CB400 SUPER FOURという英雄【その3】を読む

映画「トップガン」で活躍したF-14トムキャットの翼。バルキリー、モビルスーツらアニメ世界でのロボット。ほかにもダンベル、関数、抵抗器、ショベル、側溝、マルチラック……!? 主にオトコノコの心をつかんで離さない“可変”というパワーワード。1999年にフルモデルチェンジを受けたCB400SFは超有名な可変機構を引っさげて登場し、さらなる独走状態を築き上げます!

1999年のCB400SFカタログ

●「子供たちに青空を」は積極的に環境保全へ取り組むホンダが掲げるスローガン。パフォーマンスを維持、いや発展させつつ1999年10月から導入の厳しい排出ガス規制にも適合することを高らかに謳う新型CB400SFのカタログには抜けるような青空が多用されました

 

ネイキッド界の英雄、驚きの新機構を得て堂々の転生!

「ノストラダムスの大予言」が的中するのかしないのか。

恐怖の大王2000年問題の連チャン攻撃で何となく世の中がザワついていた1999年

そんな年の2月に400㏄ネイキッド界の押しも押されもせぬ盟主、CB400スーパーフォアが初めての全面改良を受けました。

1999年式CB400SFの青

●「ジ・王道」といった趣まで感じさせる正統派スタイリング。ただ、黒塗りエキパイ+アルミサイレンサー(センタースタンドはなし)や足周りパーツなどから、初代のバージョンSをベースにしたことは明らか。シュッとしたテールカウルなどの造形により威風堂々……というよりは、軽快かつ精悍といったイメージが強くなった印象を受けたものです

 

スタイリングは従来モデルの持つセクシー&ワイルド感を踏襲しつつ、さらに躍動感と迫力にあふれるデザインを採用し、タンクからサイドカバー、そして跳ね上がったテールエンドに至るまで連続した流れを感じさせる仕上がりへと進化。

欧州を起点に盛り上がりを見せていた“ストリートファイター”風味までうまく取り込んだ秀逸な面構成であることは、モーターサイクリスト編集部へ送られてきたプレスリリース封筒内の広報ポジ写真からもよく伝わってきました。

しかし! なんと言っても2代目400スーフォア最大のポイントは新開発された「HYPER VTEC」エンジンの搭載でしょう。

「は? VTEC? REV(レブ)じゃないの?

1980年代のバイクブームをヘタにリアルタイム体験してしまった筆者のようなひねくれ者は、雑誌広告やカタログ、ポスターなどへデカデカと躍る「VTEC」という文字列に、ちょいと抵抗感を感じたものでした。

1999年CB400SFカタログVTEC

●1992年4月に発売が開始され、1998年12月末時点までで累計台数7万6700台を売り上げた初代CB400SF。ビッグブランドと化したモデルの全面刷新とあって開発陣にはとんでもないプレッシャーがかかったはずですが、ユーザーの期待を大きく上回る製品がビシッと出てきたのです

 

ブイテックブイテックって五月蠅いなぁ。クルマ業界でチヤホヤされたからってバイクの世界にもご降臨ってか? へっ! オマエのご先祖様はなぁ、二輪車向けに開発されたシステムなんだぞぉ。つまりバイクのほうが先だ! 偉いんだ!

……と盆と正月にしか会わない親戚のオジサン(←酒グセ悪い)のごとく、誰かへクダを巻きたい気分に陥ったことはここだけの秘密です。

そうなのです。

1989年の「インテグラ」(四輪)に初搭載され、

1989年インテグラ

VTECエンジン

●「かっこインテグラ」ですよ、マイケル・J・フォックスさんですよ。いまだに伝説となっている印象的なテレビCMで広く周知された2代目ホンダ インテグラこそが、VTECエンジンを最初に搭載したモデルです。インテグラ……CBXやVTなどのカウリングバージョンにも使われてましたし、最近までバイクラインアップにもありましたね。ストリーム、ビート、セイバー、ジャズ、トゥデイ、ジェイド、(ステップワゴン)スパーダetc、ホンダは二輪と四輪で同じ名前を使うことが多いため、混乱もしますがジェネレーションギャップも分かって非常に面白い!

 

その後NSX、S2000、シビックほかDOHCヘッドを持つハイパフォーマンスカーや、はたまた燃費向上のためハイブリッドカー用エンジンのSOHCヘッドに採用されたりと、“エンジン屋”であるホンダを象徴するアイコンとして一般大衆にも広く知られるようになった「VTEC」テクノロジー

しかしその原点は、1983年に登場したバイク、CBR400Fが世界で初めて搭載した“REV”という機構なのですよ(Honda公式が公認済み)。

1983年CBR400F

●田舎でモーターサイクリスト誌を愛読していた中学校3年の筆者は、CBR400Fの写真を初めて見たとき「なんじゃぁ、こりゃあ!?」と叫んだ記憶がございます。妙ちくりんなライトステーに取って付けたような角形ヘッドライトとその下にあるオイルクーラー……。追って登場したフェアリング付きの“エンデュランス”シリーズありきのデザインだったことを後日知って、逆に感動いたしました。そして何といっても“REV”! 先輩に話を聞くと「バチーン!と切り替わって性格も豹変するから面白かったぞ〜」とのこと。体験してみたかったなぁ……

 

過渡期だったこそ意欲的なメカニズムが続々登場!

1980年代の初頭は、まさにレーサーレプリカ黎明期

信号GPで、ワインディングで、そしてサーキットで、ライバルを圧倒する運動性能を獲得すれば飛ぶようにバイクが売れた時代でもありました。

30台後半の馬力でうろちょろしていた1970年代から技術も一気に進化し、43馬力、45馬力、48馬力、54馬力、55馬力……とニューモデルが出るたびにヨンヒャクの最高出力はうなぎ上りに上昇していきます。

「CBXの次」として開発されたCBR400Fは、もちろんバリバリのハイパフォーマンス路線

1981年CBX400F

●不朽の名車として名高い「スーパースポーツCBX400F」(1981年登場)も紹介しておかねばなりますまい。ホンダが放つ久方ぶりの400㏄並列4気筒モデルとして人気が爆発いたしました。このカラーグラフィックは2002年以降のCB400SFから何度となく採用され、定番化していったことはご存じのとおり。この流麗なデザインの次に上で紹介しているCBR400Fが出てきたので、中二病の中学3年生はびっくらこいたわけですね

 

SPレースでの勝利を目指した“リッター当たり200馬力”を発揮できる潜在能力と、一般走行で多用する極低速域から中速域での使い勝手とを高い次元で両立させるため、ホンダ開発陣が総力を挙げて作り上げたのがREV(Revolution- modulated Valve control=回転数応答型バルブ休止機構)だったのです。

REVの構造図

●エンジン回転数に応じ、2分割されたロッカーアームに内蔵された油圧ピストンが移動してロッカーアームの分離・結合を自動的に行う。4バルブ作動時には高速回転域で高出力を生みだし、2バルブのときは混合気の吹き抜けが減少、かつ流速も向上して高いスワール効果と優れた充填効率を発揮し、低中速回転域の出力向上を実現させる……というのがREVの基本です。しつこいですが一度でも乗ってみたかった〜

 

簡単に言うとエンジンの高回転域では1気筒あたり4つあるバルブをフル稼働させてハイパワーを絞り出し、中~低回転域になったら2つのバルブを休ませて扱いやすさと好燃費まで実現してしまおうというもの(詳細はコチラ)

果たして1983年12月に登場したCBR400Fの空冷インライン4は1万2300回転で58馬力を発揮してクラスナンバーワンを標榜……したのですが、2ヵ月後の1984年2月には59馬力の水冷エンジンアルミフレームに搭載したスズキ「GSX-R」がリリースされ、すべて持っていってしまいます。

GSX-R

●1983年世界選手権耐久レースのチャンピオンマシン「GS1000R」のレプリカとも言えるGSX-R。デュアルヘッドランプ、カウリングなどを装備し、398㏄水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンは最高出力59馬力を1万1000回転で発揮。また軽量化のために新形状のアルミ製MR(マルチリブ)-ALBOXフレームを導入して乾燥重量152kgを実現していました。スズキが力業で一本を奪ったかたちです

 

とはいえCBR400Fもやられっぱなしでいるわけにはまいりません。同年5月には2灯式ヘッドライトやハーフフェアリングを装備した“CBR400Fエンデュランス”を。その8月には「F-3」ロゴが大書きされたフルフェアリング仕様も追加。

翌1985年8月にはシングルシートを標準装備したモデルをシリーズに加えるなど、

CBR400Fフォーミュラ

●ライバルにしてやられ“なりふり構わず”状態になったホンダは、時に驚くようなモデルを市場へ投入してきます。1985年8月31日に発売開始された「CBR400Fフォーミュラ3(スリー)」は、1人乗り専用シートを標準装備し、ホイールを変更し、スイングアームもアルミ化し、ステンレス製マフラーやジュラルミン製のハンドル&ステップ類までパッケージング。レプリカ道を究めんとする姿勢に胸が熱くなったものです。なのに翌年には、あのフルカバードエアロデザインのCBR400Rが出てきたのですから、中二病の大学1年生はびっくらこいたわけですね

 

大胆な外装テコ入れを矢継ぎ早に行うことにより一定のシェアを維持し続け、その心臓の左右冷却フィン中央部にはずっとREVの紋章が輝いていました。

こうして同時期に多感な中高生時代を過ごした昭和40年代男の脳裏には、「可変システム」イコール「なんかすごそう」という刷り込みが深く刻み込まれたのです。

魔法のようなコンパクト機構で高性能を実現!

繰り返しますがCBR400Fの“REV”技術に端を発する「VTEC(バリアブル(V)バルブタイミング(T)アンド リフト・エレクトロニック(E)コントロール(C)システム)」は前述のとおり四輪の世界で大ブレイクを果たし、多くの人に知られる一大ブランドとなってルーツとも呼べる400㏄並列4気筒エンジンへ里帰り(?)をしたというわけです。

VTEC解説カタログ

●1999年に登場して以来23年間。度重なるモデルチェンジを経たCB400シリーズ現行車(最終仕様!?)にもHYPER VTECは健在です。なかなかに興味深い熟成の過程については随時ご紹介していきますね

 

その内容はなるほどハイパーで、CBR400Fや四輪用VTECでは当たり前のように使われてきたロッカーアームを介さない“直押し”タイプ……バルブリフター内で可変機構を完結させるという新規開発された超ハイテクが導入されておりました(詳細はやっぱりコチラ)

低中速回転域では2個、6750回転を超える高回転域では4個のバルブが作動するとともに、常用側&休止側のバルブそれぞれに最適なカムプロフィールを設定することで、エキサイティングなエンジンフィーリングだけでなく燃料消費率の向上や走行騒音の低下まで実現させるというウルトラっぷり。

バイクに乗る人イラスト

●ご存じ“いらすとや”さんの「バイクに乗った男性のイラスト」でもCB400SFとおぼしきバイクが……。違うかな(笑)

 

実際に乗ってみても、スロットルを開けていきシパッ!と4バルブに切り替わった瞬間から排気音が甲高くなり、吹け上がりの鋭さも格段にアップするので面白いことこの上なし! 

半面、淡々と巡航する分には2バルブ領域の豊かなトルクといい意味でダルな右手操作への反応でストレスなく走行距離を稼ぐことができる……というライダーの夢が具現化したような内容で文句の付けようがありません。

執念にも似た磨き上げでライバルに差をつけていく

かくいうエンジンの進化と同時にフレームと足周りに大胆な改変が行われ、タイヤもバイアスからラジアルへ変更。乾燥重量比で従来型から6㎏もの軽量化まで実現していたのですから脱帽です。

1999年スーパーフォアカタログ

●細部に至るまで徹底的なリファインがなされた2代目。「正常進化とはこういうことだ!」とやり切ってやり切って、プレッシャーから解放された開発陣の自負と自信がカタログから伝わってくるようでした

 

それでいて価格は従来型バージョンS比で単色なら税抜き1万円ポッキリしか値上げしていなかったのですから当時のバイク業界、コスト計算が本当におかしい

鬼に金棒CBにHYPER VTEC……。

魅力にあふれる強力なデバイスも得た2代目CB400SFは当然のごとく人気を集め、ベストセラー街道をばく進していきます。

バイク便イラスト

● ご存じ“いらすとや”さんの「バイク便のイラスト」でもCB400SFとおぼしきバイクが……。こちらは間違いなくCBです(笑)

 

そして2000年代中盤には、現在でも圧倒的な支持を集めているアノ仕様が登場します。次回はそのあたりを紹介いたしましょう。

あ、というわけでCB400スーパーフォアは2代目になっても中古車の数が豊富に出回っております。アフターサービスも安心なレッドバロンの“譲渡車検”付きの車両で、HYPER VTECのハイパーな乗り味を検証してみてはいかがでしょうか!

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