想と妄想が膨らんだ妄想サイクリスト、いやモーターサイクリスト編集部時代の筆者。……変態か!

 

1992年、CB400SFのデビュー当時は水もしたたる20代前半、血気盛んなアルバイトだった不肖オガワも37歳になっており、受けないオヤジギャグばかり飛ばしている自称中堅メタボ中年に対する冷ややかさは絶対零度に近づく勢いだったのです(涙)。

高速でのバイクタンデムは40年間できなかった!

そんなヨタ話はともかくスーパーボルドール登場の背景には、2005年4月1日から実施された「高速道路の二人乗り解禁」がありました。

青春を謳歌しているナウでヤングなライダーの皆さ~ん!

信じられないかもしれませんが、バイクがハイウェイをタンデムランできない時代が厳然としてあったのです、しかも結構長く。

タンデムランイラスト

●適切かつ安全に行えば、バイクライフのハイライトともなりえる大切な人との二人乗り走行。今や高速道路でも当たり前の風景が、つい17年前まで実現不可能だったのです

 

アナタ方のお父さん……いやお爺さん世代の一部が“カミナリ族”として青春爆走の限りを尽くした影響などにより、1965年から高速道路における二人乗りが禁止されていたのですよ。

それが(がい)とか(あつ)とかいろいろあって40年ぶりに解禁されることとなり、バイク雑誌業界も色めき立ちましたね〜。

私自身もMC誌上で“HOW TO 高速タンデムラン”みたいな記事を複数回デッチ上げたものでした。

「ボルドール」の意味をアナタは知っていますか?

「SUPER BOL D'OR」

スーパーボルドール……何と言っても響きがいい

CB400SBのボルドールとは、伝統と格式を誇るフランスの耐久レース、「ボルドール24時間耐久レース」からとったもの(フランス語の意味は金杯[bol=ボウル/d'or=ゴールデン])。

ホンダは1976年からRCBでこちらに参戦し、3年連続優勝という輝かしい戦績を残したのですね。

無敵艦隊ポスター

●1978年のボルドール3連覇記念ポスターです。欧州、中でもフランスにおける耐久レースの人気は凄まじく、そこで優勝し続けるということは最高のプロモーション活動にもなりました

 

もちろんその他の耐久レースでも圧倒的な勝率を誇り、当時のRCBは、まさに“無敵艦隊”と称されるに値する大活躍! 

そこから得られた知見をフィードバックして1978年に市販化された「CB900F」は、欧州そして北米を中心に圧倒的な支持を受け、大型のハーフカウルに足部分の風よけも設定された“CB900F ボルドール”も新たなファン層を掘り起こしていったのです。

CB750Fインテグラ

●写真は1982年に登場した「CB750Fインテグラ」の勇姿。カラーリングや細部の意匠は異なりますが、スタイリングはCB900Fボルドールとほぼ同じ。この威風堂々っぷりにリアル中二(病)だった筆者はシビれまくったものです……が、まだ時代が追いついておらず爆発的な人気車にはならなかったという記憶が残っています

 

「スーパーインテグラ」となる世界線も……あったのか!?

ただ……前回、CB400SFに“VTEC”の名称が使われたことへイチャモンをつける筆者のようなひねくれ者は、雑誌広告やカタログ、ポスターなどへデカデカと躍る「BOL D'OR」という文字列に、ちょいと抵抗感を感じたものでした。

ボルドールボルドールって五月蠅いなぁ。CBにハーフカウルが付いたのなら、本来はインテグラと名乗るべきではないのか!?」と。

そうなのです。1982年、それまでの日本では御法度だったフェアリング(風防)の標準装備が解禁となり、CBX400FとCB750Fに相次いで追加されるや、当時の青少年へ強烈なインパクトを与えたモデルの名称が「INTEGRA」でした。

CBX400Fインテグラ

●はい、1982年7月1日に日本で初めてフェアリングを標準装備したモデルとして発売が開始されたホンダの「スーパースポーツ CBX400Fインテグラ」です。ん〜、何なのでしょうかこの微妙な“コレジャナイ”感は……。上半身の防風効果を最大限高めようとした形状が、コンパクトな車格と合っていなかったのかもしれません。残念ながらネイキッドに戻す人も多かったと伝え聞いております……。なお、同年10月には、さらにレアな「スーパースポーツ CBX550Fインテグラ」が、目が覚めるような白ボディに青ラインをまとって登場しました

 

というわけで世が世なら「CB400SI(SUPER INTEGRA)」になっていたのかもしれない……のですけれど、2005年当時はまだクルマの世界にインテグラが存在しており、商標の関係もあって採用はNG。

クルマのインテグラ

●マイケル・J・フォックスさんの「かっこインテグラ!」から幾星霜。こちらがクルマ版「インテグラ」の最終モデルとなります。今、当時のリリースを見ていたのですが、自然吸気で220馬力を発揮する2ℓDOHC i-VTECエンジン+6MTのタイプRが税抜き価格で260万円だったんですね(マイチェンで登場した2004年当時)。自称中堅メタボ中年のオレ、買っておけよ……

 

ただ、少し冷静になってみると「スーパーインテグラ」より「スーパーボルドール」のほうが言いやすいし語感もいいし、アルファベットやその頭文字で表記したときのカッコよさも段違いなので、まぁ、これで良かったのかなぁ、と(笑)。

長い年月が磨き上げた400㏄直4マシンの理想型

そしてカッコいいといえば、ハーフカウルそのものの形状も非常にスタイリッシュで文句のつけようなし! 

ちょうど1年3ヵ月前の2003年12月に、ハイパーVTECが“SPECⅢ”へ進化したのと同時に、とてもシャープになったテールカウルまわりともジャストフィットしており、取って付けた感がほぼゼロというもの凄さ。

あれよあれよという間にその魅力は広く認知され、オリジナル(ネイキッド)であるCB400スーパーフォアを販売数で次第に圧倒

その販売比率はピーク時にSFが2でSBは8、というところまでいったとMC編集部員時代に聞いた覚えがございます。

2014年式CB400SB

●写真はまたまたまたま(以下略)改良を受けた2014年モデル。ETC車載器とグリップヒーターおよび専用インジケーターランプを装備した“Eパッケージ”の登場も新鮮でした。各部の練り込みと質感の高さから漂ってくるオーラは、もはや排気量を超越した存在であることを誇示。実際、大型二輪に乗れる免許と財力を持っていようが、“あえて”CB400シリーズをチョイスし、バイクライフを充実させている方々が山ほどいるのは厳然たる事実です

 

鬼に金棒、CBにSBとSFの選択肢とHYPER VTECと攻めたカラーリングとアップデートされ続けるスタイリングと環境諸規制対策と安全性向上アイテム……(長い)。

そんな魅力だらけのモデルがファンの熱い支持を得ないわけがございません。

251~400㏄クラスにおけるセールス記録では2002年から2017年まで破竹の16連覇を記録(二輪車新聞調べ)! 霊長類最強の女性、吉田沙保里選手の女子レスリング世界大会16連覇と並ぶ偉業です!?

もちろんその前後、現在に至るまで4位以下に落ちたことがないという圧倒的な強者ぶり。

まさしくバイク界の“英雄”と言って過言ではない奇跡的なバイクでしょう。

英雄イラスト

●毎度お世話になっている「いらすとや」さんで“英雄”を検索してみると、このヘラクレスと勝海舟の顔イラストしか出てこない……。いや、それだけなんですけれど

 

♪サ・ヨ・ナ・ラは別れのぉ、言葉じゃなくてぇ〜っ

……とはいえ、直近数年間の販売台数は2000台前後/1年で推移、年間2万台レベルで売れていた1990年代中盤とは文字通りケタが違います

大量生産でコストの分散が可能な世界戦略車という背景を持たない、ほぼほぼ国内専用車両であるCB400SF/SBにとって、FI化、ABS標準装備化、ETC車載器導入ほかの改良&改善は販売価格の上昇に直結するもの。

CB400最新カタログ

●写真は現行モデルのカタログより。販売比率を反映して、もはやスーパーフォアよりスーパーボルドールのほうが偉そうですね(笑)。2008年モデルのPGM-FI化と同時にSpecⅢから進化したHYPER VTEC Revoは、実に14年間CB400シリーズの屋台骨を支え続けました。2017年の10月からは環境諸規制をクリアしつつ53馬力から56馬力へ最高出力をアップし、吹け上がりがさらにシャープなものに! 開発陣の執念すら感じます……

 

消費税率のアップも重なり、気が付けば新車のメーカー希望小売価格はスーパーボルドールで100万円台に突入……。

高校生が夏休みに必死こいてアルバイトをすればどうこうなるという金額ではなくなりました。

それでも!内容を考えると超絶ハイパー大バーゲンセール価格である、ということはひと言申し添えておきます。

現行モデルカタログ

●明るいLEDヘッドライトも、便利なギヤポジションインジケーターも、握りやすくリヤシートへのバッグ積載時にも邪魔しないグラブバーも、使いやすいヘルメットホルダーも、何かと助かるシート下収納スペースも、メンテナンス性に優れるL字型エアバルブも全部アリ。……あ、スーパーボルドールにはスポーツグリップヒーターとETC2.0車載器まで標準装備です(笑)。いやはや、本当に全身スキがありません

 

かくいうCB400SF/SBは今年の10月分を持って生産を終了することが、すでに確定。残念ながら復活の可能性は宝くじで2等を当てるより低いでしょう。

現在、オーナーであらせられる方は、ぜひ大切にかつガンガン使いまくり、将来の“走る文化遺産”を後世に残していってくださいね~。

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